【完結】悪役令嬢だけど何故か義理の兄弟達から溺愛されてます!?

本田ゆき

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僕の本心

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「あ、どうせならオリヴィア姉様のおすすめの本ってありますか?」

 本を2人で運んでいる途中、ノアはそんな事を質問してきた。

「え? 私のおすすめ?
そうねぇ……歴史物や伝記物は読んでて面白いなと思うけど。
その頃の人達の考えとか時代が違っても割と共感できたりすると思わず感心するわね」
「あー、それはちょっと読むのが難しそうなので他でお願いします」

 私が勧めたものをノアは普通にばっさりと却下してきた。

「人が折角すすめてあげたのに……」
「ごめんなさい。何か楽しみ方がマニアック過ぎたので。
もっとライトなのないですか?」

 ノアに再度そう問われて私は少し考えてみる。

「もっとライトなのって言われても……あ、それこそシャーロック・ホームズ読んだら?
あんたから、というかルイスさんから貰った本中々面白かったわよ。
ただ……」

「ただ?」

「あれ、続きからだったのよね。
前編がなかった」
「あー、それ絶対ルイスの嫌がらせですね」

 それからノアは少し不貞腐れ気味に話してきた。

「オリヴィア姉様、ルイスはそんな風に地味な嫌がらせしてくる嫌な奴なので、今後関わるのは気をつけた方がいいですよ?
この前のデートとやらは随分と楽しそうだったらしいですけど」

「まあ楽しかったかと訊かれたら楽しかったけど。
というか猫のいるお店に連れてってもらえたし」

「成る程、猫で釣られたという訳ですね」

 私の言葉を聞いた後、ノアは小さく何か呟いたのだが、私にはそれが聞き取れなかった。

「ん? 今何か言った?」

「いいえ何も。
ところで僕も猫が好きなのでその店に是非ともオリヴィア姉様と2人で行きたいですね」

「あんたの場合は猫が好きと言うより私と行きたいだけでしょ?」

 私がそう尋ねるとノアはニコニコと笑顔で答える。

「まあそれが1番の理由ではありますけど。
でも猫が好きなのも本当ですよ?」
「ふーん……」

 何だかノアが猫好きというのは少し意外な気もするけど、そもそもあの下町の女の子も猫を連れてここにやって来てた訳で少なくとも猫が嫌いな訳ではないのだろう。

「猫って可愛らしい容姿なのに気まぐれで人に懐いた様で懐いてなかったり、まるでオリヴィア姉様に似てて僕は好きですよ?」
「……そんなに似てるかしら?」

 そう言えば前にもノアに一度野良猫に似てるって言われたっけ?

 でもあれは結局あの下町の少女の事だったんだ。

 しかし今回は純粋に猫に似てるって言われてるのだろう。
 
 まあ別に猫に似てると言われてもそこまで嬉しくは……いや、まあ嬉しいは嬉しいけど。

 まずい、柄にもなく照れて顔が熱くなってる気がする。

 オリヴィアが考えている通り、オリヴィアの顔は赤くなっていた。

 それを見てノアはニヤリと意地悪く笑って問い掛けた。

「オリヴィア姉様って普通に可愛いって言われるより猫に似てるって言われた方が喜ぶんですね?」
「は!?
そんな訳ないでしょ!」

 ノアにそう問われて私は否定しながら歩みを進めた。

「オリヴィア姉様ー、部屋通り過ぎてますよ」

 ただ、無性に歩いたせいで部屋に着いていたのに気付かず通り過ぎてしまった。

「~~っ!
今更だけど、この屋敷広すぎるのよ!」
「本当に今更ですね。1年以上も住んでるのに」

 私は恥ずかしさを隠す様になんとか言い訳しようとするが、ノアがそれに対して笑って的確にツッコむ。

 穴があったら入りたい。
 恥ずかしくて私はそんな事を考えていた。

「……まあいいわ、私本を部屋に置いてくるから」

 私は何とか落ち着こうと部屋に入って小さく深呼吸した。

「……ふぅ。
何はともあれ、運ぶの手伝ってくれてありがとね」

 それから私は律儀に廊下で待っているノアから本を受け取り礼を言った。

「いえいえ、オリヴィア姉様のお役に立ててこちらこそ良かったです♪」

 ノアは笑顔でそう返事をした。
 どうやら本当に私の部屋に入ってくるつもりはないらしい。

 まあそこはありがたいのだけれど。

「これで少しは僕の好感度が上がりましたかね?」
「あんた昨日は嫌われたいって言っといて今日は好感度上げたいって言ったりどっちなのよ?」

 私はノアの言動があまりにも分からないのでとうとう普通に質問してしまった。

 しかし、不思議に思えてならないのだ。

 昨日のあの一件で私はてっきりもうノアとは前の様に話したり出来ないと思っていたのだが、まるで何事もない様に話してくるので、こちらの調子が狂ってしまう。

「ああ、それは……まあ言葉の綾と言いますか」
「言葉の綾?」
「まあ細かい事は気にせずに!
それじゃあ僕は図書室に戻りますね~」

 ノアはそう言うと手を振ってそのまま去って行ってしまった。

「あ……!
結局どういう意味なのよ?」

 私は訳が分からず首を傾げた。



 一方ノアは図書室に戻りながら高鳴る鼓動を抑えようと深呼吸した。

「……全く、本当に突然照れるのはやめて欲しいですね。
じゃなかったら危なかったかもですけど」

 ……多分、だったら耐えれなかったかもしれない。

「まあ心配した所でもうは殺しちゃいましたけど」

 そう。自分の感情をコントロール出来ない俺はもう表に出さないと決めたのだ。

 その代わり、自分の感情をコントロール出来る自分が作り出した僕を演じ続ける事にした。

 何せもう10年以上もみんなの前でこの性格でいるのだから、僕を演じる事は息を吸う様に簡単な事だった。

 ただ、オリヴィア姉様の前でも最初の頃の様に僕を演じればいい。

 それだけの事。

「オリヴィア姉様は混乱してるみたいですけど、すぐ慣れてくれるでしょう。
元々最初から僕として会っていた訳ですし」

 だから、これでいいはず。

 だって、好きな人に好かれる為には、例え自分を偽ってでも自分を良く見せたいと思うものでしょう?

 だからが好かれればそれでいい。

「……さて、何の本を読みましょうかね?」

 ノアはそう呟いて1人図書室へと入っていった。
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