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私の気持ち
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ソフィアと話した次の日、私はメアリーに相談してみる事にした。
「メアリー、今少しいいかしら」
「あらオリヴィアお嬢様、どうされましたか?」
メアリーは私からの声かけに驚いたのか目を丸くしながら問い掛けてきた。
「その……ちょっとした相談、というか……」
「はい、何でしょうか?」
「……自分の気持ちがよく分からない時って、どうしたらいいのかしら」
私の問いに、メアリーはうーん、と少し考え込んだ後にゆっくりと口を開く。
「そうですねぇ……例えば自分を客観的に見る、とかですかね」
「客観的……」
とは言われても、それが中々難しいのだが。
私はアドバイス通り何とか自分を客観的に見てみようと思うが、どうにも上手くいかない。
「中々難しいわね」
「ならオリヴィアお嬢様、試しに自分の事を他人だと思って私に説明してみて下さい」
「へ? 説明?」
「そうです。
オリヴィアお嬢様のご友人が困ってるとして、その事を説明する……みたいな感じで」
それって意味があるのだろうか?
そう思いつつも私はメアリーに言われた通りにしてみる。
「えーと、じゃあ、私の友達の話で……その子はとある男の子に告白されたんだけど、その子はその男の子の事が好きかどうかが分からなくて、それと別の男の子が今ちょっとトラブルに巻き込まれてて、それをどうにかしたいと思ってるんだけど、でもその子の力だけではどうにも出来なくて……」
「つまり、その子は何に悩んでるんですか?」
「えーと、その子は告白された男の子に、そのトラブルに巻き込まれてる男の子が好きなのかと訊かれて……別に恋愛感情があるなしに関わらずその子はトラブルに巻き込まれた男の子を助けたいと思っているんだけど……。
あれ?」
話しているうちに、段々と心がざわついてくる様な感覚に襲われた。
何か、大事な事に気づきかけている様な、そんな感覚。
メアリーはそれに気付いているのか、更に質問してくる。
「結局、その子の悩みは何ですか?」
「……トラブルに巻き込まれた子は助けたい。
それと、告白してきた子にはきちんと自分気持ちを理解して返事をしたい」
「成る程……でも、その子の2つの悩みってあんまり繋がってないですよね?
告白してきた子への返事はその子の事が好きかどうかですし、トラブルに巻き込まれた子はそのトラブル自体をどうにかしないとですし」
「そう……よね。
ただ、その告白してきた男の子にトラブルに巻き込まれた男の子が好きかと訊かれて、その子は自分の気持ちが分からなかったの。
告白してきた男の子が好きなのか、トラブルに巻き込まれた子が好きなのか、はたまたどちらも好きじゃないのか……」
私が混乱気味に話す中、メアリーは淡々と質問する。
「オリヴィアお嬢様なら、その子にどうアドバイスします?」
「私なら……その告白された男の子が好きかどうか分からないなら分からないって言ってしまえばいいだけの話だし、トラブルに巻き込まれた男の子は自分でどうにか出来ないなら悩んだところで仕方がないし……ん?」
あっさりと悩みに対する解決策が出てきて私は首を傾げる。
確かにその通りなんだけれど、私が悩んでいたのはもっと別の話だった様な……。
結局これでは私はノアが好きなのかどうかが分からない。
いや、そもそもルイスも好きか分からないで解決してるなら、もうそれで終わりのはずなんだ。
それに、ノアを助ける打開策も私にない以上、悩んだ所でどうしようもないだなんて分かりきっている。
悩む必要なんてない、のに……。
私が腑に落ちない顔をしていると、メアリーが私の顔を真っ直ぐと見てきた。
「その子の悩みは、解決出来ましたか?」
「え? えーと……それはそうなんだけど、その子の本当に悩んでる事は、多分トラブルに巻き込まれた子を何が何でも助けたいというか、それに、そのトラブルに巻き込まれた子の事を好きかどうかが分からないのが気になってるというか……」
「告白された子ではなくですか?」
「え? あれ?
それもそうよね?」
そうだ、何故告白された子ではなくトラブルに巻き込まれた子の方が好きかどうか知りたいんだろうか?
気にする必要なんて本来ないはずなのに……
「そんなに気にするって事はそれだけその男の子の事が好きって事なんじゃ……ん?」
ボソリと自分で呟きながら自分の言った言葉に目を見開く。
そして、それを聞いていたメアリーは満面の笑みで口を開いた。
「なぁんだ。
オリヴィアお嬢様、自分でちゃんと気付けてるじゃないですか」
「……え?」
今の言葉が、私の気持ちなのだろうか?
私がまだ訳が分からないといった顔をしていると、メアリーはくすくすと笑う。
「オリヴィアお嬢様は今自分の質問に自分で答えてたんですよ?
それが自分の気持ちでないと言うのなら一体誰の気持ちなんですか?」
「それ、は……」
確かに、私の話している"その子"の話は紛れもなく私の話だ。
そして、その子の悩みに答えたのも私。
つまり、私は……。
「私、ノアの事が好き……なの?」
首を傾げながら私がメアリーに尋ねると、メアリーはおかしそうに笑った。
「それは私にではなくてオリヴィアお嬢様の心の中の"その子"に訊いてみてください」
メアリーに言われて私は自分に再度問い掛ける。
私はノアが好きなのか?
すると、心臓がドクンッと大きく脈打った。
それに、何だか体全体が熱く感じる。
多分、私の顔は真っ赤になっているのだろう。
そういえば、あの恋愛物語にも恋をしてる状態では相手の事を考えると脈が速くなるとか書かれていた事を思い出した。
今は手首で測らなくても、心臓がいつも以上にドキドキと高鳴ってるのが分かる。
これは、つまり……。
「嘘……」
認めたくない。
何だかすっごくノアに負けた気がして悔やしいのだが、しかし誤魔化せない程心臓がドキドキいってるし顔も真っ赤になっている。
そんな状態になってしまうくらいには、私はどうやらノアの事が好きらしい。
「メアリー、今少しいいかしら」
「あらオリヴィアお嬢様、どうされましたか?」
メアリーは私からの声かけに驚いたのか目を丸くしながら問い掛けてきた。
「その……ちょっとした相談、というか……」
「はい、何でしょうか?」
「……自分の気持ちがよく分からない時って、どうしたらいいのかしら」
私の問いに、メアリーはうーん、と少し考え込んだ後にゆっくりと口を開く。
「そうですねぇ……例えば自分を客観的に見る、とかですかね」
「客観的……」
とは言われても、それが中々難しいのだが。
私はアドバイス通り何とか自分を客観的に見てみようと思うが、どうにも上手くいかない。
「中々難しいわね」
「ならオリヴィアお嬢様、試しに自分の事を他人だと思って私に説明してみて下さい」
「へ? 説明?」
「そうです。
オリヴィアお嬢様のご友人が困ってるとして、その事を説明する……みたいな感じで」
それって意味があるのだろうか?
そう思いつつも私はメアリーに言われた通りにしてみる。
「えーと、じゃあ、私の友達の話で……その子はとある男の子に告白されたんだけど、その子はその男の子の事が好きかどうかが分からなくて、それと別の男の子が今ちょっとトラブルに巻き込まれてて、それをどうにかしたいと思ってるんだけど、でもその子の力だけではどうにも出来なくて……」
「つまり、その子は何に悩んでるんですか?」
「えーと、その子は告白された男の子に、そのトラブルに巻き込まれてる男の子が好きなのかと訊かれて……別に恋愛感情があるなしに関わらずその子はトラブルに巻き込まれた男の子を助けたいと思っているんだけど……。
あれ?」
話しているうちに、段々と心がざわついてくる様な感覚に襲われた。
何か、大事な事に気づきかけている様な、そんな感覚。
メアリーはそれに気付いているのか、更に質問してくる。
「結局、その子の悩みは何ですか?」
「……トラブルに巻き込まれた子は助けたい。
それと、告白してきた子にはきちんと自分気持ちを理解して返事をしたい」
「成る程……でも、その子の2つの悩みってあんまり繋がってないですよね?
告白してきた子への返事はその子の事が好きかどうかですし、トラブルに巻き込まれた子はそのトラブル自体をどうにかしないとですし」
「そう……よね。
ただ、その告白してきた男の子にトラブルに巻き込まれた男の子が好きかと訊かれて、その子は自分の気持ちが分からなかったの。
告白してきた男の子が好きなのか、トラブルに巻き込まれた子が好きなのか、はたまたどちらも好きじゃないのか……」
私が混乱気味に話す中、メアリーは淡々と質問する。
「オリヴィアお嬢様なら、その子にどうアドバイスします?」
「私なら……その告白された男の子が好きかどうか分からないなら分からないって言ってしまえばいいだけの話だし、トラブルに巻き込まれた男の子は自分でどうにか出来ないなら悩んだところで仕方がないし……ん?」
あっさりと悩みに対する解決策が出てきて私は首を傾げる。
確かにその通りなんだけれど、私が悩んでいたのはもっと別の話だった様な……。
結局これでは私はノアが好きなのかどうかが分からない。
いや、そもそもルイスも好きか分からないで解決してるなら、もうそれで終わりのはずなんだ。
それに、ノアを助ける打開策も私にない以上、悩んだ所でどうしようもないだなんて分かりきっている。
悩む必要なんてない、のに……。
私が腑に落ちない顔をしていると、メアリーが私の顔を真っ直ぐと見てきた。
「その子の悩みは、解決出来ましたか?」
「え? えーと……それはそうなんだけど、その子の本当に悩んでる事は、多分トラブルに巻き込まれた子を何が何でも助けたいというか、それに、そのトラブルに巻き込まれた子の事を好きかどうかが分からないのが気になってるというか……」
「告白された子ではなくですか?」
「え? あれ?
それもそうよね?」
そうだ、何故告白された子ではなくトラブルに巻き込まれた子の方が好きかどうか知りたいんだろうか?
気にする必要なんて本来ないはずなのに……
「そんなに気にするって事はそれだけその男の子の事が好きって事なんじゃ……ん?」
ボソリと自分で呟きながら自分の言った言葉に目を見開く。
そして、それを聞いていたメアリーは満面の笑みで口を開いた。
「なぁんだ。
オリヴィアお嬢様、自分でちゃんと気付けてるじゃないですか」
「……え?」
今の言葉が、私の気持ちなのだろうか?
私がまだ訳が分からないといった顔をしていると、メアリーはくすくすと笑う。
「オリヴィアお嬢様は今自分の質問に自分で答えてたんですよ?
それが自分の気持ちでないと言うのなら一体誰の気持ちなんですか?」
「それ、は……」
確かに、私の話している"その子"の話は紛れもなく私の話だ。
そして、その子の悩みに答えたのも私。
つまり、私は……。
「私、ノアの事が好き……なの?」
首を傾げながら私がメアリーに尋ねると、メアリーはおかしそうに笑った。
「それは私にではなくてオリヴィアお嬢様の心の中の"その子"に訊いてみてください」
メアリーに言われて私は自分に再度問い掛ける。
私はノアが好きなのか?
すると、心臓がドクンッと大きく脈打った。
それに、何だか体全体が熱く感じる。
多分、私の顔は真っ赤になっているのだろう。
そういえば、あの恋愛物語にも恋をしてる状態では相手の事を考えると脈が速くなるとか書かれていた事を思い出した。
今は手首で測らなくても、心臓がいつも以上にドキドキと高鳴ってるのが分かる。
これは、つまり……。
「嘘……」
認めたくない。
何だかすっごくノアに負けた気がして悔やしいのだが、しかし誤魔化せない程心臓がドキドキいってるし顔も真っ赤になっている。
そんな状態になってしまうくらいには、私はどうやらノアの事が好きらしい。
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