【完結】悪役令嬢だけど何故か義理の兄弟達から溺愛されてます!?

本田ゆき

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お嬢様は語らいたい

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「さて、と。
よし、始めましょうか」

 アデックに相談してから翌日、私はルーカスにあげるネックレスを取り敢えず作り始める為、前に買ったチェーンやら飾りやらを一通り机に用意した。

「しっかしまあ、お屋敷に来てからというもの、気が付けば色々と作る様になったなぁ」

 元々刺繍や編み物は趣味でやってたりしたけど、糸を買うお金もギリギリだった為昔は時間があってもそんなに沢山刺繍や編み物をする事はなかった。

 それが今では刺繍のみならずブレスレットやピアスなどのアクセサリーまで作れる様になったし、なんなら作り過ぎて作品が余ってるくらいだ。

「何かに使えたりとかしないかな……。
そうだ。大人になってお屋敷を出る事になったら、ハンドメイドのお店でも開こうかしら」

 とは考えてみても、実際お店を開くのにもお金がかかる訳だし、あんまりハワード子爵の世話になるのも気が引けるので、お小遣いをこれまで通り貯金に回そう。
 そんなに大きなお店を建てるつもりもないし、自宅兼用でやれば小遣い稼ぎ程度にはなるだろう。

 オリヴィアがそんな事を考えていると、部屋の扉がコンコンとノックされた。

「オリヴィア姉様、いますか?」
「ノア?
何か用?」

 私はそう返事をしながら扉を開ける。
 案の定、扉の先にはノアが立っていた。

「用って程でもないけど、ちょっとお喋りしたくなって♪」
「用がないなら帰りなさいよ」
「じゃあオリヴィア姉様とお喋りするという用で来ました」
「それは用とは言えないでしょ?」

 と私が言ってもノアは気にせず部屋へと入って来た。

「ちょっと! 何勝手に入ってるのよ!?」
「あ、入ってるね? 失礼してます」
「言えば良いってもんじゃないわよ?」

 私がそう批判する中、ノアは私の机の上の作りかけのネックレスを見つけて問い掛けてきた。

「オリヴィア姉様、これルーカス兄さんへ作ってるの?」

「まあそうだけど。
前に約束しちゃったしね」

「ふーん……」

 私の答えを聞いて、ノアは少し不機嫌そうな顔をする。

「何よ? あんたにもピアスあげたでしょ?」

 私はノアの両耳についてるうさぎのピアスを眺めながらそう言った。

 誕生日に私があげて以来、ノアは毎日うさぎのピアスをしている。

「まあそうだけど……」

 ノアはぶー、と頬を膨らませて不貞腐れながらそう答えた。

 ……本当はルーカス兄さんにまで手作りのアクセサリーなんてあげないで。なんて、俺が言う資格も義理もないのは分かっているけど。

 けど、嫌なものは嫌だと心の中で思うくらいは怒られないだろう。多分。

「というか、本当用がないなら帰ってよ」

 オリヴィアは呆れた顔をしながらノアへとそう言った。

「オリヴィア姉様って、本当俺に対する警戒心だけは強いよね?」
「そりゃああんたは色々と前科があるからね。
前に窓から勝手に入って来たり自殺未遂されたりした時の事、まだ許してはないから」

 オリヴィアにそう言われてノアははぁ、と溜め息を漏らす。

「だからごめんって。
一体いつになったら許してもらえるんだか」
「そうね。あんたが今後変な事をしなければかしら」

 オリヴィアのその言葉に、ノアは不貞腐れながら答える。

「俺最近変な事なんてしてないよ?
ここ数ヶ月抱きついてすらいないし」
「そういえばそうだっけ?」

 ノアにそう言われてオリヴィアは少し前の事を思い出していた。

 言われてみれば確かに勝手に抱きつかないって約束してから未だに律儀に約束を守ってくれてるんだっけ。

 てっきり即座に反故にされると思ってたからここまで続いてるのは素直に驚きだ。

「そうだよ。
だからそろそろ少しくらい許してくれても良いと思うんだけどね?」

 ノアにそう言われてオリヴィアは少し考える。

「うーん、でもあんた許したら許したでその後が面倒そうだしな」

「えー、そんな事ないって」

 オリヴィアの言葉にノアは安心してと言わんばかりに笑顔を見せる。

 最早その笑顔が油断ならないんだよなとオリヴィアは内心警戒した。

 すると、またもやコンコンと扉がノックされた。

「オリヴィアちゃーんいるかしら?」
「エマまで来たの?」

 私が扉を開けると、エマがニコニコと嬉しそうな笑顔で立っていた。

「実はねー! クリスちゃんとデートしてき……って、ノアもいたの?」

「あーあ、折角オリヴィア姉様と2人きりだったんですけどね」

 エマに私の部屋にいるのがバレたノアは残念そうにそう答える。

「全く、ノアは本当に油断も隙もないわよね。
オリヴィアちゃん、ノアが可愛いからってホイホイとお部屋に入れちゃ駄目よ?」
「言われなくても入れる気もなかったんだけどね」
「お二方とも酷いですね?
僕はこんなにも無害だと言うのに」

 ノアは瞳を潤ませてそう言ってきた。

「「いや、全く」」

 それに対し私とエマは声を揃えて言う。

 恐らくノアの事を知らない人が見たら本当に無害な美少年に思えるだろうけれど、あいにく私もエマもノアのあざとさやら計算高さやらは知っている為効果は無い。

「……ちぇ。
ちょっとはこれで落ちてくれてもいいのに……」

「何か言ったかしら?」
「いえ、何でもないですよ」

 ノアが小さく呟いた声にエマが反応するも、ニコニコといつもの笑顔でノアは返答する。

「ところでエマは何の用よ?」
「あ、そうそう!
オリヴィアちゃんと恋バナしようと思って!」

 オリヴィアの問いにエマは思い出したかの様に手を合わせてそう答えた。

「恋バナ?
そういうの私より母さんの方が好きなんじゃない?」
「そうだけどー、今お義母様つわりで辛そうだからお話相手になれないし」

「あー、そういえばそうだったわね」

 オリヴィアはエマに言われて自身の母であるイザベラが妊娠していた事を改めて思い出す。

 そうオリヴィアとエマが2人で話している中、ノアは少しずつ部屋の扉の方へと移動していた。

 オリヴィア姉様には悪いけどエマ姉さんの話は長くなると面倒だからさっさと逃げようっと。
 
 そう考えたノアはニコリと笑顔で2人に宣言する。

「それなら僕はおいとましますね」

 それからノアはそそくさと部屋を出ようとしたのだが、エマにガシッと腕を掴まれた。
 ノアは嫌な予感がして冷や汗を流す。

「……あの、エマ姉さん。
これは?」
「折角だし、ノアも聞いていってよ!」

 ノアの問いにエマはニコリと笑顔でそう返す。

「いや、でもそういうのは女性同士で話した方が盛り上がるのでは?」
「ノアも女心を勉強出来る良い機会じゃない♪」

 ……ノアの奴、今絶対逃げようとしてたな。
 可哀想な気もするけど、ざまあないわね。

 オリヴィアはそんなノアの魂胆を見抜きつつやれやれと呆れながら2人のやり取りを眺めていた。

 そうしてその後オリヴィアとノアはエマからたっぷりと長時間に渡って惚気話を聞かされたのであった。

「それじゃあ2人ともまた何かあったらお話聞いてね♡」

「もうしばらくはいいかしら……」
「同じく……」

 満足そうにニコニコとしているエマに対し、オリヴィアとノアは小さくそう答えた。

「ん? 2人とも何か言った?」

 エマはニコニコと聞き返してくるも、しかしその瞳は笑っていなかった。

 控えめに言って凄く怖い。

「「いえ、何でもありません」」

 そんなエマに気圧されてオリヴィアとノアは口を揃えてそう答えたそうな。
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