【完結】継母と腹違いの妹達に虐められたのでタレコミしようと思う。

本田ゆき

文字の大きさ
上 下
6 / 24

第六話

しおりを挟む
言われるがままに私はフードの男性について行く。

もし私が公爵の娘だと知られていたら、また違う展開だったのかもしれないが、今の私は使用人同然の格好に加えて下水や森を歩いてきた為、服も顔もどこもかしこもボロボロだった。

そんな娘が公爵の娘だなんて誰も気づきはしないだろう。

「さあ、着いたよ。」
そう言って男性は明かりがもう着いていない宿屋に入っていく。

私も後を追って入る。

宿の中は申し訳程度に灯りが灯っていた。

「もう店主も寝てるからね、なるべく静かに。」

そう言われて、私も静かに案内について行く。

そして、廊下の突き当たりの1番奥の部屋に案内された。

「じゃあ、この部屋に今夜は泊まりなよ、俺は朝まで恐らく付き合わされて帰ってこないだろうから。」

そう言って男性はそれじゃあ、と去っていこうとした。

「え、何で?」

私は目を丸くした。

確かに泊まる場所が無いと頼ったが、見ず知らずのみすぼらしい少女に一部屋ポンと理由も聞かずに貸し与えられるものなのだろうか?

「ちょ、声が大きいよ。
何でって、君が泊まる部屋がないから、俺が泊まってる部屋に案内しただけだよ。」

続けて少年は答えた。
「本当は他の空いてる部屋を借りたいけれど、店主はもう寝ちゃってるし、今晩だけでも相部屋になるのは我慢してくれないか?俺は朝まで帰らないから、好きに使ってくれて構わない。
シャワーもあるから適当に使ってくれていい。」

「え?え?」
私はキョトンとする。
待遇の良さにびっくりしてしまう。
見ず知らずの相手に向かっていくら何でも親切すぎるのでは?

「あの、お金は?」
「え、いいよ別に、俺は金に困ってないし。」

じゃあ、俺もう行かないとだから、とフードの少年は去っていってしまった。

ふと部屋の鏡を見る。

そこにはボロボロの少女の姿が映っていた。

「シャワー浴びていいって言ってたわよね?お金はまあ朝にでも渡した方がいいわよね?」

そう思考をぐるぐるさせながらも私はさっさとシャワーを浴びて、髪も乾かさずに布団に潜った。

とにかく疲れきっていたのだ。

ベッドは流石にお屋敷のベッドよりも硬かったが、何故だかいつもより安心する。

ああ、でも髪くらい乾かさなくては、風邪をひいてしまうかもしれない。

でもその前にちょっとだけ休もう。

そんなことを考えながら、私は気づいたら深い眠りに落ちていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

一家処刑?!まっぴら御免ですわ! ~悪役令嬢(予定)の娘と意地悪(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです

泉花ゆき
恋愛
ある日のこと。 マリアンヌは婚約者であるビートから「派手に着飾ってばかりで財をひけらかす女はまっぴらだ」と婚約破棄をされた。 ビートは、マリアンヌに、ロコという娘を紹介する。 シンプルなワンピースをさらりと着ただけの豪商の娘だ。 ビートはロコへと結婚を申し込むのだそうだ。 しかし伯爵令嬢でありながら商品の目利きにも精通しているマリアンヌは首を傾げる。 ロコの着ているワンピース、それは仕立てこそシンプルなものの、生地と縫製は間違いなく極上で……つまりは、恐ろしく値の張っている服装だったからだ。 そうとも知らないビートは…… ※ゆるゆる設定です

愛は全てを解決しない

火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。 それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。 しかしデセルバート家は既に没落していた。 ※なろう様にも投稿中。

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

結婚式をボイコットした王女

椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。 しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。 ※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※ 1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。 1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

処理中です...