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第61話 君をお誘い
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「静夜くん! 実は親からグランドホテルのスイーツビュッフェペアチケット貰ったんだけど、良かったら一緒に行かない?」
「え!? あのグランドホテルスイーツビュッフェに葵さんと2人で!
喜んで行かせてもらうよ!」
「そんなに喜んでくれるなんて、静夜くん……ぐへへ」
「……朝からルカちゃんの1人芝居怖いなぁ……」
週が明けた月曜日、遥はニヤついた笑顔で静夜へとチケットを渡す予行演習をしながら学校へと向かっていた。
ハルとユウはそんな遥から少し距離を置き、遠目に眺めていた。
「ユウちゃん、あれ止めた方が良いんじゃない?」
「昨日珍しく落ち込んでいたからその反動で今ハイになってるだけだろ。
どうせ本人目の前にしたら緊張して逃げ出すのがオチだろうけど」
ユウの冷静な分析を聞いてハルは首を傾げる。
「ルカちゃんが落ち込む事もあるんだ……?」
「あいつ普段から情緒不安定だからな。
まあ不安定なのが正常というかそんな感じだ」
「しかも今はあんなに自信満々なのに緊張するのかな?」
「断言できる、絶対声かけられないぞあいつ」
それから遥はウキウキとした状態のまま学校へ着き意気揚々と教室へ入って来た。
「おっはよー! 静夜くん!」
「おはよう葵さん」
遥は真っ先に教室の席にすでに座って本を読んでいた静夜の元へ駆け寄り、口を開く。
「あのね、えっとね、実は……」
「うん?」
しかし、勢いよく話しかけた割に遥の声はどんどん小さくなり、顔もみるみると赤くなっていった。
「どうしたの?」
そんな遥の様子を不思議に思った静夜が本を閉じて遥の方へと向き直ると、遥は背を向けて走り出した。
「ご、ごめんやっぱり何でもないー!!」
そう投げかけながら逃げていく遥の背中を眺めつつ静夜は首を傾げる。
「なんだったんだ……?」
それから遥はユウとハルの元へ一目散に戻って来た。
「うわーん! ダメだ緊張して上手く話せないよー!!」
ユウに泣きつく遥を見て、ユウはハルに一言投げかける。
「ほらな」
「本当だ~ユウちゃんの言った通りになった~」
ハルはユウの予言的中に驚きつつ感心の声を上げる。
「2人とも感心してないで! どうやったら緊張せずに静夜くんを誘えるのか教えてよ~!」
「そんなん言われても普通に誘えとしか」
「そーそー。東くんを私達だと思って気楽に誘ってみたら?」
「静夜くんを、ユウちゃんやハルみたいに……?」
アドバイスを聞いて遥は深く深呼吸した後、もう一度静夜の席へと向かっていった。
「静夜く……」
キーンコーンカーンコーン……。
「お前らー出席取るから席に着けー」
しかし、静夜を呼ぶ声は朝のホームルームの鐘の音にかき消され、担任が教室へとやって来てしまった。
「うわーん! 駄目だったよー!」
遥は泣く泣くユウの後ろの席へ戻りそのままユウへと泣きついた。
「タイミングが悪かったな、どんまい。
まあまだチャンスはあるだろ」
「! そ、そうだよね! まだ今日は始まったばかりだもんね!」
しかし次の休み時間になると……。
「静夜く……」「静夜ーNI◯KEどこまで進めた?」「静夜ーマイ◯ラ俺もやり始めたんだけどサバイバルいきなりハードはきついか?」
次の休み時間も……。
「静夜く……」「よーっす静夜! 遊びに来たぜー」
「きゃー! 空くんに蓮くん! 本物!!」
「蓮くーん!」「くーちゃんこっち向いてー!」
「お前らが遊びに来るとやかましくなるから教室来んなよ」
「えー! 静夜冷てーなー!」
更に次の休み時間も……。
「静夜くーん……」「東と隅田ー、お前ら図書委員だったよな。
次の国語の授業辞典使うから全員分のを図書室に取りに行くぞ」
そして放課後。
「まっっっったく静夜くんに近づけなかった……!!」
「まあどんまい」
「何だか今日は東くんやけに絡まれて忙しそうだったねぇ」
遥が机に突っ伏して嘆いているのをユウとハルは慰める様に軽く遙の肩を叩いた。
「ううぅ……神様ひどいよぉ……どおして私にこんな試練をぉ……」
「お前が朝イチのタイミングでさっさと渡せば良かっただけだろ?」
ユウの指摘に遥は頬を膨らませながら顔を上げる。
「むぅ……まあ、そうなんだけどさ……。
放課後くらい捕まるかと思ったら、男子達とさっさと帰っちゃうし……」
落ち込む遥の様子を眺めてハルは不思議そうに尋ねた。
「そんなに面と向かって誘えないならさ、LINEで誘っちゃえば良いんじゃないの?」
ハルの言葉に遥はガバッと机から立ち上がり、ハルの手を両手で握った。
「それだ!! ハル、ありがとう!
早速LINEの文章考えなくちゃ!!
こうしちゃいられない! 先帰ってるね!!」
それから遥は急いで帰り支度を済ませて1人でさっさと帰ってしまった。
「……行っちゃった」
ハルがあっけに取られている横からユウが冷静に声をかける。
「さて、遥の悩みも解決したし私らも帰るか」
「流石ユウちゃん、慣れてるね~」
そうして2人とも何事もなく帰る準備を始めたのだった。
「え!? あのグランドホテルスイーツビュッフェに葵さんと2人で!
喜んで行かせてもらうよ!」
「そんなに喜んでくれるなんて、静夜くん……ぐへへ」
「……朝からルカちゃんの1人芝居怖いなぁ……」
週が明けた月曜日、遥はニヤついた笑顔で静夜へとチケットを渡す予行演習をしながら学校へと向かっていた。
ハルとユウはそんな遥から少し距離を置き、遠目に眺めていた。
「ユウちゃん、あれ止めた方が良いんじゃない?」
「昨日珍しく落ち込んでいたからその反動で今ハイになってるだけだろ。
どうせ本人目の前にしたら緊張して逃げ出すのがオチだろうけど」
ユウの冷静な分析を聞いてハルは首を傾げる。
「ルカちゃんが落ち込む事もあるんだ……?」
「あいつ普段から情緒不安定だからな。
まあ不安定なのが正常というかそんな感じだ」
「しかも今はあんなに自信満々なのに緊張するのかな?」
「断言できる、絶対声かけられないぞあいつ」
それから遥はウキウキとした状態のまま学校へ着き意気揚々と教室へ入って来た。
「おっはよー! 静夜くん!」
「おはよう葵さん」
遥は真っ先に教室の席にすでに座って本を読んでいた静夜の元へ駆け寄り、口を開く。
「あのね、えっとね、実は……」
「うん?」
しかし、勢いよく話しかけた割に遥の声はどんどん小さくなり、顔もみるみると赤くなっていった。
「どうしたの?」
そんな遥の様子を不思議に思った静夜が本を閉じて遥の方へと向き直ると、遥は背を向けて走り出した。
「ご、ごめんやっぱり何でもないー!!」
そう投げかけながら逃げていく遥の背中を眺めつつ静夜は首を傾げる。
「なんだったんだ……?」
それから遥はユウとハルの元へ一目散に戻って来た。
「うわーん! ダメだ緊張して上手く話せないよー!!」
ユウに泣きつく遥を見て、ユウはハルに一言投げかける。
「ほらな」
「本当だ~ユウちゃんの言った通りになった~」
ハルはユウの予言的中に驚きつつ感心の声を上げる。
「2人とも感心してないで! どうやったら緊張せずに静夜くんを誘えるのか教えてよ~!」
「そんなん言われても普通に誘えとしか」
「そーそー。東くんを私達だと思って気楽に誘ってみたら?」
「静夜くんを、ユウちゃんやハルみたいに……?」
アドバイスを聞いて遥は深く深呼吸した後、もう一度静夜の席へと向かっていった。
「静夜く……」
キーンコーンカーンコーン……。
「お前らー出席取るから席に着けー」
しかし、静夜を呼ぶ声は朝のホームルームの鐘の音にかき消され、担任が教室へとやって来てしまった。
「うわーん! 駄目だったよー!」
遥は泣く泣くユウの後ろの席へ戻りそのままユウへと泣きついた。
「タイミングが悪かったな、どんまい。
まあまだチャンスはあるだろ」
「! そ、そうだよね! まだ今日は始まったばかりだもんね!」
しかし次の休み時間になると……。
「静夜く……」「静夜ーNI◯KEどこまで進めた?」「静夜ーマイ◯ラ俺もやり始めたんだけどサバイバルいきなりハードはきついか?」
次の休み時間も……。
「静夜く……」「よーっす静夜! 遊びに来たぜー」
「きゃー! 空くんに蓮くん! 本物!!」
「蓮くーん!」「くーちゃんこっち向いてー!」
「お前らが遊びに来るとやかましくなるから教室来んなよ」
「えー! 静夜冷てーなー!」
更に次の休み時間も……。
「静夜くーん……」「東と隅田ー、お前ら図書委員だったよな。
次の国語の授業辞典使うから全員分のを図書室に取りに行くぞ」
そして放課後。
「まっっっったく静夜くんに近づけなかった……!!」
「まあどんまい」
「何だか今日は東くんやけに絡まれて忙しそうだったねぇ」
遥が机に突っ伏して嘆いているのをユウとハルは慰める様に軽く遙の肩を叩いた。
「ううぅ……神様ひどいよぉ……どおして私にこんな試練をぉ……」
「お前が朝イチのタイミングでさっさと渡せば良かっただけだろ?」
ユウの指摘に遥は頬を膨らませながら顔を上げる。
「むぅ……まあ、そうなんだけどさ……。
放課後くらい捕まるかと思ったら、男子達とさっさと帰っちゃうし……」
落ち込む遥の様子を眺めてハルは不思議そうに尋ねた。
「そんなに面と向かって誘えないならさ、LINEで誘っちゃえば良いんじゃないの?」
ハルの言葉に遥はガバッと机から立ち上がり、ハルの手を両手で握った。
「それだ!! ハル、ありがとう!
早速LINEの文章考えなくちゃ!!
こうしちゃいられない! 先帰ってるね!!」
それから遥は急いで帰り支度を済ませて1人でさっさと帰ってしまった。
「……行っちゃった」
ハルがあっけに取られている横からユウが冷静に声をかける。
「さて、遥の悩みも解決したし私らも帰るか」
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