229 / 328
リベンジマッチ!
しおりを挟む
前回までのあらすじ。
エマ「殴って!」
オリヴィア「嫌だ」
エマ「一緒にお風呂に入ろう!」
オリヴィア「は?」
……以上!
「……いや、あらすじちゃんと仕事しろ!」
「オリヴィアちゃん、どうしたの?」
何やら急にツッコミを入れるオリヴィアに対して、エマは不思議そうに問い掛ける。
「いや、こっちの話。
そんな事より……。
一緒にお風呂に入るってどういう事よ?」
オリヴィアはエマの言葉の真意が分からずに訊き返した。
「言葉通りの意味よ!
私とオリヴィアちゃんの2人でお風呂に入るの!」
「いや、そうじゃなくて、何で一緒にお風呂に入らなきゃいけないのよ?」
「それはね、私のトレーニングの為よ!」
「トレーニング?」
エマの答えを聞いてオリヴィアはますます訳が分からずに首を傾げる。
「今のままだと私はずっとオリヴィアちゃんを意識してしまう……。
それなら、オリヴィアちゃんを意識しない様に、常に平常心を保つ為にトレーニングをしようと思ったの!
今まで私はオリヴィアちゃんとお風呂に入る度にノックアウトさせられたけど、今度こそ倒れずに生還してみせるわ!」
「普通お風呂でノックアウトなんてしないんだけれどね」
エマの意気込みを他所にオリヴィアは冷静にツッコんだ。
「じゃあそうと決まればオリヴィアちゃんにも付き合って貰うわ!
早速お風呂へゴー!」
「なんで私がそれに付き合う前提なのよ? しかもこんな朝からお風呂って……って! ちょっ、放しっ……あぁぁ!」
オリヴィアが否定するのも束の間、エマはオリヴィアの腕をがっしりと掴むとそのままズルズルとオリヴィアを引き連れて大浴場へと向かった。
「……何でこんな目に」
「まあまあ!
朝からお風呂も気持ち良いじゃない!」
それから、2人は早速着替えてお風呂に浸かっていた。
オリヴィアはそう嘆きつつも、しかし蒸し暑い夏の夜、寝汗もかいていたのは事実なので確かにエマの言う通り気持ち良いではあるなと考えていた。
「はぁ、しかしこんなんでトレーニングになんてなるの?」
果たしてこれに意味はあるのかとオリヴィアが確認しようとエマの所を振り向くと、案の定エマの顔が真っ赤になっていた。
「も、勿論トレーニングになっているわ!
今何とか平常心を保とうとしているもの……」
「……そっか」
最早ツッコむのも面倒になったオリヴィアはエマの事を気にせずに湯船から上がった。
「え? オリヴィアちゃんもうあがっちゃうの?」
「いや、流石に湯船だけじゃなくてシャワーで身体流したいなと思って」
エマの問いにオリヴィアはそう答えながらシャワールームの方へと移動する。
因みにシャワールームは一応扉で仕切られてはいるのだがその扉はガラス張りの為中が丸見えである。
「え? シ、シャワーを浴びるって事は、つ、つまり、オリヴィアちゃんはそのバスタオルを、ぬ、ぬ、脱ぐって事?」
「そりゃあバスタオル越しに身体は洗えないからね。
本当は人がいる時はシャワー使いたくないけど、流石に暑いし」
何せ今は初夏とはいえ気温も高い中湯船に入った為、オリヴィアは恥を忍んででもシャワーを浴びたかったのだ。
「そ、そんな!?
私まだ心の準備が!
ま、まだ全然そんな段階じゃないわ!」
一方エマは顔を真っ赤にしてオリヴィアに抗議する。
「そんな段階じゃないってどんな段階よ?」
「オ、オリヴィアちゃん!
今私に裸を見せるという事は、私に身体を許すという事になるのよ!?」
「ならんわ。
後あんたもう顔真っ赤だからさっさと上がったら?」
オリヴィアにそう言われてエマは思考を巡らせた。
……湯船から上がれと言う事は、すなわちオリヴィアちゃんのいるシャワールームとの距離が(物理的に)近くなるという事。
つまり、オリヴィアちゃんは遠回しに私を誘っている……?
という事は、私が湯船を出たら、オリヴィアちゃんはタオルを脱いで、そして……。
き、禁断の関係に……!
いや、でも違うわ!
きっと優しいオリヴィアちゃんの事だから、私のトレーニングの為にわざとそうしているのね!
ここで私がちゃんと、私にはクリスちゃんがいるからって断れっていう事なんだわ!
分かったわオリヴィアちゃん!
私、今度こそ、夢と違ってオリヴィアちゃんの誘いに負けずに断ってみせる!
エマはのぼせていたせいで思考回路がややいつも以上におかしくなっていた。
それからエマは急いで湯船から上がりオリヴィアの居るであろうシャワールームの方を向いて叫びだす。
「上がったわ!
オリヴィアちゃん!
オリヴィアちゃんの気持ちは嬉しいけど私にはクリスちゃんがいるからオリヴィアちゃんとそんな関係にはなれないわ!」
しかし、エマが向いているシャワールームにオリヴィアの姿はなかった。
「……って、あれ?」
エマが不思議に思うと、脱衣所からもう既に普段のドレスに着替えているオリヴィアが顔を覗かせた。
「あんた風呂場で何騒いでるのよ?
上がったんならさっさと着替えたら?」
「え? あれ?
オリヴィアちゃん、シャワーは?
浴びるんじゃなかったの?」
訳が分からずエマがそう問い掛けると、オリヴィアも訳が分からないといった表情で答える。
「は? あんたが湯船に入っている間にとっくにシャワー浴びたわよ。
何か妙に静かだったから、てっきりトレーニングの成果がもう出たのかと思ってたけど、違うの?」
逆にオリヴィアにそう問われて、エマは一瞬頭が真っ白になった後、やっと現状を理解した。
つまり、私が考え事をしている間にオリヴィアちゃんはシャワーを浴びて先に出て行ったという事か。
「は、はは。
そ、そうね。うん。ありがとう。
良いトレーニングになったわ」
エマはこのお陰で一気に冷静さを取り戻し、無事当初の予定通りオリヴィアとのお風呂で倒れずに生還するという目標をクリア出来たのだった。
「じゃあ、これでもう私オリヴィアちゃんと今後お風呂に入れるわね♪」
ニコニコと満足そうな笑顔で話すエマに対して、オリヴィアは面倒そうに答える。
「私は1人で入りたいんだけど?」
「ええー、たまには良いでしょ?」
こうして2人は無事に朝風呂を済ませる事が出来たのであった。
後日談。
「それでねー、この前オリヴィアちゃんと一緒にお風呂に入ってね!
オリヴィアちゃんが暑がりだって事が判明したの!」
オリヴィアとお風呂に入った数日後、エマはクリスに家に招待されてクリスの部屋でオリヴィアと一緒にお風呂に入った事を話していた。
「そっか。
ねえエマちゃん」
「ん? なあにクリスちゃん?」
エマが問い掛けると、ふいにクリスはエマに近付きキスをした。
「……!」
エマは驚きのあまりに目を丸くする。
それからエマの顔は一瞬にして真っ赤になった。
「エマちゃん、オリヴィアさんの事好きなんでしょ?」
キスをした後、クリスは単刀直入にエマにそう問い掛けた。
「え!?
あ、あの、まあ好きかと訊かれたら好き、だけど……」
突然の質問にエマはしどろもどろに答える。
「私よりオリヴィアさんの方が好き?
エマちゃんは、私が男だから付き合ってくれただけ?」
「そ、そんな事ない!
私が1番好きなのはクリスちゃんだから!」
少し不貞腐れながらクリスがそう問い掛けると、エマは大きな声で即答した。
「本当に?」
「本当よ! オリヴィアちゃんも好きだけど、でもクリスちゃんの方がもっと好きだから!」
エマがそう言うと、クリスは意地悪な笑みを浮かべて人差し指を自分の唇に当てる。
「じゃあ、今度はエマちゃんからキスして?」
「え!?」
クリスにそう言われてエマは顔をまた真っ赤にしてドキドキと早る鼓動を押さえつけながらクリスにゆっくりと顔を近付ける。
そして、目を閉じてそのままクリスにキスをした。
「……よく出来ました♪」
それからクリスはエマの事をギュッと抱きしめて耳元でそう囁いた。
「ク、クリスちゃんって本当に私より歳下よね?」
「そうだけど?」
「……何だかズルいわ」
エマはクリスに抱きしめられながらそう小さく呟く。
……私からしてみたら、エマちゃんの方がもっとずっとズルいけどね。
エマちゃんの言動一つで私が不安になったり、嫉妬したりしてるって事気付いてないのか、それともわざとなのか。
まあ、こんなに可愛いエマちゃんの事、オリヴィアさんだろうと他の男だろうと誰一人として渡しはしないけどね。
クリスはそう考えながらエマを抱きしめる手に少し力がこもった。
その見た目によらぬ力強さに、エマはクリスがやはり男の子なのだなと意識してはまたドキドキし始める。
「……ねぇエマちゃん、キス以上もしたい?」
「え?」
クリスにそう問われてエマの心臓がドキンと跳ねた。
「ク、クリスちゃん!?
わ、私達まだ子供だし、そういうのはもっとこう段階があるというか!」
エマが焦りながらそう言うと、クリスはエマをゆっくりとベッドに押し倒す。
「あ、あの、クリスちゃん……?」
エマはドキドキしつつも、クリスの顔が自分の顔に近付いてきたのでギュッと目を瞑った。
そして、クリスはエマのおでこにキスを落とす。
「……なーんてね。
びっくりした?」
それからクリスはニッコリと可愛らしい笑顔でエマにそう言った。
エマはそこでやっと自分がからかわれていた事に気がつき顔を真っ赤にしてクリスを睨む。
「~~っ!
もうっ! クリスちゃんってば本当にびっくりしたんだから!」
ぷんぷんと怒ってるエマに対してクリスは悪びれもせずに笑っていた。
「エマちゃんはやっぱり可愛いね」
「もう、からかわないでよ!
私の方が歳上なのに!」
「ふふ、ごめんね?」
それからクリスはエマを宥めつつもいつもの様にお喋りしながらエマと過ごしたのだった。
その後、エマが帰った後クリスは1人ベッドに潜ってはクッションを抱きしめて顔を埋めた。
「あ~~っ!
もうっ! エマちゃんってば何で抵抗しないの!?
私だって理性保つの必死なのに~!」
そう叫ぶクリスの顔は真っ赤になり瞳は少し濡れていた。
「本当にズルいなぁ……」
クリスは1人の部屋でそう小さく呟いたのだった。
エマ「殴って!」
オリヴィア「嫌だ」
エマ「一緒にお風呂に入ろう!」
オリヴィア「は?」
……以上!
「……いや、あらすじちゃんと仕事しろ!」
「オリヴィアちゃん、どうしたの?」
何やら急にツッコミを入れるオリヴィアに対して、エマは不思議そうに問い掛ける。
「いや、こっちの話。
そんな事より……。
一緒にお風呂に入るってどういう事よ?」
オリヴィアはエマの言葉の真意が分からずに訊き返した。
「言葉通りの意味よ!
私とオリヴィアちゃんの2人でお風呂に入るの!」
「いや、そうじゃなくて、何で一緒にお風呂に入らなきゃいけないのよ?」
「それはね、私のトレーニングの為よ!」
「トレーニング?」
エマの答えを聞いてオリヴィアはますます訳が分からずに首を傾げる。
「今のままだと私はずっとオリヴィアちゃんを意識してしまう……。
それなら、オリヴィアちゃんを意識しない様に、常に平常心を保つ為にトレーニングをしようと思ったの!
今まで私はオリヴィアちゃんとお風呂に入る度にノックアウトさせられたけど、今度こそ倒れずに生還してみせるわ!」
「普通お風呂でノックアウトなんてしないんだけれどね」
エマの意気込みを他所にオリヴィアは冷静にツッコんだ。
「じゃあそうと決まればオリヴィアちゃんにも付き合って貰うわ!
早速お風呂へゴー!」
「なんで私がそれに付き合う前提なのよ? しかもこんな朝からお風呂って……って! ちょっ、放しっ……あぁぁ!」
オリヴィアが否定するのも束の間、エマはオリヴィアの腕をがっしりと掴むとそのままズルズルとオリヴィアを引き連れて大浴場へと向かった。
「……何でこんな目に」
「まあまあ!
朝からお風呂も気持ち良いじゃない!」
それから、2人は早速着替えてお風呂に浸かっていた。
オリヴィアはそう嘆きつつも、しかし蒸し暑い夏の夜、寝汗もかいていたのは事実なので確かにエマの言う通り気持ち良いではあるなと考えていた。
「はぁ、しかしこんなんでトレーニングになんてなるの?」
果たしてこれに意味はあるのかとオリヴィアが確認しようとエマの所を振り向くと、案の定エマの顔が真っ赤になっていた。
「も、勿論トレーニングになっているわ!
今何とか平常心を保とうとしているもの……」
「……そっか」
最早ツッコむのも面倒になったオリヴィアはエマの事を気にせずに湯船から上がった。
「え? オリヴィアちゃんもうあがっちゃうの?」
「いや、流石に湯船だけじゃなくてシャワーで身体流したいなと思って」
エマの問いにオリヴィアはそう答えながらシャワールームの方へと移動する。
因みにシャワールームは一応扉で仕切られてはいるのだがその扉はガラス張りの為中が丸見えである。
「え? シ、シャワーを浴びるって事は、つ、つまり、オリヴィアちゃんはそのバスタオルを、ぬ、ぬ、脱ぐって事?」
「そりゃあバスタオル越しに身体は洗えないからね。
本当は人がいる時はシャワー使いたくないけど、流石に暑いし」
何せ今は初夏とはいえ気温も高い中湯船に入った為、オリヴィアは恥を忍んででもシャワーを浴びたかったのだ。
「そ、そんな!?
私まだ心の準備が!
ま、まだ全然そんな段階じゃないわ!」
一方エマは顔を真っ赤にしてオリヴィアに抗議する。
「そんな段階じゃないってどんな段階よ?」
「オ、オリヴィアちゃん!
今私に裸を見せるという事は、私に身体を許すという事になるのよ!?」
「ならんわ。
後あんたもう顔真っ赤だからさっさと上がったら?」
オリヴィアにそう言われてエマは思考を巡らせた。
……湯船から上がれと言う事は、すなわちオリヴィアちゃんのいるシャワールームとの距離が(物理的に)近くなるという事。
つまり、オリヴィアちゃんは遠回しに私を誘っている……?
という事は、私が湯船を出たら、オリヴィアちゃんはタオルを脱いで、そして……。
き、禁断の関係に……!
いや、でも違うわ!
きっと優しいオリヴィアちゃんの事だから、私のトレーニングの為にわざとそうしているのね!
ここで私がちゃんと、私にはクリスちゃんがいるからって断れっていう事なんだわ!
分かったわオリヴィアちゃん!
私、今度こそ、夢と違ってオリヴィアちゃんの誘いに負けずに断ってみせる!
エマはのぼせていたせいで思考回路がややいつも以上におかしくなっていた。
それからエマは急いで湯船から上がりオリヴィアの居るであろうシャワールームの方を向いて叫びだす。
「上がったわ!
オリヴィアちゃん!
オリヴィアちゃんの気持ちは嬉しいけど私にはクリスちゃんがいるからオリヴィアちゃんとそんな関係にはなれないわ!」
しかし、エマが向いているシャワールームにオリヴィアの姿はなかった。
「……って、あれ?」
エマが不思議に思うと、脱衣所からもう既に普段のドレスに着替えているオリヴィアが顔を覗かせた。
「あんた風呂場で何騒いでるのよ?
上がったんならさっさと着替えたら?」
「え? あれ?
オリヴィアちゃん、シャワーは?
浴びるんじゃなかったの?」
訳が分からずエマがそう問い掛けると、オリヴィアも訳が分からないといった表情で答える。
「は? あんたが湯船に入っている間にとっくにシャワー浴びたわよ。
何か妙に静かだったから、てっきりトレーニングの成果がもう出たのかと思ってたけど、違うの?」
逆にオリヴィアにそう問われて、エマは一瞬頭が真っ白になった後、やっと現状を理解した。
つまり、私が考え事をしている間にオリヴィアちゃんはシャワーを浴びて先に出て行ったという事か。
「は、はは。
そ、そうね。うん。ありがとう。
良いトレーニングになったわ」
エマはこのお陰で一気に冷静さを取り戻し、無事当初の予定通りオリヴィアとのお風呂で倒れずに生還するという目標をクリア出来たのだった。
「じゃあ、これでもう私オリヴィアちゃんと今後お風呂に入れるわね♪」
ニコニコと満足そうな笑顔で話すエマに対して、オリヴィアは面倒そうに答える。
「私は1人で入りたいんだけど?」
「ええー、たまには良いでしょ?」
こうして2人は無事に朝風呂を済ませる事が出来たのであった。
後日談。
「それでねー、この前オリヴィアちゃんと一緒にお風呂に入ってね!
オリヴィアちゃんが暑がりだって事が判明したの!」
オリヴィアとお風呂に入った数日後、エマはクリスに家に招待されてクリスの部屋でオリヴィアと一緒にお風呂に入った事を話していた。
「そっか。
ねえエマちゃん」
「ん? なあにクリスちゃん?」
エマが問い掛けると、ふいにクリスはエマに近付きキスをした。
「……!」
エマは驚きのあまりに目を丸くする。
それからエマの顔は一瞬にして真っ赤になった。
「エマちゃん、オリヴィアさんの事好きなんでしょ?」
キスをした後、クリスは単刀直入にエマにそう問い掛けた。
「え!?
あ、あの、まあ好きかと訊かれたら好き、だけど……」
突然の質問にエマはしどろもどろに答える。
「私よりオリヴィアさんの方が好き?
エマちゃんは、私が男だから付き合ってくれただけ?」
「そ、そんな事ない!
私が1番好きなのはクリスちゃんだから!」
少し不貞腐れながらクリスがそう問い掛けると、エマは大きな声で即答した。
「本当に?」
「本当よ! オリヴィアちゃんも好きだけど、でもクリスちゃんの方がもっと好きだから!」
エマがそう言うと、クリスは意地悪な笑みを浮かべて人差し指を自分の唇に当てる。
「じゃあ、今度はエマちゃんからキスして?」
「え!?」
クリスにそう言われてエマは顔をまた真っ赤にしてドキドキと早る鼓動を押さえつけながらクリスにゆっくりと顔を近付ける。
そして、目を閉じてそのままクリスにキスをした。
「……よく出来ました♪」
それからクリスはエマの事をギュッと抱きしめて耳元でそう囁いた。
「ク、クリスちゃんって本当に私より歳下よね?」
「そうだけど?」
「……何だかズルいわ」
エマはクリスに抱きしめられながらそう小さく呟く。
……私からしてみたら、エマちゃんの方がもっとずっとズルいけどね。
エマちゃんの言動一つで私が不安になったり、嫉妬したりしてるって事気付いてないのか、それともわざとなのか。
まあ、こんなに可愛いエマちゃんの事、オリヴィアさんだろうと他の男だろうと誰一人として渡しはしないけどね。
クリスはそう考えながらエマを抱きしめる手に少し力がこもった。
その見た目によらぬ力強さに、エマはクリスがやはり男の子なのだなと意識してはまたドキドキし始める。
「……ねぇエマちゃん、キス以上もしたい?」
「え?」
クリスにそう問われてエマの心臓がドキンと跳ねた。
「ク、クリスちゃん!?
わ、私達まだ子供だし、そういうのはもっとこう段階があるというか!」
エマが焦りながらそう言うと、クリスはエマをゆっくりとベッドに押し倒す。
「あ、あの、クリスちゃん……?」
エマはドキドキしつつも、クリスの顔が自分の顔に近付いてきたのでギュッと目を瞑った。
そして、クリスはエマのおでこにキスを落とす。
「……なーんてね。
びっくりした?」
それからクリスはニッコリと可愛らしい笑顔でエマにそう言った。
エマはそこでやっと自分がからかわれていた事に気がつき顔を真っ赤にしてクリスを睨む。
「~~っ!
もうっ! クリスちゃんってば本当にびっくりしたんだから!」
ぷんぷんと怒ってるエマに対してクリスは悪びれもせずに笑っていた。
「エマちゃんはやっぱり可愛いね」
「もう、からかわないでよ!
私の方が歳上なのに!」
「ふふ、ごめんね?」
それからクリスはエマを宥めつつもいつもの様にお喋りしながらエマと過ごしたのだった。
その後、エマが帰った後クリスは1人ベッドに潜ってはクッションを抱きしめて顔を埋めた。
「あ~~っ!
もうっ! エマちゃんってば何で抵抗しないの!?
私だって理性保つの必死なのに~!」
そう叫ぶクリスの顔は真っ赤になり瞳は少し濡れていた。
「本当にズルいなぁ……」
クリスは1人の部屋でそう小さく呟いたのだった。
0
お気に入りに追加
529
あなたにおすすめの小説
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる