220 / 328
初めて見るその顔は
しおりを挟む
「ふぅ、やっと落ち着ける……」
一方、誕生会の主役であるルーカスは、女性達からなんとか逃げ出して庭園の方へとやって来ていた。
ここまでなら誰も追っては来ないだろう。
そう思ったルーカスは庭園へと足を踏み入れる。
「しかし庭園の花はたまにしか見ないが綺麗だな」
それからルーカスが庭園の奥を見やると、そこには見慣れた女性が立っていた。
その女性は花を眺めては優しく微笑んでいる。
「あれ? シーラ様?」
「え!? ル、ルーカス様っ!?」
ルーカスに声をかけられた女性ーーシーラは顔を赤らめて驚いていた。
「あの! えーと、お手洗いに行った後に、たまたま綺麗なお花を見かけて、窓から眺めていたらメイドの方に見て行っても良いと言われたのでそれで!」
「ああ、そうだったんですね」
慌ててそう説明するシーラの言葉を聞いて、ルーカスはすぐに納得した。
普段から礼儀正しいシーラが勝手に庭園に入る様な真似はしない事をルーカスは理解していたのだ。
しかし、シーラは気まずく感じてしまい、取り敢えず話題を変えようと慌てて花の方を見て口を開く。
「えっと、ここの庭園も沢山の花々が咲いていて綺麗ですね」
「そうですね、たまにこうしてゆっくり花を眺めるのも悪くな……うわぁっ!」
すると、ルーカスが話している途中大声をあげた。
「ルーカス様? どうかされましたか?」
「あ、いや、目の前を蝶が……」
シーラは突然のルーカスの大声に驚きながらもルーカスの方を振り向くと、そこには小さなモンシロチョウがヒラヒラと可愛らしく飛んでいた。
「あら、モンシロチョウね。
もしかして……ルーカス様は蝶が苦手なのですか?」
顔を青ざめさせながら胸に手を当てているルーカスを訝しむ様に眺めながらシーラは問い掛ける。
「お恥ずかしい限りだが、俺は虫が全般的に苦手でして……。
うわっ、こっちにも!」
ルーカスはそう答えながら今度は葉っぱについていた青虫を見つけてはそれから逃げる様にシーラの側に急接近してきた。
「ル、ルーカス様!?」
あまりにも急にルーカスが近づいてきた為シーラは顔が真っ赤になる。
「あ、シーラ様、ごめんなさい!」
そしてシーラとの距離が近過ぎる事にやっと気付いたルーカスは急いでシーラから離れた。
「えーと、それじゃあ一旦庭園から出ましょうか?」
「そ、そうします……」
シーラはバクバクいっている心臓を押さえつつルーカスにそう提案した。
そしてそのシーラの提案にルーカスは素直に同意する。
それからルーカスは庭園を出るまでの間何か他に虫が飛んで来ないか少しビクビクしながら歩いていた。
「ふぅ……」
そして庭園から抜け出してやっとルーカスは再び一息をついた。
「すみませんシーラ様、なんともお見苦しい面を見せてしまって」
ルーカスは先程までの自分の不甲斐ない行動をシーラに見られた事が恥ずかしくなって顔を赤らめる。
恥ずかし過ぎて穴があったら入りたいくらいだ……。
流石にシーラ様も引いただろうな……。
そうルーカスが思いつつチラッとシーラの様子を窺うと、シーラは顔を赤らめながら微笑んでいた。
「ふ、ふふっ」
「シ、シーラ様?」
そんなに顔が赤くなる程笑うとは、よっぽど俺の挙動が面白かったのだろうか……。
しかし、あれだけビビっていては馬鹿にされるのも無理はない。
ルーカスはシーラに馬鹿にされて笑われたのだろうと考えて少ししょんぼりする。
そんな落ち込んでいるルーカスを見てシーラは慌てて口を開いた。
「あ、ごめんなさいルーカス様。
その、今まで完璧なところばかり見ていたけれど、虫が苦手だなんて、しかもその反応が、なんというか、可愛らしくて……」
「へ? 可愛らしい?」
ルーカスはてっきり馬鹿にされて笑われたものだとばかり思っていた為、シーラの予想外の言葉に目を丸くして驚いた。
「ええ、とっても可愛らしかったわ!」
「え、そ、そうなのですか?」
「はい!」
ルーカスは不思議に思いつつも、満面の笑みのシーラを見てどうやら馬鹿にされたり軽蔑された訳ではなさそうで良かったと安堵した。
一方シーラは、普段見た事もないルーカスの焦ったり怯えていたりする顔や、恥ずかしさのあまりに赤面したりしょんぼりしている顔を見てオリヴィアが前に言っていたルーカスが犬っぽいという言葉を思い出していた。
確かに、オリヴィア様の言う通りちょっと犬っぽくて可愛らしいですわ……。
「ふふ、私、普段のカッコいいルーカス様も勿論好きですが、そういう駄目な所も好きですわ」
「え? 駄目な所が好き?」
シーラにそう言われてルーカスはキョトンとする。
「ええ! ふふふ、今日は普段と違うルーカス様が見れて良かったですわ。
……あ! 忘れてましたわ!」
「え? どうされましたか?」
相変わらず呆気に取られてキョトンとしているルーカスに、シーラは花の様な可愛らしい笑顔を見せる。
「ルーカス様、17歳の誕生日おめでとうございます!」
「あ……ありがとうございますシーラ様」
シーラからの祝言に、ルーカスもにこりと微笑んでお礼を言った。
「それと、プレゼントは広間の方に置いてきてしまったので、また後で渡しに行きますね」
「そうですか。ありがとうございます。
それなら広間の方へと戻りましょうか」
ルーカスはそう言って歩き出すと、シーラがそんなルーカスの袖をクイっと掴んだ。
「あの、ルーカス様、お疲れではないですか?
休まれる為にここへ来たのでしょう?」
シーラはそう心配する様にルーカスを見ながら尋ねる。
「え? まあ、休む為に来たのは確かですけど、かと言って俺の誕生会にいつまでも俺自身が抜け出す訳にも行かないですし」
一方ルーカスはシーラに心配された事に驚きつつも真面目にそう答えた。
「そうですか……。
少し残念です」
ルーカスの答えにシーラは本当に残念そうに少し顔を俯けつつも無理矢理微笑んでいた。
「え? 残念?」
そんなシーラを見てもルーカスはシーラの本心に気付いていないのか、もう一度シーラに問い掛ける。
「ええ、もう少し2人っきりで居たいなと思ったので」
顔を赤らめながらそう答えるシーラに、ルーカスは申し訳なさそうに微笑んだ。
「まあ俺ももう少し休みたいのは本音ですけどね。
じゃあ行きましょうか」
「ええ」
こうして、ルーカスとシーラは2人で広間へと戻ってきた。
すると、2人の側にすぐ様他の女性達が群がってくる。
「あら? シーラお嬢様?
何故ルーカス様のお隣にいるのかしら?」
女性の内の1人がシーラを睨みながらそう問い掛けてきた。
「たまたま途中でお会いしたので一緒に来ただけですよ?」
シーラはその女性に素っ気なくそう返す。
「ふーん、婚約破棄されたのにまだ意地汚くルーカス様を狙ってるだなんて、ルーカス様も大変ですわね?」
今度は横から別の女性がそう言ってきた。
「ルーカス様はお優しいから、貴女の様な方にもお情けで声をかけて下さっている事が分からないのかしら?」
「ルーカス様、こういう方にははっきりと迷惑だと言った方がいいですわよ?」
それから他の女性も口々にそう言い出した。
それを聞いてルーカスは不機嫌気味に答える。
「ならはっきりと言わせて頂きます。
その様に1人の女性によってたかって攻撃するのは如何なものでしょうか?」
ルーカスに強い口調でそう言われ、女性達は驚きながらたじろいだ。
「あ、ルーカス様違うんです!
攻撃なんてそんな」
「そうですよ、私達はシーラ様の為を思って教えてあげているだけで!」
慌ててルーカスに弁解している女性達に、今度はシーラがにっこりと笑顔でお礼を言った。
「まあ、私の為にわざわざ言ってくださりありがとうございます」
「そ、そうよ!
分かればいいのよ!」
「ええ。
その様な妬み僻みは身を滅ぼすとまさしくその身をもって教えて下さるだなんて、皆さんとても心優しいのですね!
私、感心して溜め息しか出ませんわ」
そう言い返すシーラの顔は笑っているが、その瞳は笑ってなどいなかった。
「っな!
ふ、ふん! いい気になるんじゃないわよ!」
「憶えてらっしゃい!」
そしてシーラに一蹴された女性達は口々に文句を垂れつつも散り散りに去っていった。
「シーラ様、大丈夫でしたか?」
ルーカスが心配そうにシーラの方を見やると、シーラは立ち去っていく女性達の後ろ姿を冷ややかに睨みつけていた。
それからシーラはルーカスに見られている事に気付きパッと笑顔を見せる。
「え? あ、私は大丈夫ですわ!
ああいう事は割とある事なので」
何せシーラはこれまでもルーカスの許嫁だからという理由であまり女性達からよくは思われていなかった為、この様に絡まれる事も少なくなかったのだ。
しかしルーカスは普段そういう場面は見かけなかった(というより気付かなかった)ので単純に驚いていた。
「そうだったんですね。もし次に何かあったら俺に言ってください。
注意しますので!」
ルーカスはシーラの事を心配しながらそう申し出た。
「ありがとうございます。
でも大丈夫ですわ」
しかし、シーラはそのルーカスの申し出をやんわりと断った。
「そうですか?
まあ確かに俺は頼りないかもしれないけれど、シーラ様の力にならいつでもなりますので」
ルーカスにそう言われてシーラはドキッとしながら顔を赤らめる。
「た、頼りないなんて事ないですわ!
それに、心配してくださってありがとうございます!
あ、そうだ、プレゼント持ってきますね!」
「え? あ、はい」
そう言い残してシーラは急いで人混みの方に走っていった。
「……シーラ様のあんな表情初めて見たな」
そして1人取り残されたルーカスは、先程のシーラの冷ややかな目線を思い出しては驚きつつも感心していた。
一方、誕生会の主役であるルーカスは、女性達からなんとか逃げ出して庭園の方へとやって来ていた。
ここまでなら誰も追っては来ないだろう。
そう思ったルーカスは庭園へと足を踏み入れる。
「しかし庭園の花はたまにしか見ないが綺麗だな」
それからルーカスが庭園の奥を見やると、そこには見慣れた女性が立っていた。
その女性は花を眺めては優しく微笑んでいる。
「あれ? シーラ様?」
「え!? ル、ルーカス様っ!?」
ルーカスに声をかけられた女性ーーシーラは顔を赤らめて驚いていた。
「あの! えーと、お手洗いに行った後に、たまたま綺麗なお花を見かけて、窓から眺めていたらメイドの方に見て行っても良いと言われたのでそれで!」
「ああ、そうだったんですね」
慌ててそう説明するシーラの言葉を聞いて、ルーカスはすぐに納得した。
普段から礼儀正しいシーラが勝手に庭園に入る様な真似はしない事をルーカスは理解していたのだ。
しかし、シーラは気まずく感じてしまい、取り敢えず話題を変えようと慌てて花の方を見て口を開く。
「えっと、ここの庭園も沢山の花々が咲いていて綺麗ですね」
「そうですね、たまにこうしてゆっくり花を眺めるのも悪くな……うわぁっ!」
すると、ルーカスが話している途中大声をあげた。
「ルーカス様? どうかされましたか?」
「あ、いや、目の前を蝶が……」
シーラは突然のルーカスの大声に驚きながらもルーカスの方を振り向くと、そこには小さなモンシロチョウがヒラヒラと可愛らしく飛んでいた。
「あら、モンシロチョウね。
もしかして……ルーカス様は蝶が苦手なのですか?」
顔を青ざめさせながら胸に手を当てているルーカスを訝しむ様に眺めながらシーラは問い掛ける。
「お恥ずかしい限りだが、俺は虫が全般的に苦手でして……。
うわっ、こっちにも!」
ルーカスはそう答えながら今度は葉っぱについていた青虫を見つけてはそれから逃げる様にシーラの側に急接近してきた。
「ル、ルーカス様!?」
あまりにも急にルーカスが近づいてきた為シーラは顔が真っ赤になる。
「あ、シーラ様、ごめんなさい!」
そしてシーラとの距離が近過ぎる事にやっと気付いたルーカスは急いでシーラから離れた。
「えーと、それじゃあ一旦庭園から出ましょうか?」
「そ、そうします……」
シーラはバクバクいっている心臓を押さえつつルーカスにそう提案した。
そしてそのシーラの提案にルーカスは素直に同意する。
それからルーカスは庭園を出るまでの間何か他に虫が飛んで来ないか少しビクビクしながら歩いていた。
「ふぅ……」
そして庭園から抜け出してやっとルーカスは再び一息をついた。
「すみませんシーラ様、なんともお見苦しい面を見せてしまって」
ルーカスは先程までの自分の不甲斐ない行動をシーラに見られた事が恥ずかしくなって顔を赤らめる。
恥ずかし過ぎて穴があったら入りたいくらいだ……。
流石にシーラ様も引いただろうな……。
そうルーカスが思いつつチラッとシーラの様子を窺うと、シーラは顔を赤らめながら微笑んでいた。
「ふ、ふふっ」
「シ、シーラ様?」
そんなに顔が赤くなる程笑うとは、よっぽど俺の挙動が面白かったのだろうか……。
しかし、あれだけビビっていては馬鹿にされるのも無理はない。
ルーカスはシーラに馬鹿にされて笑われたのだろうと考えて少ししょんぼりする。
そんな落ち込んでいるルーカスを見てシーラは慌てて口を開いた。
「あ、ごめんなさいルーカス様。
その、今まで完璧なところばかり見ていたけれど、虫が苦手だなんて、しかもその反応が、なんというか、可愛らしくて……」
「へ? 可愛らしい?」
ルーカスはてっきり馬鹿にされて笑われたものだとばかり思っていた為、シーラの予想外の言葉に目を丸くして驚いた。
「ええ、とっても可愛らしかったわ!」
「え、そ、そうなのですか?」
「はい!」
ルーカスは不思議に思いつつも、満面の笑みのシーラを見てどうやら馬鹿にされたり軽蔑された訳ではなさそうで良かったと安堵した。
一方シーラは、普段見た事もないルーカスの焦ったり怯えていたりする顔や、恥ずかしさのあまりに赤面したりしょんぼりしている顔を見てオリヴィアが前に言っていたルーカスが犬っぽいという言葉を思い出していた。
確かに、オリヴィア様の言う通りちょっと犬っぽくて可愛らしいですわ……。
「ふふ、私、普段のカッコいいルーカス様も勿論好きですが、そういう駄目な所も好きですわ」
「え? 駄目な所が好き?」
シーラにそう言われてルーカスはキョトンとする。
「ええ! ふふふ、今日は普段と違うルーカス様が見れて良かったですわ。
……あ! 忘れてましたわ!」
「え? どうされましたか?」
相変わらず呆気に取られてキョトンとしているルーカスに、シーラは花の様な可愛らしい笑顔を見せる。
「ルーカス様、17歳の誕生日おめでとうございます!」
「あ……ありがとうございますシーラ様」
シーラからの祝言に、ルーカスもにこりと微笑んでお礼を言った。
「それと、プレゼントは広間の方に置いてきてしまったので、また後で渡しに行きますね」
「そうですか。ありがとうございます。
それなら広間の方へと戻りましょうか」
ルーカスはそう言って歩き出すと、シーラがそんなルーカスの袖をクイっと掴んだ。
「あの、ルーカス様、お疲れではないですか?
休まれる為にここへ来たのでしょう?」
シーラはそう心配する様にルーカスを見ながら尋ねる。
「え? まあ、休む為に来たのは確かですけど、かと言って俺の誕生会にいつまでも俺自身が抜け出す訳にも行かないですし」
一方ルーカスはシーラに心配された事に驚きつつも真面目にそう答えた。
「そうですか……。
少し残念です」
ルーカスの答えにシーラは本当に残念そうに少し顔を俯けつつも無理矢理微笑んでいた。
「え? 残念?」
そんなシーラを見てもルーカスはシーラの本心に気付いていないのか、もう一度シーラに問い掛ける。
「ええ、もう少し2人っきりで居たいなと思ったので」
顔を赤らめながらそう答えるシーラに、ルーカスは申し訳なさそうに微笑んだ。
「まあ俺ももう少し休みたいのは本音ですけどね。
じゃあ行きましょうか」
「ええ」
こうして、ルーカスとシーラは2人で広間へと戻ってきた。
すると、2人の側にすぐ様他の女性達が群がってくる。
「あら? シーラお嬢様?
何故ルーカス様のお隣にいるのかしら?」
女性の内の1人がシーラを睨みながらそう問い掛けてきた。
「たまたま途中でお会いしたので一緒に来ただけですよ?」
シーラはその女性に素っ気なくそう返す。
「ふーん、婚約破棄されたのにまだ意地汚くルーカス様を狙ってるだなんて、ルーカス様も大変ですわね?」
今度は横から別の女性がそう言ってきた。
「ルーカス様はお優しいから、貴女の様な方にもお情けで声をかけて下さっている事が分からないのかしら?」
「ルーカス様、こういう方にははっきりと迷惑だと言った方がいいですわよ?」
それから他の女性も口々にそう言い出した。
それを聞いてルーカスは不機嫌気味に答える。
「ならはっきりと言わせて頂きます。
その様に1人の女性によってたかって攻撃するのは如何なものでしょうか?」
ルーカスに強い口調でそう言われ、女性達は驚きながらたじろいだ。
「あ、ルーカス様違うんです!
攻撃なんてそんな」
「そうですよ、私達はシーラ様の為を思って教えてあげているだけで!」
慌ててルーカスに弁解している女性達に、今度はシーラがにっこりと笑顔でお礼を言った。
「まあ、私の為にわざわざ言ってくださりありがとうございます」
「そ、そうよ!
分かればいいのよ!」
「ええ。
その様な妬み僻みは身を滅ぼすとまさしくその身をもって教えて下さるだなんて、皆さんとても心優しいのですね!
私、感心して溜め息しか出ませんわ」
そう言い返すシーラの顔は笑っているが、その瞳は笑ってなどいなかった。
「っな!
ふ、ふん! いい気になるんじゃないわよ!」
「憶えてらっしゃい!」
そしてシーラに一蹴された女性達は口々に文句を垂れつつも散り散りに去っていった。
「シーラ様、大丈夫でしたか?」
ルーカスが心配そうにシーラの方を見やると、シーラは立ち去っていく女性達の後ろ姿を冷ややかに睨みつけていた。
それからシーラはルーカスに見られている事に気付きパッと笑顔を見せる。
「え? あ、私は大丈夫ですわ!
ああいう事は割とある事なので」
何せシーラはこれまでもルーカスの許嫁だからという理由であまり女性達からよくは思われていなかった為、この様に絡まれる事も少なくなかったのだ。
しかしルーカスは普段そういう場面は見かけなかった(というより気付かなかった)ので単純に驚いていた。
「そうだったんですね。もし次に何かあったら俺に言ってください。
注意しますので!」
ルーカスはシーラの事を心配しながらそう申し出た。
「ありがとうございます。
でも大丈夫ですわ」
しかし、シーラはそのルーカスの申し出をやんわりと断った。
「そうですか?
まあ確かに俺は頼りないかもしれないけれど、シーラ様の力にならいつでもなりますので」
ルーカスにそう言われてシーラはドキッとしながら顔を赤らめる。
「た、頼りないなんて事ないですわ!
それに、心配してくださってありがとうございます!
あ、そうだ、プレゼント持ってきますね!」
「え? あ、はい」
そう言い残してシーラは急いで人混みの方に走っていった。
「……シーラ様のあんな表情初めて見たな」
そして1人取り残されたルーカスは、先程のシーラの冷ややかな目線を思い出しては驚きつつも感心していた。
0
お気に入りに追加
531
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。
黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。
差出人は幼馴染。
手紙には絶縁状と書かれている。
手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。
いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。
そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……?
そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。
しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。
どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる