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第5話 君と待ち合わせ

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「ユウちゃん! ハル!
 私ついに……!
 ついに本物の男の子とスイーツバイキングへ行く事になりました!」

 次の日の朝、学校へ向かっている途中遥は意気揚々と2人に話しかけた。

「へぇ?
 それでどうやって脅迫したの?」
「最初から脅迫を疑ってるの何で!?」

 ユウは割と真剣な表情で遥へ問いかけたが、遥はそれに全力でつっこむ。

「その男子って誰?」
「東くん!」
「ああ、強請ゆすったんだね」
「強請ってないよ!?」

 静夜の事を思い浮かべたハルはすぐに遥へ疑いの目を向けた。

「遥、あんた最初っから東に目ぇつけてたんじゃないの?」
「ギクっ」
「いや、図星でギクって声に出して言う人初めて見たわ」

 ユウに鋭くつっこまれ遥は少し焦りながらも訂正する。

「ち、チガウヨー!
 あ、東くんなら仲良くなれそうだなーって思って声かけたんだよ!」
「私の席の前だからって、ここぞとばかりに声かけてたよね?」
「うっ」

 ハルの言葉にまたもや遥は図星を突かれる。

「まあ東なら頼み込めば一緒に行ってくれそうだしな。半狂乱なりながら迫られば断り辛いだろうし」
「そうだね、東くんなら優しそうだし、土下座しようとしたら承諾してくれそうだもんね?」

「ふ、2人とも!!
 ま、まさか昨日見てたの!?」

 ユウとハルの鋭い考察に遥は慌てながら質問する。

「見てないけど」
「やっぱ脅迫してんじゃねーか」

 こうして遥の企みは2人に完全にバレたのであった。

「こ、これは脅迫じゃなくて立派なお願いだよ!
 それに、元はと言えば私の許可を得ずに家族旅行を計画していたユウちゃんが悪いでしょ!?」

「いや家族旅行行くのになんで遥の許可必要なんだよ」

 ユウの冷静なツッコミに遥はうぅ……と言い返せずに言葉に詰まった。

「しかし東くんも可哀想だよね……ルカちゃんとケーキバイキングデートだなんて」
「ええ!? 可哀想なの!?
 一応お金は全額私が出すつもりだし、ケーキも苦手なら無理して食べなくてもいいよって伝えたよ?」

「いや、問題はそこじゃなくて……。

 まあ、いいや」

 ユウは何かを言いかけたが、言うのをやめてしまった。


「えー?
 何で? 何が可哀想なのー!?」




 そうして日は過ぎていき日曜日の朝10時。

「おまたせ!」
「お、おう」

 遥が待ち合わせの公園に着くと、そこにはすでに静夜の姿があった。

「なんか普段制服だから、私服で会うの新鮮だね~」

 黒のパーカーに長ズボンという出立ちの私服静夜に遥は笑顔でそう声をかける。

「まあ、そうだな……」

 静夜はカジュアルコーデを着こなしている遥を見て言葉を続けようとしたが、少し俯き口を閉ざした。

(……こういう時、褒めた方がいいんだろうけど、別に付き合ってる訳でもないし……)

(それに、まだ葵さんが本当にケーキだけが目的なのかも分からないし……)

「それじゃあ早速お店に行こっか!」
「ああ、うん」

 静夜が疑っている事には何も気づいていない遥は嬉しそうに歩き出した。
 そんな遥に静夜も着いていく。

 目的のケーキ屋は公園からそう遠くないところにあり、ケーキ屋に近づくほど周りはカップルで埋め尽くされていった。
 恐らくケーキ目当ての人の他にも、日曜日だからとたまたまデートしいてるだけの人達もいるのだろう。

 そんな中でも一際目立つ遥は注目を集めていた。

 街行く人々の視線を全身に感じつつ静夜はため息をつく。

(うわぁ……人の視線が痛い……)

 しかしその視線を気にする事なく遥は上機嫌に歩いている。

(こんなに視線を感じても気にせずいられるの凄いな……)

 そう感心している静夜の耳にひそひそと街ゆく人の言葉が聞こえてきた。

「あの子可愛いねー」
「モデルかな?」
「後ろ歩いてるの彼氏?
 でもあの子にはちょっと似合わなくない?」
「もしかしたら姉弟とか?」
「えー? 似てないよ?」

(まーた色々と勝手に言われてる……)

(まあ実際に彼氏でもない訳だし、そもそも自分が葵さんと釣り合わないなんて事は最初から分かっている)

(周りの意見がごもっともだ)

 静夜が納得している中、更にボソッと街の人の声が耳に入る。

「……男の子の方がちっちゃくない?」

 その言葉に静夜は内心めちゃくちゃ傷ついた。

「……ねえ葵さん」
「ん? 何ー?」
「身長何センチ?」

 たまらず静夜は遥にストレートに質問した。

「私? 確か165くらいだったかなー」
「そっか……(2cm負けた……)」

 そんな傷心の静夜に気づく事なく遥は元気良くケーキ屋を指差した。

「東くん!
 ここの店だよ!
 早く入ろ!」

「うん」

 そして遥に促されるまま、静夜は店の中に入った。
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