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ブーケの行方
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その後も結婚式は滞りなく進み、お色直しではクリスもウエディングドレスで登場した。
「きゃー! 可愛いわクリスちゃん!!
最っ高に可愛い!!
流石クリスちゃんだわ!!」
「ありがとうエマちゃん」
クリスは先程の男性の格好から打って変わって髪もロングになり、私達のすっかり見慣れた女の子の姿になっていた。
エマはそんなクリスに抱きついている。
エマとクリスは今どちらもウエディングドレスの為、側からみれば仲の良い姉妹や友達同士がじゃれているように見えた。
「クリスさん、良く似合ってますね。
その髪ってウィッグ?」
私はふと疑問に思いそう尋ねると、クリスは笑顔で快く答えてくれた。
「オリヴィア様、ありがとうございます。
この髪は地毛で、さっきの短髪の方がウィッグなんです」
「そうなんだ」
「クリスちゃん、一度切って以来ずっと髪を伸ばしてるのよね!
クリスちゃんの髪って柔らかくて綺麗だから私は好きよ!」
「ありがとう。エマちゃんにそう言って貰えて嬉しいよ」
それから2人はにこにこと楽しそうに会話をしていた。
「あーあ、お熱い事で」
「リヴィ、俺達も便乗してイチャついとく?」
「何で私達も便乗するのよ?
こんな人前でイチャつきたくないわ」
「あ、そっか。人前じゃ恥ずかしいんだっけ?
そのかわり2人きりなら最近素直に甘えてくるもんね?」
ノアにそう言われて私はすぐ様否定する。
「なっ! べ、別に甘えてないわよ!」
「そう?
って、痛っ!」
ニヤニヤと笑っているノアの顔がムカついたので取り敢えずデコピンをお見舞いしてやった。
それから式はいよいよ終盤に差し掛かり、ブーケトスの時間になった。
「さて、私が取る訳にも行かないし、ちょっと後ろの方に行くわ」
私がそうノアに告げると、ノアは少し悩んだ表情になった後小声で私に告げた。
「リヴィ、後ろに行くのは逆にまずいかも」
「え? どうしてよ?」
「だって、投げるのはあのエマ姉さんなんだよ?」
私はその一言でノアの言いたい事を全て悟った。
「あ、そっか……エマの力だと何処まで飛ぶか分からないわね」
エマといえばあの馬鹿力は未だに健在なのだ。
ならば、逆に最前列にいた方がいいかもしれない。
そう思い私とノアは前の方へとやって来た。
そして、エマの友達たちはみんなエマの馬鹿力を理解しているらしく、後ろの方へと下がっていた。
その中にはシーラも混じっている。
「エマの馬鹿力って割と有名なのね」
「まあそうだね」
こうしてある程度みんな移動した後、壇上でエマは意気揚々と後ろに振り向いた。
「よーし! じゃあ投げるわねー!
えーい!」
そう宣言してエマは思いっきりブーケを投げた。
……投げた。のだが。
「はっ! しまったわ!
力み過ぎて真上に投げちゃった!!」
エマの手から放たれたブーケは勢い良く上へ上へと上がり、やがてひゅるひゅると私目掛けて落ちてきたのだ。
「うわっ!
って、取っちゃった……」
流石に真上からの落下物に危険を感じた私は咄嗟にブーケを取ってしまった。
「あー! オリヴィアちゃんごめん!
代わりにそのままブーケトスしてくれないかしら?」
「……はぁ!?」
ブーケを取った私に、エマは急に手を合わせてとんでもないお願いしてきたのだ。
「いやいや、何で私が……!?」
「まあ俺達結婚式もやってないし、ブーケトスしちゃっても良いんじゃない?
それに、このままリヴィがブーケ取るのもまずいでしょ?」
横にいるノアにそう言われ周りを見てみると、確かに既婚者の私が取っているのは気まずいではある。
何処となく女性達の視線が痛い。
「ほらオリヴィアちゃん!
早く壇上に上がって!」
「あーもう! 分かったわよ!」
もうここまで来ればヤケだ。
注目を浴びるのは嫌なのだが、このままブーケを持って帰るのも悪目立ちするし、仕方なく私はブーケを持って壇上に上がった。
「じゃあ行くわよ」
そしてさっさと済ませようと思った私はすぐに後ろを向いてぽーんとブーケを投げた。
投げた後で、どうせ投げるならシーラかソフィアを狙って投げれば良かったかと少し後悔したが、しかしもう遅い。
私が投げたブーケは、綺麗な弧を描いて人が沢山集まっている場所へと落ちていった。
そして、ぽすんと1人の女の子の腕の中に収まった。
「とれたー!」
ブーケを取ったのは、何とマヤちゃんだったのだ。
「マヤちゃん、おめでとー!」
エマはマヤちゃんが取ったと分かり壇上から思いっきり叫んだ。
「マヤちゃんやったな!
おめでとう!」
「あら、これで大人になったら素敵な男性に出会えるわね♪」
「ま、まだマヤにそんな話は早い気がするが……」
そしてマヤちゃんの隣にいたルーカスと母さんとハワード子爵は各々その様な事を話していた。
「はあ~取れるかなって期待したのに~!」
「まあ、ブーケトスに頼っても仕方ないよね」
「そうだね。そこの可愛いお嬢ちゃん、おめでとう!」
それから会場自体もあんなに可愛い女の子に取られたなら仕方ないと和やかな雰囲気に包まれていった。
「な、なんとか丸く収まった、のかしら?」
「まあ、良かったんじゃない?
ブーケトス出来て良かったね、リヴィ」
壇上から帰ってきた私にノアもにこにことそう話してきた。
「別にブーケトスしたかった訳じゃないけど……まあ上手くいったんなら良かったわ」
こうして、賑やかな雰囲気のまま結婚式は幕を閉じたのだった。
「きゃー! 可愛いわクリスちゃん!!
最っ高に可愛い!!
流石クリスちゃんだわ!!」
「ありがとうエマちゃん」
クリスは先程の男性の格好から打って変わって髪もロングになり、私達のすっかり見慣れた女の子の姿になっていた。
エマはそんなクリスに抱きついている。
エマとクリスは今どちらもウエディングドレスの為、側からみれば仲の良い姉妹や友達同士がじゃれているように見えた。
「クリスさん、良く似合ってますね。
その髪ってウィッグ?」
私はふと疑問に思いそう尋ねると、クリスは笑顔で快く答えてくれた。
「オリヴィア様、ありがとうございます。
この髪は地毛で、さっきの短髪の方がウィッグなんです」
「そうなんだ」
「クリスちゃん、一度切って以来ずっと髪を伸ばしてるのよね!
クリスちゃんの髪って柔らかくて綺麗だから私は好きよ!」
「ありがとう。エマちゃんにそう言って貰えて嬉しいよ」
それから2人はにこにこと楽しそうに会話をしていた。
「あーあ、お熱い事で」
「リヴィ、俺達も便乗してイチャついとく?」
「何で私達も便乗するのよ?
こんな人前でイチャつきたくないわ」
「あ、そっか。人前じゃ恥ずかしいんだっけ?
そのかわり2人きりなら最近素直に甘えてくるもんね?」
ノアにそう言われて私はすぐ様否定する。
「なっ! べ、別に甘えてないわよ!」
「そう?
って、痛っ!」
ニヤニヤと笑っているノアの顔がムカついたので取り敢えずデコピンをお見舞いしてやった。
それから式はいよいよ終盤に差し掛かり、ブーケトスの時間になった。
「さて、私が取る訳にも行かないし、ちょっと後ろの方に行くわ」
私がそうノアに告げると、ノアは少し悩んだ表情になった後小声で私に告げた。
「リヴィ、後ろに行くのは逆にまずいかも」
「え? どうしてよ?」
「だって、投げるのはあのエマ姉さんなんだよ?」
私はその一言でノアの言いたい事を全て悟った。
「あ、そっか……エマの力だと何処まで飛ぶか分からないわね」
エマといえばあの馬鹿力は未だに健在なのだ。
ならば、逆に最前列にいた方がいいかもしれない。
そう思い私とノアは前の方へとやって来た。
そして、エマの友達たちはみんなエマの馬鹿力を理解しているらしく、後ろの方へと下がっていた。
その中にはシーラも混じっている。
「エマの馬鹿力って割と有名なのね」
「まあそうだね」
こうしてある程度みんな移動した後、壇上でエマは意気揚々と後ろに振り向いた。
「よーし! じゃあ投げるわねー!
えーい!」
そう宣言してエマは思いっきりブーケを投げた。
……投げた。のだが。
「はっ! しまったわ!
力み過ぎて真上に投げちゃった!!」
エマの手から放たれたブーケは勢い良く上へ上へと上がり、やがてひゅるひゅると私目掛けて落ちてきたのだ。
「うわっ!
って、取っちゃった……」
流石に真上からの落下物に危険を感じた私は咄嗟にブーケを取ってしまった。
「あー! オリヴィアちゃんごめん!
代わりにそのままブーケトスしてくれないかしら?」
「……はぁ!?」
ブーケを取った私に、エマは急に手を合わせてとんでもないお願いしてきたのだ。
「いやいや、何で私が……!?」
「まあ俺達結婚式もやってないし、ブーケトスしちゃっても良いんじゃない?
それに、このままリヴィがブーケ取るのもまずいでしょ?」
横にいるノアにそう言われ周りを見てみると、確かに既婚者の私が取っているのは気まずいではある。
何処となく女性達の視線が痛い。
「ほらオリヴィアちゃん!
早く壇上に上がって!」
「あーもう! 分かったわよ!」
もうここまで来ればヤケだ。
注目を浴びるのは嫌なのだが、このままブーケを持って帰るのも悪目立ちするし、仕方なく私はブーケを持って壇上に上がった。
「じゃあ行くわよ」
そしてさっさと済ませようと思った私はすぐに後ろを向いてぽーんとブーケを投げた。
投げた後で、どうせ投げるならシーラかソフィアを狙って投げれば良かったかと少し後悔したが、しかしもう遅い。
私が投げたブーケは、綺麗な弧を描いて人が沢山集まっている場所へと落ちていった。
そして、ぽすんと1人の女の子の腕の中に収まった。
「とれたー!」
ブーケを取ったのは、何とマヤちゃんだったのだ。
「マヤちゃん、おめでとー!」
エマはマヤちゃんが取ったと分かり壇上から思いっきり叫んだ。
「マヤちゃんやったな!
おめでとう!」
「あら、これで大人になったら素敵な男性に出会えるわね♪」
「ま、まだマヤにそんな話は早い気がするが……」
そしてマヤちゃんの隣にいたルーカスと母さんとハワード子爵は各々その様な事を話していた。
「はあ~取れるかなって期待したのに~!」
「まあ、ブーケトスに頼っても仕方ないよね」
「そうだね。そこの可愛いお嬢ちゃん、おめでとう!」
それから会場自体もあんなに可愛い女の子に取られたなら仕方ないと和やかな雰囲気に包まれていった。
「な、なんとか丸く収まった、のかしら?」
「まあ、良かったんじゃない?
ブーケトス出来て良かったね、リヴィ」
壇上から帰ってきた私にノアもにこにことそう話してきた。
「別にブーケトスしたかった訳じゃないけど……まあ上手くいったんなら良かったわ」
こうして、賑やかな雰囲気のまま結婚式は幕を閉じたのだった。
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