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8 可愛いショタっ子

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「はぁ、やっぱり戻っていないか……」

 俺は朝起きてはまた落ち込んでいた。

 流石に三度目なのでもう分かってはいるが、それでも期待してしまうものである。

「まあレオと結婚の話がもう出ているし、後はレオの好感度さえあげればいいから楽勝だな」

 と言いつつも、レオを攻略するのに一番手こずった為、少し不安である。

「ライラお嬢様、おはようございます」

 そうしてまたアーリーモーニングティーから俺の一日は始まるのである。

 後から調べて知ったのだが、このアーリーモーニングティーとはイギリスの習慣らしい。

 かと言ってこのゲームの世界の舞台がイギリスかと言うと、正直分からない。

 イギリスと言えば良く雨が降るだの晴れの日が少ないだの言われているが、この世界は大体晴れている。

 まあ俺も別にイギリスに詳しい訳では無いから何とも言えないけど。

 というかここはゲームの世界なんだし、大体その辺は大雑把なのだろう。

「お嬢様、今日はどうされますか?」
「うーん、そうだな……」

 そう訊かれ、俺は一先ず考える。
 後はレオを攻略するのみなのだが、保険はかけた方がいいだろう。

 最悪レオの好感度が全然上がらなかった時の為に、もう一人好感度を上げておきたい。

 悪く言えば二股作戦である。
 かと言って別に付き合ってる訳ではないのだから、厳密には二股ではないのだが。

 しかしこれにはデメリットも存在する。

 どっちつかずになるとどっちも上手くいかない可能性もある。要するに二兎を追う者は一兎をも得ずだ。

 それに期間は一ヶ月しかない中で、一人にのみ的を絞ればマックスまで好感度を上げられるが、二人になるとマックスまでは難しい。

 一応85%以上好感度があればハッピーエンドにはなるから、マックスまで持っていく必要はないのだが。

 後このゲーム、怖い事に逆ハーレムエンドなるものも存在する。

 俺はそこまで攻略は出来なかったが、頑張ればこの一ヶ月で全キャラ同時攻略が可能なのである。

 ほぼ無理ゲーだけど。

 まあ全キャラは攻略なんてとてもじゃないが出来ないので、俺はレオと後一人誰かを攻略するとしよう。

 となると、ウィリアムが最善か?

 しかし、ルナがウィリアムを好きなら、これは有効ではない。

 俺が本当にお邪魔キャラとなってしまい、最悪追放、処刑ルートにいきかねないからである。

 勿論マウント王子とツンデレ幼馴染は除外として、後一人。

 まだ会っていないキャラに会いに行く事にしよう。

「今日は外出するわ」

 こうして俺は外出して、一目散にとある場所へと向かう。

 公園である。

 しかし公園と言っても日本の公園の様に砂場や遊具がある訳でなく、大きな噴水やベンチが置いてある少し洒落た感じの公園だ。

 確かここでとあるイベントが発生するはず……。

「やーいおとこおんな!」
「泣いてばっかじゃねーか、言い返してみろよ!」

 やっぱりな。

 俺はすぐ様ガキどもが争っている所へと向かう。

「何やってんだお前ら!」

 俺がそう怒鳴ると、さっきまでガヤガヤ言っていた男子三人がビクっと肩を震わせた。

「な、何だよ!
女が口出すなよ!」
「そ、そーだぞ!」

「ガヤガヤとうるせー。
ここは公共の場だぞ?
周りの迷惑も考えろ」

 俺がそう言って睨みを利かせると、男子達はもう行こうぜと足早に去っていった。

 流石悪役令嬢、目が少し吊り目なせいで睨みが大分利くようだ。

「大丈夫か?」

 俺は男子達に言い寄られてしゃがんでいた少年に手を伸ばす。

「あ、ありがとうございます……」

 少年は俺の手を掴み立ち上がった。

 こいつがまさかの攻略4人目の、可愛いショタっ子キャラである。

 犯罪臭が半端ないが、ゲームだから許される。

「取り敢えず、ベンチで休むか?」
「は、はい」

 俺はよろついている少年の手を引いて、ベンチに座った。

「お姉さん、凄いですね、僕もあんな風に言い返せたらな……」

「そんな凄い事でもないよ。
お……私だって怖いものは怖いわよ」

 危ない危ない、あの悪ガキどもを叱った時から男口調のままだった。

「お姉さんも怖いの?」

 リアルの俺だったら実際虐めの現場なんて見てもどうする事も出来ないだろう。

 ここがゲームの世界で、俺が今ライラだから出来る事である。

 情けない話ではあるが。

「まあね。だから気に病む事はないわ。
それに君はまだまだこれから成長するしね」

 俺は知っている。
 この今は小さい少年だが、エンディングで18歳になった時めちゃくちゃ高身長イケメンになっている事を。

「そ、そうかな?
僕みんなより身長も低いし、顔も童顔だし、からかわれてばっかりだけど、変われるかな?」

「大丈夫、私が保証する」

「えへへ、ありがとう。
あ、僕の名前はルイ。
その、お姉さん、もし良ければ僕と友達になってくれないかな?」

 ルイは上目遣いに尋ねてくる。

 顔は可愛いが、男なのが残念である。
 まあ幼過ぎてどっちにしろ恋愛対象には見られないが。

「私はライラ。
いいわ、友達になってあげる」

「本当!?
ありがとう、ライラお姉ちゃん!」

 何というか、現実にいる妹(14歳)よりも可愛げがある。

 俺妹にお兄ちゃんなんて呼ばれた事ないぞ。

 まあ今更呼ばれたいとも思わないけど。

「僕、良くこの公園にいるんだ、ライラお姉ちゃん、暇な時は遊びに来てね!」

「ええ、勿論よ」

 私がそう答えると、ルイはジーッと俺の顔を見てきた。

「ん? 私の顔に何かついてる?」
「あ、ううん。
実はこないだ助けてくれたもう一人のお姉ちゃんに似てるなと思って」

 これは、もしかしなくてもルナの事だろう。

「もしかして、ルナの事?」
「そう! ルナお姉ちゃん!
顔が似てるなって」

 言うほど似てるだろうか?
 ルナは金髪に碧眼で如何にも正統派お嬢様という感じで、ライラは黒髪に赤眼という、何やら厨二心をくすぐる様な感じだけど。

 というか、もうルナは先に会っていたのか。

 まあ、俺は外出そっちのけでメイからマナーを教わっていたから、確かに少しゲーム進行が遅れている。

 これからは少し気をつけなくては。

「ルナお姉ちゃんってすっごい優しいよね!
僕ルナお姉ちゃん大好きなんだ」

 ニコニコ顔でルイはそう話す。

 あれ? これもう俺無理じゃね?

「そ、そうなのね。ルナお姉ちゃんと付き合いたいって事かな?」

 そう俺がどういう意味の好きなのか確かめるべく訊いてみる。

 すると、ルイは顔を赤らめながら答えた。

「え? 付き合うとかは分かんないけど、そうなのかな?」
「さ、さあ?
でもルイ君にはまだ早いかもね?」

 どうやらまだ恋愛的な意味では無さそうである。

 よし、これならまだチャンスはあるな。

「因みに私の事はどう思う?」

 一応俺がどれだけ好かれているかも確認しておこう。

「んーと、ライラお姉ちゃんは強くてカッコいい!」

 成る程、どうやら俺は男要素が強く出過ぎたのかもしれない。

 自分で言ってて何だが、男要素って何だ?

 まあいいや、悪くは思われていないなら、まだ大丈夫。

「あ、もうこんな時間だ!
僕もう帰らなきゃ、またね、ライラお姉ちゃん」

「ええ、またね」

 そう手を振ってルイは帰っていった。
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