4 / 24
第四話
しおりを挟む
時刻は深夜0時を回る頃。
私は目を覚ました。
いつも眠りが浅い為、人に起こされなくても覚醒するのに時間はかからなかった。
「さあ、出発しましょう!」
私は小さな声で意気込んだ。
まずは自室の窓を開ける。
本来私の部屋は3階の日当たりのいい部屋だったのだが、妹のリゼに「その部屋頂戴!」と我が儘を言われ、気づいたら盗られていたため、私は使用人が使っていない1階の隅の空き部屋を自室にしていた。
そのお陰で、脱出の難易度は遥かに下がる。
私は窓の外に荷物を出して、自身も外に出る。
問題はここからだ。
家の周りにはぐるりと恐らく3メート程の鉄の柵で覆われている。
そして門には外と中に合わせて4人の門番が見張っている。
とてもではないが、門からは出られない。
しかし、柵を登ることは出来ると言えば出来る。
柵の内側付近に大きな木が生えており、そこを登って柵の1番上にロープを結び、そこから蔦って降りることは可能と言えば可能だ。
だが、それだとロープが回収出来ない。
すぐにそこから脱出したとバレてしまう。
そこで私はそれを逆手にとることにした。
私は木をなんとか登り、柵の上にロープをかける。
しかし、私はここからは脱出しない。
要はカムフラージュというわけだ。
そして、私はもう一箇所の脱出口に向かうとする。
「これね。」
私はお屋敷の裏側の方まで歩いてきた。
しかしこう外からぐるりと回るだけでもお屋敷の広さには眩暈がする。
着いた先には、下水を引くための穴が空いており、石で出来た蓋で塞がれている。
石の蓋には鍵がされていない為、少し重たいが、ずらす事は私にも可能だ。
「さて、しかしこれまた酷いわね…」
蓋をずらして中を伺い私は絶句してしまう。
なんせ開けた先には下に続く鉄梯子があるのだが、虫は蠢いているわ、鉄は錆びてるわ、下水のドブ臭い匂いもまして鼻を覆いたくなる刺激臭がするのだ。
「まあ、これも試練の一つね、仕方ない。」
恐らく貴族で下水を通る発想など、今お屋敷にいる人たちは誰一人気づかないだろう。
私は腹を括って梯子に手をかける。
一段一段と降りていき、下に着いたら持ってきた荷物の中から蝋燭とマッチを取り出して蝋燭台に立て火を点ける。
「さて、証拠を消さなきゃね。」
私は蝋燭台を地面に置き、また梯子を登る。
そして、ずらした蓋を下からまたずらし直す。
蓋がまた完全に閉まると、辺りは真っ暗で怖さが倍増する。
「気をつけて下に降りなきゃ…」
先程よりも慎重にゆっくり降りていく。
しかし、蝋燭の火が見えて安心した瞬間、足を踏み外してしまった。
「キ、キャア!」
あいにく地面が近かったため、軽い尻餅だけで済んだ。
しかし、尻餅をついたすぐ横は下水が通っている為、危うく落ちる所だった。間一髪である。
「あ、危なかった…」
私はすぐ様蝋燭台を持ち、辺りを照らしてみる。
道は左右に分かれていた。
「どっちに行けば、より遠くへ出られるかしら?」
まず右の道へ行くが、5分ほど歩くと行き止まりになっていた。
なので、引き換えして左の道を進んでいく。
生憎下水の中は一本道で、迷うことはないのだが、どこまでいけばいいのだろうか?
当てもなく2時間ほど歩いたあたりで、外へ続く梯子をやっと見つけた。
そこを目当てに歩いていくと、僅かだが風の流れを感じる。
梯子付近も整備はされておらず、落ち葉やゴミが散乱している。
はっきり言ってお屋敷から入った所よりも更に汚い。
しかし、もう他に行く道もない私は、腹を括って梯子を登る。
梯子を登り切ると、こちらの下水の穴には蓋がされていなかった。
恐る恐る地上へ顔を出すと、視界には木々が生い茂っているのが見えた。
どうやら森の中のようだ。
梯子を登り切り外に出ると私はもうヘトヘトだった。
覚悟はしていたが、やはりお屋敷でもう少し体力をつけておけば良かったと後悔する。
下水の穴の近くにはボロボロになって壊れている蓋が近くに落ちていた。
「成る程、森の中で整備する人がいないから、こんなにボロボロなのね」
私は辺りをキョロキョロと見渡した。
私は目を覚ました。
いつも眠りが浅い為、人に起こされなくても覚醒するのに時間はかからなかった。
「さあ、出発しましょう!」
私は小さな声で意気込んだ。
まずは自室の窓を開ける。
本来私の部屋は3階の日当たりのいい部屋だったのだが、妹のリゼに「その部屋頂戴!」と我が儘を言われ、気づいたら盗られていたため、私は使用人が使っていない1階の隅の空き部屋を自室にしていた。
そのお陰で、脱出の難易度は遥かに下がる。
私は窓の外に荷物を出して、自身も外に出る。
問題はここからだ。
家の周りにはぐるりと恐らく3メート程の鉄の柵で覆われている。
そして門には外と中に合わせて4人の門番が見張っている。
とてもではないが、門からは出られない。
しかし、柵を登ることは出来ると言えば出来る。
柵の内側付近に大きな木が生えており、そこを登って柵の1番上にロープを結び、そこから蔦って降りることは可能と言えば可能だ。
だが、それだとロープが回収出来ない。
すぐにそこから脱出したとバレてしまう。
そこで私はそれを逆手にとることにした。
私は木をなんとか登り、柵の上にロープをかける。
しかし、私はここからは脱出しない。
要はカムフラージュというわけだ。
そして、私はもう一箇所の脱出口に向かうとする。
「これね。」
私はお屋敷の裏側の方まで歩いてきた。
しかしこう外からぐるりと回るだけでもお屋敷の広さには眩暈がする。
着いた先には、下水を引くための穴が空いており、石で出来た蓋で塞がれている。
石の蓋には鍵がされていない為、少し重たいが、ずらす事は私にも可能だ。
「さて、しかしこれまた酷いわね…」
蓋をずらして中を伺い私は絶句してしまう。
なんせ開けた先には下に続く鉄梯子があるのだが、虫は蠢いているわ、鉄は錆びてるわ、下水のドブ臭い匂いもまして鼻を覆いたくなる刺激臭がするのだ。
「まあ、これも試練の一つね、仕方ない。」
恐らく貴族で下水を通る発想など、今お屋敷にいる人たちは誰一人気づかないだろう。
私は腹を括って梯子に手をかける。
一段一段と降りていき、下に着いたら持ってきた荷物の中から蝋燭とマッチを取り出して蝋燭台に立て火を点ける。
「さて、証拠を消さなきゃね。」
私は蝋燭台を地面に置き、また梯子を登る。
そして、ずらした蓋を下からまたずらし直す。
蓋がまた完全に閉まると、辺りは真っ暗で怖さが倍増する。
「気をつけて下に降りなきゃ…」
先程よりも慎重にゆっくり降りていく。
しかし、蝋燭の火が見えて安心した瞬間、足を踏み外してしまった。
「キ、キャア!」
あいにく地面が近かったため、軽い尻餅だけで済んだ。
しかし、尻餅をついたすぐ横は下水が通っている為、危うく落ちる所だった。間一髪である。
「あ、危なかった…」
私はすぐ様蝋燭台を持ち、辺りを照らしてみる。
道は左右に分かれていた。
「どっちに行けば、より遠くへ出られるかしら?」
まず右の道へ行くが、5分ほど歩くと行き止まりになっていた。
なので、引き換えして左の道を進んでいく。
生憎下水の中は一本道で、迷うことはないのだが、どこまでいけばいいのだろうか?
当てもなく2時間ほど歩いたあたりで、外へ続く梯子をやっと見つけた。
そこを目当てに歩いていくと、僅かだが風の流れを感じる。
梯子付近も整備はされておらず、落ち葉やゴミが散乱している。
はっきり言ってお屋敷から入った所よりも更に汚い。
しかし、もう他に行く道もない私は、腹を括って梯子を登る。
梯子を登り切ると、こちらの下水の穴には蓋がされていなかった。
恐る恐る地上へ顔を出すと、視界には木々が生い茂っているのが見えた。
どうやら森の中のようだ。
梯子を登り切り外に出ると私はもうヘトヘトだった。
覚悟はしていたが、やはりお屋敷でもう少し体力をつけておけば良かったと後悔する。
下水の穴の近くにはボロボロになって壊れている蓋が近くに落ちていた。
「成る程、森の中で整備する人がいないから、こんなにボロボロなのね」
私は辺りをキョロキョロと見渡した。
82
お気に入りに追加
866
あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

一家処刑?!まっぴら御免ですわ! ~悪役令嬢(予定)の娘と意地悪(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。
この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。
最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!!
悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。

(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです
泉花ゆき
恋愛
ある日のこと。
マリアンヌは婚約者であるビートから「派手に着飾ってばかりで財をひけらかす女はまっぴらだ」と婚約破棄をされた。
ビートは、マリアンヌに、ロコという娘を紹介する。
シンプルなワンピースをさらりと着ただけの豪商の娘だ。
ビートはロコへと結婚を申し込むのだそうだ。
しかし伯爵令嬢でありながら商品の目利きにも精通しているマリアンヌは首を傾げる。
ロコの着ているワンピース、それは仕立てこそシンプルなものの、生地と縫製は間違いなく極上で……つまりは、恐ろしく値の張っている服装だったからだ。
そうとも知らないビートは……
※ゆるゆる設定です

愛は全てを解決しない
火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。
それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。
しかしデセルバート家は既に没落していた。
※なろう様にも投稿中。


結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる