上 下
14 / 81

第14話 君とプレゼント

しおりを挟む
 昼休みに入り静夜はいつもの如く図書室へと来ると、遥も後からやってきた。

「あ、東くん!」
「え? 葵さん?」

 静夜は本を読んでいた最中に声をかけられ驚きつつも返事をする。

「あの、さっきはありがとう!」
「ああ、昨日の事聞かれると思ってたから、どう答えようかは考えてたから」
「え? そうだったの?」
「昨日葵さん運んでる時、カメラの音聞こえたから」

 平然と答える静夜に遥は顔を赤らめて質問する。

「そうだったんだ……誰が撮ってたとか分かる?(東くんとの貴重なツーショット……! 写真貰いたい!)」
「さあ? ごめん、そこまでは分かんないけど(写真消して欲しいんだろうな……。そりゃあ男子に背負われてる写真出回るなんて普通に嫌だよな)」

 2人の考えてる事は全く違っていたが、会話は某お笑い芸人の如くちゃんと噛み合っていた。

「そっか……(写真貰えないか、残念……)
 後それから! 昨日も本当ありがとうというかなんかごめんね変な事になっちゃって!」
「ああ、うん……まあ、何事もないなら良かったけど、大丈夫だった?」

 静夜に問われて遥はピースサインしながら返事をする。

「うん! お医者さんにも問題ないって言われたよ!
 それよりハンカチなんだけど、洗ってたのに忘れちゃったから、明日持ってくるね!」

「ああ、別に返さなくてもいいよ。
 大したもんじゃないし」

 静夜にバッサリと断られ遥は狼狽えた。

「え!? それってつまり……

 私の血液が一度でも付着したハンカチは衛生的に問題があるからもう二度と使いたくなって事……?」

 遥の言葉に静夜はやや焦りながら答える。

「いや何もそこまでは言ってないけど……。
 別にそう深い意味がある訳じゃなくて、本当にハンカチ1枚くらい……」

 そう言いかけた静夜の言葉を遥が遮る。

「駄目だよ東くん! 1枚くらいなんて言ったら!
 その良心につけ込んで悪い人達がじゃあ後1枚、もう1枚なんてなんて言って最終には身ぐるみ剥がされちゃうんだよ!?」
「え? 何の話?」
「ともかく義理は返したいの!
 絶対に返すから!!」
「わ、分かったよ……」

 遥の圧に負けて静夜は渋々と了承した。

「よっしゃあ!!」

(これで明日も話す口実が出来たぜ!!)

(そんなにハンカチ返したかったのか……。
 まあクラスの男子のハンカチなんて家にあっても使いずらいし要らんよな……)

 遥が心の中で喜び密かにガッツポーズを決めてる中、静夜はうんうんと納得する。

「あ、そう言えば」

 静夜はふとのど飴の事を思い出した。

「葵さん、俺からも渡したいのがあるんだけど……」

 静夜の言葉に遥は胸を躍らせる。

「え!? 東くんが私に!?
 なになに!? 婚姻届!?」
「え……こんいん……? (このひとなにいってんだ……?)」

 遥の予想外の発言に静夜がややドン引いていると、遥は慌てて両手と顔を全力で振って否定した。

「はっ!? 違っ! い、今のはジョークでね!? 冗談でっ!」
「あ、ああ、そう。
 えーと、あ……」

 静夜は挙動不審の遥をひとまずスルーしてのど飴を渡そうと鞄を取ろうとするが、そもそものど飴の入った鞄を教室に置いてある事を思い出した。

「あ、ごめん、教室に置いてるから、えーと……
(教室で渡すと人目があるしまた何か言われて噂されるのも嫌だし)
 放課後に図書室で渡すでもいい?」

「勿論いつでも何処でもオッケーですっ!!」

「じゃあまた放課後」
「イエッサー!」

 静夜の言葉に遥は元気良く敬礼した。

(葵さんってやっぱり電波なのかな……)

 だんだんと本性がバレかけている主人公なのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ジャグラック デリュージョン!

Life up+α
青春
陽気で自由奔放な咲凪(さなぎ)は唯一無二の幼馴染、親友マリアから長年の片想い気付かず、咲凪はあくまで彼女を男友達として扱っていた。 いつも通り縮まらない関係を続けていた二人だが、ある日突然マリアが行方不明になってしまう。 マリアを探しに向かったその先で、咲凪が手に入れたのは誰も持っていないような不思議な能力だった。 停滞していた咲凪の青春は、急速に動き出す。 「二人が死を分かっても、天国だろうが地獄だろうが、どこまでも一緒に行くぜマイハニー!」 自分勝手で楽しく生きていたいだけの少年は、常識も後悔もかなぐり捨てて、何度でも親友の背中を追いかける! もしよろしければ、とりあえず4~6話までお付き合い頂けたら嬉しいです…! ※ラブコメ要素が強いですが、シリアス展開もあります!※

Promise Ring

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
浅井夕海、OL。 下請け会社の社長、多賀谷さんを社長室に案内する際、ふたりっきりのエレベーターで突然、うなじにキスされました。 若くして独立し、業績も上々。 しかも独身でイケメン、そんな多賀谷社長が地味で無表情な私なんか相手にするはずなくて。 なのに次きたとき、やっぱりふたりっきりのエレベーターで……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ハッピークリスマス !  非公開にしていましたが再upしました。           2024.12.1

設樂理沙
青春
中学生の頃からずっと一緒だったよね。大切に思っていた人との楽しい日々が この先もずっと続いていけぱいいのに……。 ――――――――――――――――――――――― |松村絢《まつむらあや》 ---大企業勤務 25歳 |堂本海(どうもとかい)  ---商社勤務 25歳 (留年してしまい就職は一年遅れ) 中学の同級生 |渡部佳代子《わたなべかよこ》----絢と海との共通の友達 25歳 |石橋祐二《いしばしゆうじ》---絢の会社での先輩 30歳 |大隈可南子《おおくまかなこ》----海の同期 24歳 海LOVE?     ――― 2024.12.1 再々公開 ―――― 💍 イラストはOBAKERON様 有償画像

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

後悔と快感の中で

なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私 快感に溺れてしまってる私 なつきの体験談かも知れないです もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう もっと後悔して もっと溺れてしまうかも ※感想を聞かせてもらえたらうれしいです

処理中です...