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何でも屋さん
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「なあ、あんたに金積めば何でもやってくれるって本当か?」
とある狭い路地の先のボロボロなアパートの入り口に、そこになんとも似つかわない小綺麗な格好をした男性が1人、そのアパートの住人に尋ねていた。
「は? ああ、まあ金額と内容次第では何でもやるけど?」
アパートから出てきた少年ーーもといブラッドは面倒そうに頭を掻きながらそう答える。
「あんたに頼みたい事がある」
そう言って小綺麗な格好の男は札束をブラッドに渡した。
ブラッドはその札束をパラパラと数えては赤い瞳で相手を見やる。
「そんで? 用件は?」
「あんたに懲らしめて欲しい奴がいるんだ。
最悪殺しても構わない」
それから小綺麗な格好の男はブラッドにその相手を伝えた。
「それじゃあよろしく頼む」
「……はいはい」
そして小綺麗な格好の男は去って行った。
「はぁ、久々に面白そうな依頼かと思ったら、面倒な事になったな……」
とは言え、金は欲しいし。
ブラッドは手に持った札束を睨みながら考える。
「さて、どうしたもんか……」
ブラッドはフードを被って札束をポケットに乱暴にしまってはそのまま外へと出掛けていった。
「はぁ~あっつい……」
一方、ハワード家にて。
もうすぐ7月になろうと言うタイミングで、オリヴィアは自室で暑さにバテていた。
「はぁ、早く夏が終わって欲しいわ……。
いやまだこれからなのよね……」
実はオリヴィアは寒さより暑さに弱いのだ。
というのも、下町時代のオリヴィアは海の近くに住んでいた事もあってか海風が吹いては家の隙間から風がガンガン入ってくる家で育った為冬の寒さには人一倍強いのだが、逆に夏はその隙間風のお陰で涼しい環境で過ごしていたのだ。
しかしお屋敷は木造の家の様に隙間風など入る筈もなく、更にはドレスも何枚か重ね着の為暑さが尋常ではなかった。
「あ~っつい!!
もう我慢出来ない!!」
どうせ今日は講師の人も来ないし1日用事もない。
なら部屋に居る間だけでも涼しい格好でいても大丈夫な筈!
そう思い立ったオリヴィアはドレスを脱ぎ捨てて昔着ていたシャツに短パンという下町の頃の服を着だした。
それから長い髪を高めのポニーテールで結ぶ。
「ふぅ、これで少しはマシになったわね」
着替えた事によりすっきりしたオリヴィアは椅子に腰掛けて思いっきり伸びをした。
久しぶりに楽な格好をすると実に快適だと実感する。
「見た目よりやっぱり機能性よね。
何で貴族はみんなあんなあっついドレス着てるんだか」
すると、タイミング悪くコンコンと扉がノックされた。
何処の誰だか分からないけど、今折角着替えたばっかりなのにもう一度ドレスに着替えて対応するのは面倒だ。
かと言ってこの格好で出たらきっと驚かれるだろうし……。
よし、こうなったら居留守を使おう。
もしバレても昼寝してたとか適当に言えばいいだろうし。
そう考えたオリヴィアはノックを無視した。
しかし、それでも再度扉がノックされる。
それも無視するが、またノックされた。
中々にしつこいな……。
しかし、一体誰なのか相手が名乗らない事をオリヴィアは不思議に思った。
普通なら「オリヴィアお嬢様、居ませんか?」とか「○○ですけど、~~の用で来ました」とかみんな声をかけてくる筈なのに。
エマやルーカスならうるさいくらい私の事を呼ぶだろうし、ノアだって最初に名乗るよな……?
他のメイドでも名乗ったり呼んだりするだろうし、誰なんだろうか……?
私がそう考えていると、扉の方からノックの音がしなくなった。
やっと諦めて戻ったのか。
とオリヴィアが思うのも束の間、扉からバキッと鈍い音がした。
「……え?」
「何だよ、やっぱり居るじゃねーか。
ん? つーか何でそんな格好してんだ?」
「せ、先生っ!?」
壊れた扉の奥から、この前会ったばかりのブラッドが部屋に入ってきたのだ。
「ようオリヴィア、この間振りだな!」
先生はニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべてそう挨拶してくる。
「いや、何でここに!?
というか扉壊れたんだけど!?」
「お前が居るのにすぐに出ないから悪いだろー?」
ブラッドは呑気にそんな事を言ってきた。
「オリヴィアちゃん!
何か凄い音がしたんだけど!?」
「オリヴィア姉様!
何かありましたか!?」
「オリヴィア様!
大丈夫か!?」
すると、扉の破壊音を聞いて3兄弟がすかさず駆けつけてきた。
3人は私の部屋にいるブラッドを見ては目を丸くする。
「ちょっと! あなた誰よ!?」
「オリヴィア姉様から離れて下さい!」
エマとノアはブラッドを睨みながら臨戦態勢に入る。
「ブラッドさん!?」
一方ルーカスはブラッドを見て困惑していた。
「え、ルーカス兄様知っているの!?」
「ルーカス兄さん、こいつは一体なんなんですか!?」
ルーカスがブラッドを知っているという事に対してエマとノアは一斉にルーカスに問い掛ける。
「あ、ああ、ブラッドさんは、オリヴィア様の喧嘩のお師匠様だ」
「喧嘩の」「お師匠様?」
エマとノアはルーカスの答えに困惑する。
「まあ正確に言えば"元"師匠な」
それに対してブラッドは追加でそう答えた。
「それで、先生は何で扉を壊してまでここに?」
オリヴィアも困惑しながらそう問い掛ける。
「悪いな。今回は仕事で来たんだ。
俺今何でも屋みたいなのやってんだけどさ」
「何でも屋?」
オリヴィアが問い返すと、ブラッドは自慢気に答えた。
「そ。小さな喧嘩から大きな掃除まで、手荒な事専門の何でも屋やってんだ」
「大きな掃除って……」
聞かなくても大体察するが、まあそういう事なのだろう。
オリヴィアは何かを想像してはそこに触れるのをやめる事にした。
「それで、その仕事が何か?」
「オリヴィア、その前にお前、人に恨まれた覚えはないか?」
オリヴィアはブラッドに尋ねるも、逆に質問され返した。
「そんな! オリヴィアちゃんが恨まれるだなんてありっこないわ!」
横から会話を聞いて反論するエマを他所に、私は嫌な予感が頭をよぎる。
「あー……下町にいた頃なら心当たりがあると言えばあるわね」
何せ下町時代は評判なんて良くなかったし、ダルシー辺りにはさぞ恨まれている事だろう。
「やっぱりなー。
実は依頼でお前を懲らしめて欲しい、最悪殺しても良いって言われてな」
「え!?」
人に恨まれてはいると思ったが、命を狙われる程だったとは。
流石の事態にオリヴィアと他の3人も目を見開く。
「オリヴィアちゃんを殺す気なの!?」
「喧嘩のお師匠様という事は、オリヴィア姉様と交流があったのでしょう?
顔見知りなのに引き受けたんですか?」
エマとノアにそう問われてブラッドは頭を掻きながら面倒そうに答える。
「そりゃあ仕事に私情は持ち込んじゃ駄目だからな。普通は」
「そんな!? ブラッドさんは本当にそれで良いんですか!?」
ルーカスは咄嗟にオリヴィアの前に出てレイアンから貰った剣を握りブラッドを睨みながらそう質問した。
それに対してブラッドはやれやれと呆れた様に口を開く。
「まあ待てよルーカス、俺はオリヴィアに用があるんだ」
「駄目です。オリヴィア様には近寄らせません」
ルーカスにそう言い切られてブラッドははぁ、とわざとらしく溜め息を吐く。
「あのさ……」
すると、壊れた扉からブラッド目掛けて誰かが蹴りをかましてきた。
ブラッドは咄嗟にそれを両腕で制御するが、それでも相手に押されて壁側まで追い詰められた。
「え!? ソ、ソフィア!?」
オリヴィアはブラッドに蹴りを入れた人物ーーソフィアを見ては目を丸くする。
それは他の3兄弟も同じだった。
「お屋敷の門番が音もなくやられてるからまさかとは思ったけど、やっぱり兄さんじゃねーか!」
ソフィアはブラッドをきつく睨みつけながら荒げた口調でそう言った。
「げっ、やっぱりお前ここで働いてたのかよ?」
一方ブラッドは苦々しくソフィアに問い掛ける。
「え? に、兄さん……?」
そんなソフィアの言葉にオリヴィア一同は驚きを隠せなかった。
とある狭い路地の先のボロボロなアパートの入り口に、そこになんとも似つかわない小綺麗な格好をした男性が1人、そのアパートの住人に尋ねていた。
「は? ああ、まあ金額と内容次第では何でもやるけど?」
アパートから出てきた少年ーーもといブラッドは面倒そうに頭を掻きながらそう答える。
「あんたに頼みたい事がある」
そう言って小綺麗な格好の男は札束をブラッドに渡した。
ブラッドはその札束をパラパラと数えては赤い瞳で相手を見やる。
「そんで? 用件は?」
「あんたに懲らしめて欲しい奴がいるんだ。
最悪殺しても構わない」
それから小綺麗な格好の男はブラッドにその相手を伝えた。
「それじゃあよろしく頼む」
「……はいはい」
そして小綺麗な格好の男は去って行った。
「はぁ、久々に面白そうな依頼かと思ったら、面倒な事になったな……」
とは言え、金は欲しいし。
ブラッドは手に持った札束を睨みながら考える。
「さて、どうしたもんか……」
ブラッドはフードを被って札束をポケットに乱暴にしまってはそのまま外へと出掛けていった。
「はぁ~あっつい……」
一方、ハワード家にて。
もうすぐ7月になろうと言うタイミングで、オリヴィアは自室で暑さにバテていた。
「はぁ、早く夏が終わって欲しいわ……。
いやまだこれからなのよね……」
実はオリヴィアは寒さより暑さに弱いのだ。
というのも、下町時代のオリヴィアは海の近くに住んでいた事もあってか海風が吹いては家の隙間から風がガンガン入ってくる家で育った為冬の寒さには人一倍強いのだが、逆に夏はその隙間風のお陰で涼しい環境で過ごしていたのだ。
しかしお屋敷は木造の家の様に隙間風など入る筈もなく、更にはドレスも何枚か重ね着の為暑さが尋常ではなかった。
「あ~っつい!!
もう我慢出来ない!!」
どうせ今日は講師の人も来ないし1日用事もない。
なら部屋に居る間だけでも涼しい格好でいても大丈夫な筈!
そう思い立ったオリヴィアはドレスを脱ぎ捨てて昔着ていたシャツに短パンという下町の頃の服を着だした。
それから長い髪を高めのポニーテールで結ぶ。
「ふぅ、これで少しはマシになったわね」
着替えた事によりすっきりしたオリヴィアは椅子に腰掛けて思いっきり伸びをした。
久しぶりに楽な格好をすると実に快適だと実感する。
「見た目よりやっぱり機能性よね。
何で貴族はみんなあんなあっついドレス着てるんだか」
すると、タイミング悪くコンコンと扉がノックされた。
何処の誰だか分からないけど、今折角着替えたばっかりなのにもう一度ドレスに着替えて対応するのは面倒だ。
かと言ってこの格好で出たらきっと驚かれるだろうし……。
よし、こうなったら居留守を使おう。
もしバレても昼寝してたとか適当に言えばいいだろうし。
そう考えたオリヴィアはノックを無視した。
しかし、それでも再度扉がノックされる。
それも無視するが、またノックされた。
中々にしつこいな……。
しかし、一体誰なのか相手が名乗らない事をオリヴィアは不思議に思った。
普通なら「オリヴィアお嬢様、居ませんか?」とか「○○ですけど、~~の用で来ました」とかみんな声をかけてくる筈なのに。
エマやルーカスならうるさいくらい私の事を呼ぶだろうし、ノアだって最初に名乗るよな……?
他のメイドでも名乗ったり呼んだりするだろうし、誰なんだろうか……?
私がそう考えていると、扉の方からノックの音がしなくなった。
やっと諦めて戻ったのか。
とオリヴィアが思うのも束の間、扉からバキッと鈍い音がした。
「……え?」
「何だよ、やっぱり居るじゃねーか。
ん? つーか何でそんな格好してんだ?」
「せ、先生っ!?」
壊れた扉の奥から、この前会ったばかりのブラッドが部屋に入ってきたのだ。
「ようオリヴィア、この間振りだな!」
先生はニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべてそう挨拶してくる。
「いや、何でここに!?
というか扉壊れたんだけど!?」
「お前が居るのにすぐに出ないから悪いだろー?」
ブラッドは呑気にそんな事を言ってきた。
「オリヴィアちゃん!
何か凄い音がしたんだけど!?」
「オリヴィア姉様!
何かありましたか!?」
「オリヴィア様!
大丈夫か!?」
すると、扉の破壊音を聞いて3兄弟がすかさず駆けつけてきた。
3人は私の部屋にいるブラッドを見ては目を丸くする。
「ちょっと! あなた誰よ!?」
「オリヴィア姉様から離れて下さい!」
エマとノアはブラッドを睨みながら臨戦態勢に入る。
「ブラッドさん!?」
一方ルーカスはブラッドを見て困惑していた。
「え、ルーカス兄様知っているの!?」
「ルーカス兄さん、こいつは一体なんなんですか!?」
ルーカスがブラッドを知っているという事に対してエマとノアは一斉にルーカスに問い掛ける。
「あ、ああ、ブラッドさんは、オリヴィア様の喧嘩のお師匠様だ」
「喧嘩の」「お師匠様?」
エマとノアはルーカスの答えに困惑する。
「まあ正確に言えば"元"師匠な」
それに対してブラッドは追加でそう答えた。
「それで、先生は何で扉を壊してまでここに?」
オリヴィアも困惑しながらそう問い掛ける。
「悪いな。今回は仕事で来たんだ。
俺今何でも屋みたいなのやってんだけどさ」
「何でも屋?」
オリヴィアが問い返すと、ブラッドは自慢気に答えた。
「そ。小さな喧嘩から大きな掃除まで、手荒な事専門の何でも屋やってんだ」
「大きな掃除って……」
聞かなくても大体察するが、まあそういう事なのだろう。
オリヴィアは何かを想像してはそこに触れるのをやめる事にした。
「それで、その仕事が何か?」
「オリヴィア、その前にお前、人に恨まれた覚えはないか?」
オリヴィアはブラッドに尋ねるも、逆に質問され返した。
「そんな! オリヴィアちゃんが恨まれるだなんてありっこないわ!」
横から会話を聞いて反論するエマを他所に、私は嫌な予感が頭をよぎる。
「あー……下町にいた頃なら心当たりがあると言えばあるわね」
何せ下町時代は評判なんて良くなかったし、ダルシー辺りにはさぞ恨まれている事だろう。
「やっぱりなー。
実は依頼でお前を懲らしめて欲しい、最悪殺しても良いって言われてな」
「え!?」
人に恨まれてはいると思ったが、命を狙われる程だったとは。
流石の事態にオリヴィアと他の3人も目を見開く。
「オリヴィアちゃんを殺す気なの!?」
「喧嘩のお師匠様という事は、オリヴィア姉様と交流があったのでしょう?
顔見知りなのに引き受けたんですか?」
エマとノアにそう問われてブラッドは頭を掻きながら面倒そうに答える。
「そりゃあ仕事に私情は持ち込んじゃ駄目だからな。普通は」
「そんな!? ブラッドさんは本当にそれで良いんですか!?」
ルーカスは咄嗟にオリヴィアの前に出てレイアンから貰った剣を握りブラッドを睨みながらそう質問した。
それに対してブラッドはやれやれと呆れた様に口を開く。
「まあ待てよルーカス、俺はオリヴィアに用があるんだ」
「駄目です。オリヴィア様には近寄らせません」
ルーカスにそう言い切られてブラッドははぁ、とわざとらしく溜め息を吐く。
「あのさ……」
すると、壊れた扉からブラッド目掛けて誰かが蹴りをかましてきた。
ブラッドは咄嗟にそれを両腕で制御するが、それでも相手に押されて壁側まで追い詰められた。
「え!? ソ、ソフィア!?」
オリヴィアはブラッドに蹴りを入れた人物ーーソフィアを見ては目を丸くする。
それは他の3兄弟も同じだった。
「お屋敷の門番が音もなくやられてるからまさかとは思ったけど、やっぱり兄さんじゃねーか!」
ソフィアはブラッドをきつく睨みつけながら荒げた口調でそう言った。
「げっ、やっぱりお前ここで働いてたのかよ?」
一方ブラッドは苦々しくソフィアに問い掛ける。
「え? に、兄さん……?」
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