【完結】悪役令嬢だけど何故か義理の兄弟達から溺愛されてます!?

本田ゆき

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カオスタイム

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 前回までのあらすじ。

アレシア「レイアン国王様、是非私と結婚して下さい♡♡」

レイアン「え?」
一同「は?」

 ……どうやらアレシアが恋に落ちた様です。



「その白く輝く艶のある長い髪……ペリドットの様に煌めく黄緑色の瞳……そして綺麗に整った顔立ちに何処か哀愁が漂う影が差して絶妙なコントラストを奏でている……一目惚れは雷に打たれた様な衝撃とは聞いた事あるけれど、まさにその通りだわ!
私、こんなにも強い感情に揺さぶられるのは生まれて初めて……♡

という訳でレイアン国王様、是非とも私を人生の伴侶にして下さらないかしら?」

 アレシアは恍惚の笑みでそう語りキラキラとした瞳でレイアンを見つめていた。

 その瞳にはあの悪意の翳りはもうなく、完全に恋する瞳になっていた。

「良かったなレイアン国王!
こんな可愛い女の子に求婚されて」

 その様をアデックは横から茶々を入れて楽しんでいる。

「何言ってるんですか、そんな急に言われましても……」
「でも相手はフィール国の姫だぞ?
身分だって申し分ないし政略結婚だと割り切れば願ったり叶ったりじゃないか」
「私は政略結婚でも全然構いませんわ!」

 レイアンは冷静に断ろうとするも、アデックの提案にアレシアはノリノリで答える。

 それからアレシアは思い出したかの様に私とノアの元へ振り向くとにっこりと笑顔で声をかけてきた。

「あ、そういう訳だからノア君はオリヴィア様にお返しするわ。
短い間恋人になってくれてどうもありがとうね」

「え、ええ……」

 唐突な返却宣言に私もノアもポカーンとアレシアを見やるも、アレシアはもう私達に興味がないらしくすぐにレイアンの方へ詰め寄って更にアタックを続けた。

「レイアン国王様、私じゃ何かいけないかしら?
あ、もしかして過去に付き合った男性が何人かいるとか気にしているなら安心して下さい。
誰一人として手は出していませんから」
「あ、いえ、そういう問題では……」
「それとも処女が面倒だと言うのなら、その辺にいるノア君とかで処女を捨ててきますわ」
「サラッと僕を巻き込まないで下さい。
嫌ですよ」

 アレシアから適当な扱いを受けるノアがつくづく不憫だなと思う。

「というか、僕が振る予定だったのに逆にあっさり振られるなんて何か癪なんですけど」
「まあ……残念だったわね」
「いや、別に良いんですけどー」

 流石にこんな展開になるとは予想していなかった為、ノアは少し不貞腐れながらそう唇を尖らせていた。

 そんなノアを横目で見ながらいじけてるのも可愛いなとついまじまじと見てしまう。

「……何ですかオリヴィア姉様」

 するとどうやら私の視線に気付いたらしくノアが少し顔を赤らめてジトーッと見てきた。

「いや、何でもないわ」

 私もつられて顔が赤くなりそうになったので必死に平常心を保ってそう短く返事をした。

「えーと……そんじゃあ俺はオリヴィアやノアをボコんなくてもいいのか?」

 一方状況をしばらく静観していた先生は呆れた様にアレシアへと問い掛ける。

「あ、ブラッディ!
もう別にいいわ。ありがとう」
「あっそ。
ところで、お前がそこにいる男の所に嫁ぐんだったら、俺はもうお役御免って事か?」

 先生にそう尋ねられてアレシアはそうねぇ……と少し考えた後に口を開いた。

「何なら私が結婚してもボディガードとして一緒にオルトレアに来てくれてもいいけれど」
「いや、まだ結婚するとは決まってないのですが」

 アレシアの言葉にレイアンはそうツッコむが、しかし残念ながらこの状態だともうアレシアは何が何でもレイアンと結婚する気満々である。

 寧ろ結婚できなくてもそのままオルトレアまで勢いよく追いかけていきそうだ。

「嫌だね。
ただでさえノルトギア語と簡単な英語だけで手一杯だってのに、オルトレア語まで覚えてらんねーし」

 しかしそんなアレシアの誘いを先生はきっぱりと断っていた。

「……ん? ブラッディ?
……お前、まさか昔うちの軍を一個師団壊滅させた幻の軍神、ブラッディ・ノイズか?」

 先生の名前を聞いてアデックは昔の事を思い出したかの様にそう尋ねた。

「え? アデック王子、先生の事知ってるんですか?」

 ただ、私としてはアデックが先生を知っている事の方がびっくりである。

 そういえばこの前ソフィアから先生が兵隊として働いていたと言ってたから、その時の事だろうか?

 しかも軍神として覚えられているって、一体どれだけ暴れたのだろうか……?

 まさかの王子に名前を覚えられていた先生なのだが、先生は更にとんでもない質問をアデックにしだした。

「あ? お前誰だ?」

「兄さん!? お前って! この国の王子くらい覚えとけよっ!?」

 なんとアデックの事を逆に先生が知らなかったのだ。
 そんな先生に対してソフィアは驚きながら物凄い勢いでツッコむ。

「仕方ねーだろ!?
王子とか普段会う事ねーし!」
「そりゃそうだけどニュースも見ないからでしょ!?」

 そんな先生とソフィアのやり取りを見て、アデックは、ははっと笑い出した。

「お前面白い奴だなぁ!
初対面でそう言われたのはジュード以来だ。
それにかなり強いんだろ?
もし他に職がないって言うんなら、今度は俺のボディガードとして働かないか?」

「は? いいのかよ?」
「え、ええっ!?」

 笑いながらそう提案するアデックに先生は乗り気な反面ソフィアは驚いて目を丸くしていた。

「あの、アデック王子、先生は喧嘩以外他の事は出来ませんよ?」

 私も驚きの事態にアデックにそう忠告するが、アデックは笑顔で返事をする。

「別に構わんぞ?
難しい事は執事のジュードに任せてるし。
ちょうど強いボディガードを雇おうかとも考えていたところだったしな」

「俺としては難しい事覚えなくていいんなら全然いいぜ!」

「いや、兄さんが王室で働くだなんて……!」

 ……という訳で、先生の再就職先が何とアデック王子のボディガードになったのだった。

「人生何が起こるか分からないものですね」
「本当ね」

 そんなアデックと先生とソフィアのやり取りを、私とノアは半ば感心しながら眺めていた。

 こうして、アレシアはレイアン王子に一目惚れし、先生は王室で働く事になり、そしてノアは無事ハワード家へ帰る事になったのだった。
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