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描いて欲しい
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ある日のハワード家の昼下がり。
「はぁ、もう8月も終わりそうなのにまだ暑い……」
暑さに項垂れながらオリヴィアはワンピース姿で涼を求めて庭園へとやってきていた。
というのも、ノアを避ける必要がなくなってから庭園が屋敷の中で1番涼しいという事が分かり、それから避暑地として毎日行く様になっていたのだ。
「……また来たんだ、オリヴィア姉様」
「何よ。別に良いでしょ?」
そして同じく庭園を避暑地としているノアとは毎日の様に顔を合わせる様になっていた。
「良いも何も、俺にとっては毎日オリヴィア姉様と2人きりになれて嬉しい限りだけどね」
「それは良かったわね」
とはいえ別にノアとお喋りしに来ている訳でもないので、大体私は本を持ってくる様にしていた。
それにノアもノアで本を読んでたり寝ていたり絵を描いていたりと割と自由にしていたので、お互い無理して喋る事もなく各々好きに過ごしてる感じではあったのだが。
「……あんたって相変わらず絵が上手いわね」
その日、何となく私はノアが今現在描いている途中のキャンバスを見てそう言った。
因みにそのキャンバスには庭園の花々が美しく描かれている。
ノアもノアで私から褒められると思っていなかったらしく、一瞬驚いた様に目を見開いた後照れ臭そうに微笑んでいた。
「ありがとう。
でも絵を描く事自体趣味程度だからいい加減そろそろやめようかと思っていたけど」
「そうなの?
てっきり画家でも目指してるのかと思ってたわ」
ノアの言葉に少し驚いた私はそう話すと、ノアはいやいやとかぶりを振った。
「別に絵を描くのが凄い好きって訳でもないしね」
「え? そうなの?」
てっきりノアがよく絵を描いてるのは好きだからなのかと思っていたのだが、どうやら違っていたらしく私は普通に驚いた。
それからノアはどうして絵を描く様になったのか経緯を教えてくれた。
「うん。子供の頃に兄弟の中で俺が1番絵が上手くて……て言っても、そこまで凄く上手かった訳じゃなくて、単にルーカス兄さんやエマ姉さんが壊滅的に絵が下手で、それと比較したら俺の絵がまだまともだったってだけなんだけどさ。
それでも周りの大人達に褒められたのが嬉しくて、それから絵を描く様になったんだ。
だから別に上手くなりたくて描いていた訳じゃなくて、ただ認められたのが嬉しかったから、気付いたら上達してただけで」
ノアにそう説明されて私は納得する。
「へぇ、そうだったんだ……まあ確かにルーカスやエマの絵は残念なレベルだけど……それにしてもあんたもそこまで上達したんなら本気で画家目指したりしないの?」
私の素朴な疑問に、ノアはまた首を横に振る。
「いや……正直画家って安定してないし、将来の事を考えればもう少し勉強して講師か牧師にでもなろうかなって考えてたけど……」
少し寂しそうに、切なく笑いながらノアはそう答えた。
確かにノアの言う通り画家を含む芸術家って、売れるかどうかは茨の道である事に違いない。
安定を求めるなら講師なり牧師なりになる方が確実なのは分かるのだが……。
「あー、まあそりゃあ安定をとるならそうだろうけど、何だか勿体ないわね。
私はあんたの絵、割と好きだけど」
何だかそれだけで諦めるのは残念だなと思ってしまう。
いや、芸術の事なんて何も知らない私が言えた事ではないのだろうけど。
しかし私がそう言った途端、ノアの筆がピタッと止まった。
「え……好き、なの?」
それから顔を下に向けて小さく問い掛けてくるノアを不思議に思いつつ私は素直な意見を述べる。
「?
まあ芸術作品とかよく分からないし素人目線だけど、凄い上手だと思うわよ?」
「そ、そう……?
そっか」
ゆっくりと顔を上げたノアは、何やら褒められたのが凄く嬉しかったのか、顔を赤くしてにやけていた。
「オリヴィア姉様がそう言うなら、もう少し真面目に描こうかな……」
「え? それだけ上手いのに真面目じゃなかったの?」
「まあ、お遊び程度にしか考えてなかったから……」
お遊び程度でそれなら、本気出したらどうなるんだろう……。
そんな疑問が思い浮かぶ中、ノアはにこにこと笑顔で話してきた。
「でも、オリヴィア姉様が褒めてくれるなんて思わなかったなぁ」
「まあ、前々から上手いなとは思ってたけど、そういえば褒めた事はなかったっけ?」
ふと思い返してみたら、確かに面と向かって褒めた事はなかったのかもしれない。
「うん。オリヴィア姉様ってこういうの興味ないと思ってたし」
「まあ芸術にそこまで興味があるかと言われたらそんなにだけど、でもあんたの絵は純粋に良いなと思っただけで……。
あ、ねえノア、実は前から1つお願いしたい事があったんだけど」
折角なので私はノアに頼もうかどうしようか悩んでいた事を訊いてみる事にした。
「え? 何?」
「その……猫の絵を、描いて欲しいなって」
「良いよ」
小さな声でそう頼んでみると、ノアは迷う事なくすぐに返事をくれた。
「え!? 本当に!?」
あまりのノアの即答に私はつい大声で問い返してしまった。
そんな私の事をノアは不思議そうに見てきた。
「というかそんな事ならもっと早く言ってくれても良かったのに」
「いや、それもそうなんだけど……頼みづらかったというか……」
ノアが絵をあげた事のある人って多分キャットレイさんだけだから、私が頼んでもいいものかとも悩んだのだ。
ノアにとってキャットレイさんは特別な人だろうから猫の絵をあげたのでは……? と考えると、私が猫の絵を頼むのは何だか悪い気がした。
しかし、ノアは大して気にしていなかった……というより、寧ろ頼まれて嬉しそうにしていた。
「それじゃあ時間がある時に真面目に描いたものをあげるよ」
「いや、それこそお遊び程度で良いんだけど」
そんなに猫の絵に気合いを入れないでも、と思いそう言ったのだが、どうやらノアのやる気に火がついたらしい。
「オリヴィア姉様にあげるものをお遊び程度に出来る訳ないじゃん。
ちゃんと真面目に描いてくるから」
「でも、キャットレイさんにあげたのはそこまでしっかりとしたものじゃなかったじゃない」
私がそう訊くと、ノアはえ? と目を丸くする。
「野良猫にあげたのは、別にあげようと思って描いたものじゃないからね。
たまたまオスカーの事を落書き程度に描いていたら、あいつに欲しい! ってせがまれてあげたものだから」
「あ、そうなんだ」
てっきりノアから自主的にあげたのかと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。
その事実を聞いて、何だか悩んでいた自分が少し馬鹿だったなと思えた。
「というかオリヴィア姉様、そんな事気にしていたの?」
ノアにそう訊かれて、私はどう答えるか迷いながら話す。
「あんたにとってキャットレイさんって大事な人だったんでしょ?
だからその、私が絵を頼むのは何か悪いかなって思えて……」
「まあ、確かに野良猫は大事な人かと言われたら、そうかもだけど、だからって野良猫にしか絵を描いてあげないって訳でもないし、何なら俺にとって今1番大事な人はオリヴィア姉様だからね」
そう断言するノアを見て、私は小さく溜め息を吐いた。
「あんたって本当に私の事好きよね」
「うん。大好きだけど?」
そう照れるでもなく当たり前の様に言うノアに私は呆れを通り越して感心していた。
「何であんたってそんなに私の事好きなのよ?」
「え? そりゃあ、素直じゃなくて人間関係も下手で人を傷付ける事で自分も傷付いちゃうくらい繊細な癖に自分は平気だとか痩せ我慢しようとするし人を中々頼ろうともしないし」
「え? 何で私急にディスられてるの?」
何故好きになったのか聞いたつもりが、私の悪い所ばかりを、それもうんざりするくらい嫌な程的確に当てられてしまった。
「本当オリヴィア姉様って手先は器用なのにそれ以外は不器用で、そういう所が全部本当に可愛らしくて俺は大好きだよ」
「……はぁっ!?」
聞いててこのまま自分の悪口のみで終わるのかと油断していたら、まさかその悪い所全部可愛くて好きだと言われるだなんて思ってもおらずつい驚きの声が漏れた。
「まあ簡単に言えばオリヴィア姉様の良い所も悪い所も全部好きって事」
そうにやりと笑顔で話すノアを見て私はまた溜め息を吐く。
「よくもまあ人の悪い所をすらすらと言い当ててきたわね……」
「そりゃあ好きな人の事なら何でも知りたいし、それに俺はいつだってオリヴィア姉様の事を見てるから」
「……ちょっと引くわ」
私が真顔でそう言うとノアは不機嫌そうに頬を膨らませた。
「むぅ、心外だなぁ。
俺は純粋にオリヴィア姉様を好きなだけなのに」
「あんたが言う純粋には下心も混じってるでしょうに」
「まあそこは否定出来ないけど」
「せめて否定しろそこは」
私がツッコむとノアはあははと笑っていた。
それからの時間はもう本を読むには中途半端な時間だった為、その日はおやつの時間まで暫くノアと他愛ないお喋りをして過ごした。
「それじゃあオリヴィア姉様、猫の絵描けたら渡しに行くね」
「分かったわ」
ノアはそう言った後何か思いついたのかにやりと笑顔になる。
「ねえオリヴィア姉様。
絵をあげる代わりに、俺と2人でデートしてくれない?」
「え……?
はあ、まあいいわよ」
てっきり今回は何も言ってこないなと思っていたのだが、流石このちゃっかりとした義弟はやはり条件をつけてきた。
まあ、絵の報酬でデートくらいなら別に構わないかなと思い私がOKすると、ノアは嬉しそうに笑顔になる。
「じゃあ俺頑張って描くね!」
「はいはい」
こうして私とノアはそれぞれ庭園を出て一旦部屋へと戻ったのだった。
「……しかし、何であいつ私の気にしてる所をあんなに分かってるのよ……ちょっとムカつくわ」
オリヴィアはノアに自分の駄目な所を言い当てられた事に少しだけ頬を赤らめたのだった。
「はぁ、もう8月も終わりそうなのにまだ暑い……」
暑さに項垂れながらオリヴィアはワンピース姿で涼を求めて庭園へとやってきていた。
というのも、ノアを避ける必要がなくなってから庭園が屋敷の中で1番涼しいという事が分かり、それから避暑地として毎日行く様になっていたのだ。
「……また来たんだ、オリヴィア姉様」
「何よ。別に良いでしょ?」
そして同じく庭園を避暑地としているノアとは毎日の様に顔を合わせる様になっていた。
「良いも何も、俺にとっては毎日オリヴィア姉様と2人きりになれて嬉しい限りだけどね」
「それは良かったわね」
とはいえ別にノアとお喋りしに来ている訳でもないので、大体私は本を持ってくる様にしていた。
それにノアもノアで本を読んでたり寝ていたり絵を描いていたりと割と自由にしていたので、お互い無理して喋る事もなく各々好きに過ごしてる感じではあったのだが。
「……あんたって相変わらず絵が上手いわね」
その日、何となく私はノアが今現在描いている途中のキャンバスを見てそう言った。
因みにそのキャンバスには庭園の花々が美しく描かれている。
ノアもノアで私から褒められると思っていなかったらしく、一瞬驚いた様に目を見開いた後照れ臭そうに微笑んでいた。
「ありがとう。
でも絵を描く事自体趣味程度だからいい加減そろそろやめようかと思っていたけど」
「そうなの?
てっきり画家でも目指してるのかと思ってたわ」
ノアの言葉に少し驚いた私はそう話すと、ノアはいやいやとかぶりを振った。
「別に絵を描くのが凄い好きって訳でもないしね」
「え? そうなの?」
てっきりノアがよく絵を描いてるのは好きだからなのかと思っていたのだが、どうやら違っていたらしく私は普通に驚いた。
それからノアはどうして絵を描く様になったのか経緯を教えてくれた。
「うん。子供の頃に兄弟の中で俺が1番絵が上手くて……て言っても、そこまで凄く上手かった訳じゃなくて、単にルーカス兄さんやエマ姉さんが壊滅的に絵が下手で、それと比較したら俺の絵がまだまともだったってだけなんだけどさ。
それでも周りの大人達に褒められたのが嬉しくて、それから絵を描く様になったんだ。
だから別に上手くなりたくて描いていた訳じゃなくて、ただ認められたのが嬉しかったから、気付いたら上達してただけで」
ノアにそう説明されて私は納得する。
「へぇ、そうだったんだ……まあ確かにルーカスやエマの絵は残念なレベルだけど……それにしてもあんたもそこまで上達したんなら本気で画家目指したりしないの?」
私の素朴な疑問に、ノアはまた首を横に振る。
「いや……正直画家って安定してないし、将来の事を考えればもう少し勉強して講師か牧師にでもなろうかなって考えてたけど……」
少し寂しそうに、切なく笑いながらノアはそう答えた。
確かにノアの言う通り画家を含む芸術家って、売れるかどうかは茨の道である事に違いない。
安定を求めるなら講師なり牧師なりになる方が確実なのは分かるのだが……。
「あー、まあそりゃあ安定をとるならそうだろうけど、何だか勿体ないわね。
私はあんたの絵、割と好きだけど」
何だかそれだけで諦めるのは残念だなと思ってしまう。
いや、芸術の事なんて何も知らない私が言えた事ではないのだろうけど。
しかし私がそう言った途端、ノアの筆がピタッと止まった。
「え……好き、なの?」
それから顔を下に向けて小さく問い掛けてくるノアを不思議に思いつつ私は素直な意見を述べる。
「?
まあ芸術作品とかよく分からないし素人目線だけど、凄い上手だと思うわよ?」
「そ、そう……?
そっか」
ゆっくりと顔を上げたノアは、何やら褒められたのが凄く嬉しかったのか、顔を赤くしてにやけていた。
「オリヴィア姉様がそう言うなら、もう少し真面目に描こうかな……」
「え? それだけ上手いのに真面目じゃなかったの?」
「まあ、お遊び程度にしか考えてなかったから……」
お遊び程度でそれなら、本気出したらどうなるんだろう……。
そんな疑問が思い浮かぶ中、ノアはにこにこと笑顔で話してきた。
「でも、オリヴィア姉様が褒めてくれるなんて思わなかったなぁ」
「まあ、前々から上手いなとは思ってたけど、そういえば褒めた事はなかったっけ?」
ふと思い返してみたら、確かに面と向かって褒めた事はなかったのかもしれない。
「うん。オリヴィア姉様ってこういうの興味ないと思ってたし」
「まあ芸術にそこまで興味があるかと言われたらそんなにだけど、でもあんたの絵は純粋に良いなと思っただけで……。
あ、ねえノア、実は前から1つお願いしたい事があったんだけど」
折角なので私はノアに頼もうかどうしようか悩んでいた事を訊いてみる事にした。
「え? 何?」
「その……猫の絵を、描いて欲しいなって」
「良いよ」
小さな声でそう頼んでみると、ノアは迷う事なくすぐに返事をくれた。
「え!? 本当に!?」
あまりのノアの即答に私はつい大声で問い返してしまった。
そんな私の事をノアは不思議そうに見てきた。
「というかそんな事ならもっと早く言ってくれても良かったのに」
「いや、それもそうなんだけど……頼みづらかったというか……」
ノアが絵をあげた事のある人って多分キャットレイさんだけだから、私が頼んでもいいものかとも悩んだのだ。
ノアにとってキャットレイさんは特別な人だろうから猫の絵をあげたのでは……? と考えると、私が猫の絵を頼むのは何だか悪い気がした。
しかし、ノアは大して気にしていなかった……というより、寧ろ頼まれて嬉しそうにしていた。
「それじゃあ時間がある時に真面目に描いたものをあげるよ」
「いや、それこそお遊び程度で良いんだけど」
そんなに猫の絵に気合いを入れないでも、と思いそう言ったのだが、どうやらノアのやる気に火がついたらしい。
「オリヴィア姉様にあげるものをお遊び程度に出来る訳ないじゃん。
ちゃんと真面目に描いてくるから」
「でも、キャットレイさんにあげたのはそこまでしっかりとしたものじゃなかったじゃない」
私がそう訊くと、ノアはえ? と目を丸くする。
「野良猫にあげたのは、別にあげようと思って描いたものじゃないからね。
たまたまオスカーの事を落書き程度に描いていたら、あいつに欲しい! ってせがまれてあげたものだから」
「あ、そうなんだ」
てっきりノアから自主的にあげたのかと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。
その事実を聞いて、何だか悩んでいた自分が少し馬鹿だったなと思えた。
「というかオリヴィア姉様、そんな事気にしていたの?」
ノアにそう訊かれて、私はどう答えるか迷いながら話す。
「あんたにとってキャットレイさんって大事な人だったんでしょ?
だからその、私が絵を頼むのは何か悪いかなって思えて……」
「まあ、確かに野良猫は大事な人かと言われたら、そうかもだけど、だからって野良猫にしか絵を描いてあげないって訳でもないし、何なら俺にとって今1番大事な人はオリヴィア姉様だからね」
そう断言するノアを見て、私は小さく溜め息を吐いた。
「あんたって本当に私の事好きよね」
「うん。大好きだけど?」
そう照れるでもなく当たり前の様に言うノアに私は呆れを通り越して感心していた。
「何であんたってそんなに私の事好きなのよ?」
「え? そりゃあ、素直じゃなくて人間関係も下手で人を傷付ける事で自分も傷付いちゃうくらい繊細な癖に自分は平気だとか痩せ我慢しようとするし人を中々頼ろうともしないし」
「え? 何で私急にディスられてるの?」
何故好きになったのか聞いたつもりが、私の悪い所ばかりを、それもうんざりするくらい嫌な程的確に当てられてしまった。
「本当オリヴィア姉様って手先は器用なのにそれ以外は不器用で、そういう所が全部本当に可愛らしくて俺は大好きだよ」
「……はぁっ!?」
聞いててこのまま自分の悪口のみで終わるのかと油断していたら、まさかその悪い所全部可愛くて好きだと言われるだなんて思ってもおらずつい驚きの声が漏れた。
「まあ簡単に言えばオリヴィア姉様の良い所も悪い所も全部好きって事」
そうにやりと笑顔で話すノアを見て私はまた溜め息を吐く。
「よくもまあ人の悪い所をすらすらと言い当ててきたわね……」
「そりゃあ好きな人の事なら何でも知りたいし、それに俺はいつだってオリヴィア姉様の事を見てるから」
「……ちょっと引くわ」
私が真顔でそう言うとノアは不機嫌そうに頬を膨らませた。
「むぅ、心外だなぁ。
俺は純粋にオリヴィア姉様を好きなだけなのに」
「あんたが言う純粋には下心も混じってるでしょうに」
「まあそこは否定出来ないけど」
「せめて否定しろそこは」
私がツッコむとノアはあははと笑っていた。
それからの時間はもう本を読むには中途半端な時間だった為、その日はおやつの時間まで暫くノアと他愛ないお喋りをして過ごした。
「それじゃあオリヴィア姉様、猫の絵描けたら渡しに行くね」
「分かったわ」
ノアはそう言った後何か思いついたのかにやりと笑顔になる。
「ねえオリヴィア姉様。
絵をあげる代わりに、俺と2人でデートしてくれない?」
「え……?
はあ、まあいいわよ」
てっきり今回は何も言ってこないなと思っていたのだが、流石このちゃっかりとした義弟はやはり条件をつけてきた。
まあ、絵の報酬でデートくらいなら別に構わないかなと思い私がOKすると、ノアは嬉しそうに笑顔になる。
「じゃあ俺頑張って描くね!」
「はいはい」
こうして私とノアはそれぞれ庭園を出て一旦部屋へと戻ったのだった。
「……しかし、何であいつ私の気にしてる所をあんなに分かってるのよ……ちょっとムカつくわ」
オリヴィアはノアに自分の駄目な所を言い当てられた事に少しだけ頬を赤らめたのだった。
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