【完結】悪役令嬢だけど何故か義理の兄弟達から溺愛されてます!?

本田ゆき

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こんにちはレッドアイ

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 サクッと前回までのあらすじ。

 ルーカスの誕生日プレゼントとして手作りのネックレスを作る事になったオリヴィアは、そのままルーカスと共にネックレスの材料を買いに下町へとやって来ていた。
 すると、オリヴィアにいきなり殴りかかる少年が現れたのだが、実はその少年の正体はオリヴィアの先生だったのだ。




「先生って、どういう事ですか!?」

 ルーカスは訳が分からず2人に質問する。

「そりゃあ先生は先生だよ。
俺がオリヴィアにあーんな事やこーんな事を手取り足取り教えてやったんだ。
な?」

 先生と呼ばれた少年はニヤリと楽しそうに笑ってそう答える。

「あんな事やこんな事……!?
い、一体何を!?」

 それを聞いてルーカスは焦り顔で問い掛けた。

「はあ、何でそんな誤解を生む様な言い方をするんですか?」

 ルーカスが何やらショックを受けている横で、オリヴィアは溜め息混じりに答えた。

「先生は、喧嘩の先生よ」

「へ……?
喧嘩?」

 突然の思い掛けない単語に、ルーカスは目が点になる。

「そ! 俺がオリヴィアに喧嘩を教えてやったんだ。
今日は久し振りに姿を見たから、腕がなまってないかなってちょっと虐め……じゃなくて確かめようと思ってな!」

「今虐めって言いかけましたよね?」

 少年の言葉に即座にオリヴィアはツッコむ。

「まあまあ、そんな細かい事は気にすんなよ」

 少年は手を振りながらケラケラと笑っていた。

「その、つまり、オリヴィア様の喧嘩? の先生という事は、悪い人ではないという事ですか?」

 混乱しながらもルーカスはオリヴィアにそう尋ねる。

「良い人か悪い人かと訊かれたら、まあ悪い人ね」
「えー! 先生に対して酷くねーか!?」

 ルーカスの問いに対するオリヴィアの答えに、少年は異議ありと言わんばかりに否定した。

「え? わ、悪い人……なんですか?
じゃあ、戦って追い払った方が良いのか?」

 ルーカスは困惑しながらも少年に再度剣を向ける。

「お? おにーさんやろうっての? ははっ、いいねぇ、その綺麗なツラ血飛沫に染めあげるのも悪かねーなぁ?」

 剣を向けられた少年は、しかし焦る事なくニヤリと可笑しそうに笑っていた。

「先生、こんな町中で暴れるのはやめて下さい。
それに、ルーカスも別に戦わなくてもいいから」

 オリヴィアはやれやれと頭を抱えながらも臨戦体制に入ろうとする2人を止める。

「えっと、大丈夫なんですか?
オリヴィア様に危害を加えようと企んでたりしてないですか?」
「それはあるかもしれないけど、まあ大丈夫よ」

 心配そうに問い掛けるルーカスにオリヴィアはなんて事はないかの様に答える。

「なんだよ、オリヴィア随分と余裕あるじゃねーの?
なんなら今から一戦」「しません」

 オリヴィアが食い気味に断ると、少年は頭の後ろで腕を組んでちぇー、つまんねーと不貞腐れた。

「まあいいや。なー、それより久々に会った訳だし、飯でも食いにいかね?
オリヴィア~金持ちになったんなら奢ってくれよ」
「え、嫌ですよ」

「あ、なら俺が奢りましょうか?」

 少年のお願いをオリヴィアが即答で却下する横で、ルーカスは手を挙げてそう提案した。

「え? マジで!? なんだ、オリヴィアの彼氏は良い奴だな!」

 少年はルーカスに瞳を輝かせながら笑顔でそう言った。

「お、俺がオリヴィア様の彼氏に見えますか!?」

 一方、ルーカスも少年にそう言われて驚きつつも嬉しそうにしている。

「先生、ルーカスは彼氏じゃなくて……」
「オリヴィア様の先生は良い人ですね!」

 オリヴィアが誤解を解こうとするが、その言葉を遮ってルーカスがそう言ってきた。

「だから良い人ではないって」

 そのルーカスの言葉をオリヴィアは溜め息を吐きながら否定する。

「なら早速行こうぜー!」

 そして少年は2人のやりとりを特に気にする事もなくもう既に歩き出しており、早くと言わんばかりに手を振っていた。

「じゃあ行きましょうかオリヴィア様」
「はあ、何でこんな事に……」

 オリヴィアは嘆きつつも、昼にしては遅すぎて、おやつにしては早すぎる曖昧な時間にルーカスと少年と共にカフェへ行く事となった。

「あ、そういえば自己紹介がまだだったな。
俺ブラッディ・ノイズって言うんだ。
気軽にブラッドって呼んでくれ」
「ブ、ブラッド、ですか?」

 カフェに入って席に着くと、少年、もといブラッドはルーカスにそう名乗っていた。

 ルーカスはその名前を聞いて若干引き気味に訊き返す。

 何せブラッドは直訳で「血」という意味だし、名前のブラッディ・ノイズは直訳で「血濡れた雑音」という人名とはとても思えない意味の言葉となっているのだ。

「ああ! 自分でつけた名前なんだ。
カッコいいだろ?」
「先生相変わらずセンス悪いですよね。
その髪型もびっくりしましたけど」

 自信満々にブラッドはそう言うも、オリヴィアはすぐに否定する。

「なんだよオリヴィア!
毎回俺のセンスにケチつけやがって!
なあなあ、そこのお前もカッコいいと思うだろ?」

 ブラッドは仲間を作ろうとルーカスに同意を求めた。

「え? あ、ああ、まあ……そうですね?」

 それに対しルーカスは何とも言えない様な苦笑いで答える。

「あ、そういえば名乗り遅れてました。
俺はルーカス・ハワードと申します。
オリヴィア様の義理の兄ですが、ゆくゆくはオリヴィア様と結婚を前提にお付き合いしたいと考えております」

 それから、ルーカスは話を逸らす様に自己紹介をした。

「その考えを名乗る時に言う必要はあるの?」

 そのルーカスの自己紹介にオリヴィアはすかさずツッコむ。

「成る程ねー、相変わらずオリヴィアはモテてんだな」

 その2人の会話を聞いていたブラッドは腕を頭に組みながらオリヴィアのモテっぷりに感心していた。

「その、ところでブラッド君? とオリヴィア様って、昔からの知り合いなのですよね?
その、何で喧嘩の先生に?」

 ルーカスはおずおずと2人に質問する。

 実の所、ルーカスはその事が気になって仕方がなかったのだ。

「確か、先生と知り合ったのは8、9年くらい前でしたっけ?」

「ああ、あの時は俺仕事帰りでイライラしてた時だったっけな~」

 それから、2人は過去の事を思い出しながら口々に喋り出した。



 今から8年前。

 オリヴィアが最初の誘拐未遂に遭遇した後の事。

「……」

 オリヴィアは、見知らぬ男性に影からジーッと見つめられていた。

 しかも、それは今日に始まった事でなく、先週からずっとだ。

 あの人、一体誰なんだろう……?

 オリヴィアは若干の恐怖心があったものの、しかし相手も何もしてこないので気にしない様にしようとしていた。

 あの日までは。
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