【完結】悪役令嬢だけど何故か義理の兄弟達から溺愛されてます!?

本田ゆき

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新しい仲間

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 王室に行ったその翌日。

「オリヴィアさん、いらっしゃい」
「レミィさん! 久しぶり!」

 私はブルーラインにあるリィナさんとレミィの家を訪れていた。

「それで、今日はどうしたの?」

「あ、それが実はね……」

 と、私が話しだそうとした瞬間、何やら奥の部屋からワンワンと犬の鳴き声が聞こえてきた。

「……犬?」
「あ、実は一昨日捨てられていた子犬を拾ってね。
保護だけのつもりだったんだけど、懐いちゃって……」

 レミィが説明していると、奥の鳴き声がしていた部屋の扉からリィナさんと子犬が現れた。

「あ、オリヴィアちゃんいらっしゃい!」
「ワン!」

 扉から出て来た子犬は子犬と言ってもどうやらゴールデンレトリバーの様な大型犬の子犬らしく、思っていたよりも割と大き目な子だった。

「今ちょうどミルクあげてたのよ」
「そうなんですね」

 私がリィナさんと会話している間もクリーム色の毛並みをした子犬は何やらはしゃいでいるらしく、くるくると元気いっぱいに私やレミィの周りを走り回っている。

「新しいお客さんに興奮してるのかもね」
「オリヴィアさんは犬、大丈夫?」
「うん。全然平気。
猫派だけど犬も普通に好きだし」

 そう話しながら私が子犬を撫でると、子犬は嬉しそうに飛び跳ねた。

「すっごい元気ね」
「うん。拾った時はぐったりしてたから、元気になってくれて良かった」
「そうだったんだ。
保護だけって事は、里親とか探すの?」

 私が問い掛けると、レミィはうーんと考え込む。

「一応、そのつもりなんだけど……」

 そう言いながらもレミィは子犬を見つめていた。
 恐らく本当はこのまま飼いたいのだろう。

「別に飼ってもいいわよ?」

 すると、そんなレミィを察したのであろうリィナさんがそう言った。

「いや、だってここリィナ姉さんの家で、ただでさえ私だって居候させてもらっているのにその上に犬までだなんて……」
「私はレミィの事は居候じゃなくて大事な家族だと思ってるんだけど?
それに家主の私が飼ってもいいって言ってるんだから良いに決まってるでしょ?」

「でも……」「というか私が飼いたいの! はい決定!」

 食い下がろうとするレミィをよそにリィナさんはそう言い切った。

「良かったわね」
「ワン!」

 一方横で事の顛末を見守っていた私が子犬の頭を撫でると、子犬は意味を理解したのか嬉しそうな鳴き声で返事をした。

「ありがとう、リィナ姉さん」
「いいのよ別に。私も犬好きだし」

 こうして子犬は無事リィナさんの家で飼われる事となったのであった。

「そうと決まればまずは名前を決めないとね」

 リィナさんがそう言って子犬を見ながら悩んでいると、レミィも一緒に悩み出す。

「うーん……あ、オリヴィアさん。
良ければ一緒に考えてくれませんか?」
「え? いいの?」
「ええ。みんなで考えた方が良い名前が思い浮かぶと思うので」

 レミィの提案により私も一緒に子犬の名前を考える事になった。

「えーと、まずこの子って男の子? それとも女の子?」
「拾った時にお風呂に入れたんだけど、多分女の子ね」

 私の問いにリィナさんがそう軽く答える。

「女の子かぁ……」
「んー、リリィとかアイリス……いや、違うなぁ」

 レミィはいくつか花の名前をあげていたが、どれもしっくりこないらしく首を傾げていた。

「私もこういう名付けとか苦手なのよね。
オリヴィアちゃんは何か案とかある?」
「えーと……そうですね。レミィさんとリィナさんの名前を1文字ずつ取ってミィナ、なんてどうですか?」

 私は軽い気持ちで提案してみたのだが、それを聞いたレミィはパッと笑顔になった。

「それいい、かも……!
ね! リィナ姉さん!」

 そう嬉しそうに笑顔で話すレミィに対してリィナさんも優しく微笑む。

「レミィがいいなら私も別に構わないわ。
よし! じゃあ今日から君はミィナちゃんね!」

 それからリィナさんは子犬の頭をわしゃわしゃと撫でながらそう言った。

「え? ほ、本当に私の意見を採用しちゃっても良かったの?」
「うん! 私とリィナ姉さんだけだったら多分大して良い名前も思いつかなかっただろうから、ありがとうオリヴィアさん」

 戸惑っている私にレミィは朗らかな笑顔でお礼を言ってくれた。

「ま、まあお役に立てた様で良かったわ」

 それからレミィは思い出したかの様にポンと手を合わせる。

「あ! そうそう。オリヴィアさん、確かお話があって来たんだよね。
ワンちゃんの事に夢中になっててごめんなさい」

 そう申し訳なさそうに話すレミィに私はいやいやと手を横に振った。

「私もつい可愛がっちゃってたし、寧ろ忘れかけてたわ。

えーと、その、大した話でもないんだけどね。
実は、私、こ、恋人が出来て……」

 話しながら中々にこういう話をするのは恥ずかしいなと思いつつ私が辿々しくそう告げると、レミィとリィナさんは即座に食いついた。

「まあ! そうなんだ!
オリヴィアさん、誰とお付き合いしているの?」
「私も気になるわ! 誰々~?」

「え、ええと……その、義理の弟の、ノアと……」

 私がそう話すと、レミィとリィナさんは少しの間の後納得した様な顔をしていた。

「義理の弟さんとなんですね」
「弟って事は、ハワード子爵のとこの次男坊かぁ。
社交界でチラッとしか見た事ないけど、確か男の子の割には可愛い顔立ちしてる子よね?」
「あ、それで間違いないと思います」

 リィナさんの問い掛けに私はそう答える。

「へぇ、あの子とオリヴィアちゃんがくっついたのか~。何はともあれ良かったわね」
「おめでとうオリヴィアさん」

「ありがとう。
だから……その、私が言うのもアレだけど、レミィさんも頑張って」

 私がそう言うと、レミィはにっこりと微笑んだ。

「ありがとうオリヴィアさん。
でも私、もうルイス様の事はすっかり諦めてるから」
「そう……なの?」
「うん。いつまでも引きずってられないし、前に告白してから大分スッキリしてるの。
それに、これからはミィナもいるしね」
「ワン!」

 レミィはそう微笑みながら名前をつけてもらった子犬のミィナの頭を撫でる。

 どうやら本当に吹っ切れている様で、そのレミィの笑顔は晴れやかだった。

「そうなのね。分かったわ」

 その笑顔を見て私はやっぱりレミィは強い子なんだなと思った。

 その後しばらく私はレミィとお喋りしたりミィナと戯れたりした後に帰路についた。


 ハワード家に帰ってきたら、玄関でノアが不貞腐れながら待っていた。

「あ、ノア。ただいま」

「……おかえりリヴィ。
下町のお友達の家は楽しかった?」

 何故だかノアは刺々しくそう訊いてくる。

「ええ、楽しかったわよ。
犬を飼い始めててね。その子犬が可愛かったわ」

 私がそう言うと、ノアはムスッとしながら小さく何かを呟いた。

「猫の次は犬か……」

「どうしたのノア?」

「いや、何でもない」

 そう拗ねながら答えるノアの横顔が何だか可愛らしくて私は頭を撫でた。

「何? 急に」

 依然不機嫌そうに訊いてくるノアに、私は真顔で答える。

「いや、何か拗ねてるノアが可愛らしくてつい」
「可愛くないから!」
「何怒ってるのよ?」

 私がそう尋ねると、ノアはふいっと横を向きながら答える。

「……だって、昨日だけならまだしも今日までリヴィ1人で出掛けるからさ」
「厳密にはお付きのメイドと御者もいるから1人じゃないけどね」
「そこは今どうでもいいから」
「何よ? ノアも下町に行きたかったの?」
「そうじゃなくて! 心配してるの!」

 何やら頬を膨らませてノアは怒っていたが、いかんせん私は何故怒ってるのかが分からなかった。

「心配? 何が?」
「だから! リヴィが他の人に襲われたり、その友達とやらに何かされたりとか危険な目に遭わないか心配だから!」

 ノアにそう言われて私は目を丸くした。

「いやいや、馬車で行ってるのに襲われたりしないだろうし、レミィさんやリィナさんは凄く良い人達よ?」
「そうだろうけど、俺は会った事ないし!」

 そう言って不貞腐れるノアに私は追加で話す。

「レミィさんは元貴族だし、リィナさんは今でも貴族らしいから、前に社交界で見たことくらいはあるんじゃないかしら?
リィナさんは見た事あるって言ってたし」
「俺が言いたいのはそういう話じゃ……
はあ、まあ兎に角、リヴィも1人で出かける時はくれぐれも気を付けてね」

 そしてノアは何か諦めた様にそう言った。

「はいはい。分かってるわよ」
「本当に分かってる?」
「分かってるって」

 私の返事にノアは訝しげな眼差しで見てきたが、私は特に気にする事なく部屋へと戻った。


 ……本当、俺がどれだけ心配してるかなんてリヴィは分かってないんだろうな。

 ところで、リィナって名前聞いた事ある気はするんだけど……まあいいか。

 ノアは特に何も気にしていないオリヴィアを見ては溜め息を吐いたのだった。




 それから、2年程月日は流れーー。

 結婚式の日の朝。

「……ふあぁ……眠い……」
「ノア、ちゃんと起きてる?
準備出来た?」
「大丈夫だよ、昨日の夜で大体済ませてたし。
そっちは?」
「こっちももう準備済んだわよ。
しっかし、久しぶりにハワード家に帰るわね」
「そうだね。
本格的に帰るのは半年ぶりかぁ」

 私とノアは2人でハワード家へ向かう為朝早くから準備をしていた。
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