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やきもち焼き
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「最悪だ……」
一方、あの後ノアは一人部屋に引きこもって項垂れていた。
勝手に一人でやきもち焼いてオリヴィア姉様に当たってしまった。
でも、ルイスと手を繋いでいる所を見せつけられた上、別れ際も少し嬉しそうに微笑んでいたオリヴィア姉様を見ていたら、我慢せずにはいられなかった。
「だからってオリヴィア姉様が悪い事してる訳じゃない事くらい分かってるけど……」
分かってる、けど。
怖い。
オリヴィア姉様が、自分以外の他の人を好きになったらと考えると、吐き気がする程気持ちが悪い。
ルイスは勿論、例えルーカス兄さんでも嫌だ。
もしオリヴィア姉様が俺以外の誰かを選んだ場合、ちゃんと祝福してあげたい、のに。
「俺、こんなに独占欲強かったっけ?
ははっ……
笑えないなぁ」
元々、俺は好き嫌いなんてあんまりなかった。
うさぎのあの絵本だって、当時流行ってたから読んでいただけだし、絵だって別に得意なだけで好きかと聞かれると正直よく分からない。
野良猫の事も気にかけてはいたし、友達になりたいとは思っていたけど、幼いせいか恋愛として見たことはなかった。
だから、こんなに何かを好きになるのはこの14年間生きていて生まれて初めてだった。
今までは本当の自分を偽って生きてきたのだから、感情をコントロールする事なんて簡単だったのに、それが今では上手くできない。
まるで自分が自分じゃないみたいで、苦しい。
「あの時振られてたら、今頃俺は苦しまずに済んだのかな……」
そうノアが呟くも、しかしその言葉は静かな部屋の中に溶けて消えていった。
それから翌日。
「あ、おはようございますオリヴィア姉様♪」
「お、おはよう……」
ノアはいつも通り、まるで何事もなかったかの様な笑顔でオリヴィアに朝の挨拶をしてきた。
オリヴィアもそれに挨拶を返すが、そんなノアに対して内心びっくりしていた。
てっきり無視されるなり昨日の事を喋ってくるなり何かしらのアクションがあると思いきや、まさか普段通りに接してくるとは。
しかし、そうなると昨日の事を有耶無耶に出来るし、これでいいのだろうか……?
オリヴィアはそう悩みながらノアの方を見やると、ノアはその視線に気付いたのかニコリと笑って問い掛けてきた。
「どうしたんですかオリヴィア姉様?
そんなに見つめられると恥ずかしいですよ」
「あ、ごめん、別に見つめたかった訳じゃないんだけど」
「それより広間の方へと行きましょうか」
「え、ええ」
何だか妙な違和感があるけど、ノアは変わらずいつも通りだし、私も取り敢えずなるべく普通に接する様にしよう。
オリヴィアはそう考えてノアと一緒に広間へと向かった。
それからみんなで朝ご飯を食べてる最中、エマがサラダの皿をずいっとノアの方へと近付けた。
「ねぇノア、サラダのニンジン食べたかったら私のあげてもいいわよ?」
「エマ姉さん食べたくないだけでしょう?
ちゃんと自分で食べて下さいよ」
「うぅ~……分かったわよぅ」
エマはノアにそう言われて渋々ニンジンを食べ始めた。
……見てる限りでは、ノアは普段通りである。
あまりにも普通過ぎて、最早昨日の事が夢だったのでは? とさえ思えてきた。
ノアの奴、本当になかった事にするつもりなのだろうか?
「……ま、いいけど」
ノアが気にしていないなら別に私が気にする事もないか。
オリヴィアはそう思い昨日の事を考えるのはやめる事にした。
「オリヴィア様、明後日楽しみにしていますね!」
それから朝食を食べ終えた後、ルーカスはニコニコと私の元に駆け寄ってはそう言ってきた。
何を隠そう、明後日はルーカスの誕生日なのだ。
因みに1週間ほど前からこんな感じで催促されている。
「はいはい。そんな毎日言われなくても分かってるわよ」
「はあ、去年以上に誕生日が楽しみだな!
何せ去年はオリヴィア様から何も貰えなかったから」
ルーカスはしょんぼりとしながらそう話す。
確か、去年はまだこのお屋敷に来て2ヶ月しか経っていなかったので、誕生日プレゼントなんてあげるものかと意地でもあげなかった気がする。
その時もそう言えば催促されてはうるさいって逃げていたっけ?
そう考えると、何だか可哀想な事をしていたな。
かと言って、その時の事を今更謝るつもりはないけど。
「まあ今年はあげるんだからいいじゃない」
「はい! いやぁ、誕生日が待ち遠しいなぁ」
ルーカスは瞳を輝かせて本気で楽しみにしている。
その姿が何だか小さい子供の様で、見ててちょっと可愛いなと思った。
「ふふっ」
「ん? オリヴィア様、何か面白かったか?」
私が笑ったところを見て、ルーカスは不思議そうに問い掛けてくる。
「いや、ルーカスが何だか幼く見えてね」
「え? あ……あまりにも楽しみではしゃぎ過ぎたか……クールな大人の男になりたいのに、これじゃあ駄目だな」
私の言葉を聞いてルーカスは反省した様にしゅんとする。
ルーカスやエマは本当に表情がコロコロと変わるから分かりやすいなぁ。
これくらいノアも分かりやすかったら良かったのだけれど。
私はルーカスを見てそんな事を考えていた。
「よし! これからはなるべく感情を表に出し過ぎない様に気をつけるぞ!」
「多分無理だと思うけど」
「いえ、頑張ります!」
と、何やらルーカスは張り切りだしたのだが。
「私はいつものルーカスの方が分かりやすいからそのままでも良いと思うけど?」
「本当ですかぁ!?」
私の一言ですぐ様ルーカスはまた笑顔になる。
うん、この調子だとルーカスはクールな大人の男というものにはしばらくなれないだろう。
私はそんなルーカスを見て確信する。
……とは言え、ルーカスの誕生日まで明後日か。
「そう言えば、ルーカスは誕生会を開くのよね?」
「ああ、そうだな」
私が確認すると、ルーカスはにこやかにそう答えた。
「今年は何人くらい来るのかしら?」
「さあ……招待状はいつも30人くらいにしか出していないが、いつも何処から聞きつけてくるのかその倍の人数は来るからなぁ」
「そうなんだ……」
確か、去年は軽く100人は超えていた筈だ。
恐らくルーカス狙いの令嬢達やハワード家と仲良くしたいと考えている何処ぞの貴族達がこぞってやって来てるのだろうけど。
「シーラさんにも招待状は出したの?」
「ああ。婚約破棄したとは言え、大事な友人に変わりはないからな」
「ふーん、友人、ねぇ……」
ルーカスがそう言うという事は、一応ルーカスはシーラの事を悪くは思っていないのだろう。
なので、シーラの頑張り様によってはルーカスがシーラの方に気持ちが傾く事だってあるかもしれない。
私がそう考え込んでいると、ルーカスはまたもや勘違いをしたのか、嬉しそうに問い掛けてきた。
「あ、もしやオリヴィア様、俺がシーラ様を友人と言ったからやきもちでも焼いてくれたのか!?」
「な訳ないでしょ」
私はそのルーカスの問いを真顔でばっさりと否定した。
「そ、そうか……」
そしてまた露骨にルーカスはしょんぼりした。
その様はやはり犬っぽくて可愛らしく見えてしまう。
「やっぱり犬っぽいわね……」
「ん? 何か言ったか?」
「いや、何でもないわ」
オリヴィアは面倒になりそうなのでルーカスの問いをスルーした。
「……はぁ」
そしてそんな2人のやり取りを少し離れた所から眺めていたノアは1人溜め息を吐いていた。
一方、あの後ノアは一人部屋に引きこもって項垂れていた。
勝手に一人でやきもち焼いてオリヴィア姉様に当たってしまった。
でも、ルイスと手を繋いでいる所を見せつけられた上、別れ際も少し嬉しそうに微笑んでいたオリヴィア姉様を見ていたら、我慢せずにはいられなかった。
「だからってオリヴィア姉様が悪い事してる訳じゃない事くらい分かってるけど……」
分かってる、けど。
怖い。
オリヴィア姉様が、自分以外の他の人を好きになったらと考えると、吐き気がする程気持ちが悪い。
ルイスは勿論、例えルーカス兄さんでも嫌だ。
もしオリヴィア姉様が俺以外の誰かを選んだ場合、ちゃんと祝福してあげたい、のに。
「俺、こんなに独占欲強かったっけ?
ははっ……
笑えないなぁ」
元々、俺は好き嫌いなんてあんまりなかった。
うさぎのあの絵本だって、当時流行ってたから読んでいただけだし、絵だって別に得意なだけで好きかと聞かれると正直よく分からない。
野良猫の事も気にかけてはいたし、友達になりたいとは思っていたけど、幼いせいか恋愛として見たことはなかった。
だから、こんなに何かを好きになるのはこの14年間生きていて生まれて初めてだった。
今までは本当の自分を偽って生きてきたのだから、感情をコントロールする事なんて簡単だったのに、それが今では上手くできない。
まるで自分が自分じゃないみたいで、苦しい。
「あの時振られてたら、今頃俺は苦しまずに済んだのかな……」
そうノアが呟くも、しかしその言葉は静かな部屋の中に溶けて消えていった。
それから翌日。
「あ、おはようございますオリヴィア姉様♪」
「お、おはよう……」
ノアはいつも通り、まるで何事もなかったかの様な笑顔でオリヴィアに朝の挨拶をしてきた。
オリヴィアもそれに挨拶を返すが、そんなノアに対して内心びっくりしていた。
てっきり無視されるなり昨日の事を喋ってくるなり何かしらのアクションがあると思いきや、まさか普段通りに接してくるとは。
しかし、そうなると昨日の事を有耶無耶に出来るし、これでいいのだろうか……?
オリヴィアはそう悩みながらノアの方を見やると、ノアはその視線に気付いたのかニコリと笑って問い掛けてきた。
「どうしたんですかオリヴィア姉様?
そんなに見つめられると恥ずかしいですよ」
「あ、ごめん、別に見つめたかった訳じゃないんだけど」
「それより広間の方へと行きましょうか」
「え、ええ」
何だか妙な違和感があるけど、ノアは変わらずいつも通りだし、私も取り敢えずなるべく普通に接する様にしよう。
オリヴィアはそう考えてノアと一緒に広間へと向かった。
それからみんなで朝ご飯を食べてる最中、エマがサラダの皿をずいっとノアの方へと近付けた。
「ねぇノア、サラダのニンジン食べたかったら私のあげてもいいわよ?」
「エマ姉さん食べたくないだけでしょう?
ちゃんと自分で食べて下さいよ」
「うぅ~……分かったわよぅ」
エマはノアにそう言われて渋々ニンジンを食べ始めた。
……見てる限りでは、ノアは普段通りである。
あまりにも普通過ぎて、最早昨日の事が夢だったのでは? とさえ思えてきた。
ノアの奴、本当になかった事にするつもりなのだろうか?
「……ま、いいけど」
ノアが気にしていないなら別に私が気にする事もないか。
オリヴィアはそう思い昨日の事を考えるのはやめる事にした。
「オリヴィア様、明後日楽しみにしていますね!」
それから朝食を食べ終えた後、ルーカスはニコニコと私の元に駆け寄ってはそう言ってきた。
何を隠そう、明後日はルーカスの誕生日なのだ。
因みに1週間ほど前からこんな感じで催促されている。
「はいはい。そんな毎日言われなくても分かってるわよ」
「はあ、去年以上に誕生日が楽しみだな!
何せ去年はオリヴィア様から何も貰えなかったから」
ルーカスはしょんぼりとしながらそう話す。
確か、去年はまだこのお屋敷に来て2ヶ月しか経っていなかったので、誕生日プレゼントなんてあげるものかと意地でもあげなかった気がする。
その時もそう言えば催促されてはうるさいって逃げていたっけ?
そう考えると、何だか可哀想な事をしていたな。
かと言って、その時の事を今更謝るつもりはないけど。
「まあ今年はあげるんだからいいじゃない」
「はい! いやぁ、誕生日が待ち遠しいなぁ」
ルーカスは瞳を輝かせて本気で楽しみにしている。
その姿が何だか小さい子供の様で、見ててちょっと可愛いなと思った。
「ふふっ」
「ん? オリヴィア様、何か面白かったか?」
私が笑ったところを見て、ルーカスは不思議そうに問い掛けてくる。
「いや、ルーカスが何だか幼く見えてね」
「え? あ……あまりにも楽しみではしゃぎ過ぎたか……クールな大人の男になりたいのに、これじゃあ駄目だな」
私の言葉を聞いてルーカスは反省した様にしゅんとする。
ルーカスやエマは本当に表情がコロコロと変わるから分かりやすいなぁ。
これくらいノアも分かりやすかったら良かったのだけれど。
私はルーカスを見てそんな事を考えていた。
「よし! これからはなるべく感情を表に出し過ぎない様に気をつけるぞ!」
「多分無理だと思うけど」
「いえ、頑張ります!」
と、何やらルーカスは張り切りだしたのだが。
「私はいつものルーカスの方が分かりやすいからそのままでも良いと思うけど?」
「本当ですかぁ!?」
私の一言ですぐ様ルーカスはまた笑顔になる。
うん、この調子だとルーカスはクールな大人の男というものにはしばらくなれないだろう。
私はそんなルーカスを見て確信する。
……とは言え、ルーカスの誕生日まで明後日か。
「そう言えば、ルーカスは誕生会を開くのよね?」
「ああ、そうだな」
私が確認すると、ルーカスはにこやかにそう答えた。
「今年は何人くらい来るのかしら?」
「さあ……招待状はいつも30人くらいにしか出していないが、いつも何処から聞きつけてくるのかその倍の人数は来るからなぁ」
「そうなんだ……」
確か、去年は軽く100人は超えていた筈だ。
恐らくルーカス狙いの令嬢達やハワード家と仲良くしたいと考えている何処ぞの貴族達がこぞってやって来てるのだろうけど。
「シーラさんにも招待状は出したの?」
「ああ。婚約破棄したとは言え、大事な友人に変わりはないからな」
「ふーん、友人、ねぇ……」
ルーカスがそう言うという事は、一応ルーカスはシーラの事を悪くは思っていないのだろう。
なので、シーラの頑張り様によってはルーカスがシーラの方に気持ちが傾く事だってあるかもしれない。
私がそう考え込んでいると、ルーカスはまたもや勘違いをしたのか、嬉しそうに問い掛けてきた。
「あ、もしやオリヴィア様、俺がシーラ様を友人と言ったからやきもちでも焼いてくれたのか!?」
「な訳ないでしょ」
私はそのルーカスの問いを真顔でばっさりと否定した。
「そ、そうか……」
そしてまた露骨にルーカスはしょんぼりした。
その様はやはり犬っぽくて可愛らしく見えてしまう。
「やっぱり犬っぽいわね……」
「ん? 何か言ったか?」
「いや、何でもないわ」
オリヴィアは面倒になりそうなのでルーカスの問いをスルーした。
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