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今日も今日とて彼は自殺をしようとするのです。
私は毎回必死に止めているのに、彼は気づいているのでしょうか?
カンカンカンカン…
踏切の前で、彼は1人で立っていました。
やがて電車が通り過ぎ、バーが開きます。
しかし、彼は歩き出しません。
また暫くすると、バーがカンカンという音と共にまた閉まります。
そして、電車がゴオオオっと彼の目の前で凄い勢いで走り去っていきます。
また、バーが開きます。
彼は、歩き出しません。
バーが閉まります。
カンカンカンカン
ゴオオオ
しかし、彼は歩き出しません。
まるで電池が切れたおもちゃの様に、彼はぴたりとも歩き出しません。
何故でしょうか?
それは、彼女が来ないから。
何故彼女が来ないのか。
それは、彼女が今日こそはもう自殺を止めてやらない、と近くの電柱の影から出てこないからです。
そう、私は今日、絶対に出てやらない。
私は毎日真剣に止めてるのに、彼は本気じゃなさそうに自殺しようとするのが許せない。
きっと彼は、ヤンデレのメンヘラの構ってちゃんなんだ!
それを更生するには、放って置くのが一番。
何故なら彼はただ私に構われたいだけだから!
つまり構わなければ彼は自殺未遂する意味がない!
内心ハラハラしつつも、これは彼の為だと、心を鬼にして見守るんだから!
暫くすると彼はキョロキョロと辺りを見渡しだした。
きっと私が来るのを待っているんだ。
だけど私はもう止めないからね。
さあ、一真!あんたの自殺未遂は今日で最後よ!
「玲香が来ないなら意味ないな」
ボソッと彼は呟くと、カンカンとバーが閉まっている踏切にまっすぐと歩き出した。
彼女はえ?と顔を強張らせた。
彼が本当に自殺しようとしているのだ。
未遂ではなく、本気の。
「ま、ままっ!待ちなさいよーー!!」
彼女が慌てて走り彼の腕を自分の元に思いっきり引っ張る。
彼は突然の事にそのまま彼女と共に地面に転がってしまった。
「…あー、びっくりしたー」
あと少し遅かったら間に合わない状況ですら、しかし彼は全く驚いていない顔で彼女を見やる。
「なーにが、びっくりしたー、よ!!
びっくりしたのはこっちよ!
何で本気で自殺しようとするの!?」
彼女は顔を怒りで赤く染めながら、そして涙目になりながら訴えてくる。
「何でって、俺はいつでも本気で自殺しようとしてたけど?」
彼女とは対象的に、彼はケロッとした顔で淡々と言う。
「はあ!?あんた今までふざけてたじゃない!
私が来るから大丈夫だって!」
「うん。玲香が来てくれたら自殺は止めるよ。」
全く訳が分からない。
「あんたって、何でそんなに構ってちゃんなのよ、私は、昔みたいに普通に遊びたいのに!」
私は、思わず泣き出してしまった。
本当はずっと前から、彼が自殺未遂をしだした頃から泣きたくて、でも泣くのを堪えていた。
自殺を考えているほど苦しんでいるであろう彼に、私が泣いてしまったら余計彼は傷つくのではと思っていたから。
案の定彼も少し哀しそうな顔をして
「ごめんね、こんな構ってちゃんみたいなことして、これしか、出来なくて、ごめん」
「俺も、昔みたいに遊びたい
でも、出来ないんだ」
訳が分からなかった。
「何で、何でよぉ!前みたいに、普通に話しかけてきてよぉ!
こんなんじゃなくて、前みたいに一緒に遊ぼうよぉ!」
泣きじゃくる彼女を、彼はヨシヨシと背中をさすりながら抱きしめた。
彼女が泣き止むまで。
私は毎回必死に止めているのに、彼は気づいているのでしょうか?
カンカンカンカン…
踏切の前で、彼は1人で立っていました。
やがて電車が通り過ぎ、バーが開きます。
しかし、彼は歩き出しません。
また暫くすると、バーがカンカンという音と共にまた閉まります。
そして、電車がゴオオオっと彼の目の前で凄い勢いで走り去っていきます。
また、バーが開きます。
彼は、歩き出しません。
バーが閉まります。
カンカンカンカン
ゴオオオ
しかし、彼は歩き出しません。
まるで電池が切れたおもちゃの様に、彼はぴたりとも歩き出しません。
何故でしょうか?
それは、彼女が来ないから。
何故彼女が来ないのか。
それは、彼女が今日こそはもう自殺を止めてやらない、と近くの電柱の影から出てこないからです。
そう、私は今日、絶対に出てやらない。
私は毎日真剣に止めてるのに、彼は本気じゃなさそうに自殺しようとするのが許せない。
きっと彼は、ヤンデレのメンヘラの構ってちゃんなんだ!
それを更生するには、放って置くのが一番。
何故なら彼はただ私に構われたいだけだから!
つまり構わなければ彼は自殺未遂する意味がない!
内心ハラハラしつつも、これは彼の為だと、心を鬼にして見守るんだから!
暫くすると彼はキョロキョロと辺りを見渡しだした。
きっと私が来るのを待っているんだ。
だけど私はもう止めないからね。
さあ、一真!あんたの自殺未遂は今日で最後よ!
「玲香が来ないなら意味ないな」
ボソッと彼は呟くと、カンカンとバーが閉まっている踏切にまっすぐと歩き出した。
彼女はえ?と顔を強張らせた。
彼が本当に自殺しようとしているのだ。
未遂ではなく、本気の。
「ま、ままっ!待ちなさいよーー!!」
彼女が慌てて走り彼の腕を自分の元に思いっきり引っ張る。
彼は突然の事にそのまま彼女と共に地面に転がってしまった。
「…あー、びっくりしたー」
あと少し遅かったら間に合わない状況ですら、しかし彼は全く驚いていない顔で彼女を見やる。
「なーにが、びっくりしたー、よ!!
びっくりしたのはこっちよ!
何で本気で自殺しようとするの!?」
彼女は顔を怒りで赤く染めながら、そして涙目になりながら訴えてくる。
「何でって、俺はいつでも本気で自殺しようとしてたけど?」
彼女とは対象的に、彼はケロッとした顔で淡々と言う。
「はあ!?あんた今までふざけてたじゃない!
私が来るから大丈夫だって!」
「うん。玲香が来てくれたら自殺は止めるよ。」
全く訳が分からない。
「あんたって、何でそんなに構ってちゃんなのよ、私は、昔みたいに普通に遊びたいのに!」
私は、思わず泣き出してしまった。
本当はずっと前から、彼が自殺未遂をしだした頃から泣きたくて、でも泣くのを堪えていた。
自殺を考えているほど苦しんでいるであろう彼に、私が泣いてしまったら余計彼は傷つくのではと思っていたから。
案の定彼も少し哀しそうな顔をして
「ごめんね、こんな構ってちゃんみたいなことして、これしか、出来なくて、ごめん」
「俺も、昔みたいに遊びたい
でも、出来ないんだ」
訳が分からなかった。
「何で、何でよぉ!前みたいに、普通に話しかけてきてよぉ!
こんなんじゃなくて、前みたいに一緒に遊ぼうよぉ!」
泣きじゃくる彼女を、彼はヨシヨシと背中をさすりながら抱きしめた。
彼女が泣き止むまで。
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