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ただいま
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それから私達は約一日汽車に揺られて、やっとノルトギアへと帰って来れた。
その後、みんなそれぞれの家路へとついていった。
「何だか、あんた達3人とこうして馬車に乗るのも久しぶりよね」
実際はそんなに日は経っていない筈なのに、何だか凄く懐かしく思えてしまう。
「私もすっごく久しぶりな気がするわ!」
「こうしてまた4人で無事に家に帰れて本当に良かったよ」
「そうですね、オリヴィア姉様が無事で本当に良かったです」
それから、家に着くと、真っ先に母に抱きしめられた。
「オリヴィア……!
無事で本当に良かった……!」
そう言った母の身体は少し震えていた。
みんなの前で抱きしめれて私は少し気恥ずかしくなる。
「母さん、ちょっと大袈裟じゃない?
王室にいただけでそこまで危険な目には遭ってないから」
まあ本当は拳銃向けられたり色々とあったけれど、そこは言わなくてもいいだろう。
「何言ってるの!
大袈裟にもなるわよ!
もう二度とこんな思いさせないから!」
「分かったわよ」
それから、母は涙を拭って私の顔に手を当てた。
「おかえり、オリヴィア」
「ただいま、母さん。
それと、みんなも」
オリヴィアがそう言うと、他の使用人達もこぞってオリヴィアの元へとやって来た。
「オリヴィアお嬢様、よくぞご無事で!」
「心配したんですよう!」
「また元気なオリヴィアお嬢様の姿が見れて良かったですー!」
あっという間に私は使用人達に囲まれてしまった。
「オリヴィアお嬢様がいない間の3人ときたら、もう見るに耐えないほどでしたからね?」
「え? そうなの?」
メアリーの言葉に私は反応する。
「大変だったんですよ?
ずーっと上の空で、授業はろくに聞かないし、稽古もままならないしで講師の方達も嘆いておられましたから」
「へぇ、そうだったんだ」
「ちょ、メアリー!?
そんな事言わなくてもいいじゃない!」
「そうだぞ!」
「そうですよ!」
メアリーの暴露を3人は顔を赤らめながら慌てて止める。
「ところでオリヴィアお嬢様こそ向こうで大丈夫でしたか?」
「私は……そうね。
はっきり言って快適に過ごせていたわ」
私がきっぱり言うと、みんな一瞬固まった後笑いだした。
「流石オリヴィアお嬢様ですね」
「いつも通りで安心したわ」
メアリーと母もクスクスと笑っている。
「えー!?
オリヴィアちゃん悲しくなかったの!?」
エマに問われて、私は小さく深呼吸して答えた。
「あんたらが居なくて大分快適だったわよ?
……まあ、でも、ちょっと寂しいかな、なんて、思わなくもなかったけど」
最後の方は小声になってしまった。
家に帰って来れたら素直に接しようと思っていたのに、いざとなるとどうにもやはり上手くいかない。
しかし、私の言葉を聞いてルーカスもエマもノアも顔を赤らめながら満面の笑みになる。
「オリヴィアちゃんがデレたー!!」
「オリヴィア様!
寂しかったんですね!?」
「オリヴィア姉様急に素直になってどうしちゃったんですかぁ?」
「あーもう!
うるさいわね!
やっぱり今の無し!!」
私は顔を赤らめて否定する。
「えー!?
今の無しなの?」
「寂しかったんじゃないのか?」
「どっちなんですか、オリヴィア姉様?」
3人に問われて私は顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「もう何だって良いでしょ!?
そうよ!!
あんたらが居ないと寂しかったわよっ!!
何よ文句あるならやってやろうじゃないのこのばかぁ!!!」
もうどうにでもなれという一心に叫んだ後私はすかさず逃げ出した。
「オリヴィアちゃん!?
文句なんてないから逃げないでー!?」
「台詞と態度が完全に合ってないぞオリヴィア様!」
「全く、素直なんだか素直じゃないんだか」
3人は口々にそう言いながらオリヴィアを追いかける。
「またいつもの日常が戻って良かったな」
後ろからそんな4人の光景を見てハワード子爵はイザベラへとそう告げた。
「ええ。本当に良かったわ。
みんなになんてお礼を言ったら良いか……。
それに、あなたもありがとう」
イザベラはニコリとハワード子爵に微笑みながら礼を言う。
「私は今回何もやってはいないさ。
礼ならあの子達に言ってくれ」
「ふふ、そうね」
でも、貴方が同盟を組むために東奔西走していた事、私はちゃんと分かってますからね。
イザベラはにこやかに微笑んだ。
こうして、オリヴィアがハワード家に来て1年とちょっと。
少しずつ、分かりづらいかもしれないけれど、しかし確実にみんなの心に変化が訪れていた。
「桜、咲いていたのね」
オリヴィアはハワード家のお屋敷の窓から満開の桜を見て、初めてハワード家に来た時の事をふと思い出していた。
あの時も、確かに満開の桜の中、お屋敷へとやって来た。
でも、あの時は桜を見る余裕なんてなかった。
血の繋がらない赤の他人と、家族の振りをしなくてはいけない。
それが、不安で、怖くて堪らなかった。
母の握りしめる手が震えていたから、私がしっかりしなくてはと気丈に振る舞っていたけれど、本当は逃げ出したくて仕方がなかったんだ。
でも、今ではここが、私にとって帰りたい場所となった。
怖いと思っていた血の繋がらない赤の他人に、幾度となく助けられた。
「オリヴィアちゃん♡」
「オリヴィア様!」
「オリヴィア姉様♪」
少しだけ、こんな私でも幸せな夢を見れる気がした。
その後、みんなそれぞれの家路へとついていった。
「何だか、あんた達3人とこうして馬車に乗るのも久しぶりよね」
実際はそんなに日は経っていない筈なのに、何だか凄く懐かしく思えてしまう。
「私もすっごく久しぶりな気がするわ!」
「こうしてまた4人で無事に家に帰れて本当に良かったよ」
「そうですね、オリヴィア姉様が無事で本当に良かったです」
それから、家に着くと、真っ先に母に抱きしめられた。
「オリヴィア……!
無事で本当に良かった……!」
そう言った母の身体は少し震えていた。
みんなの前で抱きしめれて私は少し気恥ずかしくなる。
「母さん、ちょっと大袈裟じゃない?
王室にいただけでそこまで危険な目には遭ってないから」
まあ本当は拳銃向けられたり色々とあったけれど、そこは言わなくてもいいだろう。
「何言ってるの!
大袈裟にもなるわよ!
もう二度とこんな思いさせないから!」
「分かったわよ」
それから、母は涙を拭って私の顔に手を当てた。
「おかえり、オリヴィア」
「ただいま、母さん。
それと、みんなも」
オリヴィアがそう言うと、他の使用人達もこぞってオリヴィアの元へとやって来た。
「オリヴィアお嬢様、よくぞご無事で!」
「心配したんですよう!」
「また元気なオリヴィアお嬢様の姿が見れて良かったですー!」
あっという間に私は使用人達に囲まれてしまった。
「オリヴィアお嬢様がいない間の3人ときたら、もう見るに耐えないほどでしたからね?」
「え? そうなの?」
メアリーの言葉に私は反応する。
「大変だったんですよ?
ずーっと上の空で、授業はろくに聞かないし、稽古もままならないしで講師の方達も嘆いておられましたから」
「へぇ、そうだったんだ」
「ちょ、メアリー!?
そんな事言わなくてもいいじゃない!」
「そうだぞ!」
「そうですよ!」
メアリーの暴露を3人は顔を赤らめながら慌てて止める。
「ところでオリヴィアお嬢様こそ向こうで大丈夫でしたか?」
「私は……そうね。
はっきり言って快適に過ごせていたわ」
私がきっぱり言うと、みんな一瞬固まった後笑いだした。
「流石オリヴィアお嬢様ですね」
「いつも通りで安心したわ」
メアリーと母もクスクスと笑っている。
「えー!?
オリヴィアちゃん悲しくなかったの!?」
エマに問われて、私は小さく深呼吸して答えた。
「あんたらが居なくて大分快適だったわよ?
……まあ、でも、ちょっと寂しいかな、なんて、思わなくもなかったけど」
最後の方は小声になってしまった。
家に帰って来れたら素直に接しようと思っていたのに、いざとなるとどうにもやはり上手くいかない。
しかし、私の言葉を聞いてルーカスもエマもノアも顔を赤らめながら満面の笑みになる。
「オリヴィアちゃんがデレたー!!」
「オリヴィア様!
寂しかったんですね!?」
「オリヴィア姉様急に素直になってどうしちゃったんですかぁ?」
「あーもう!
うるさいわね!
やっぱり今の無し!!」
私は顔を赤らめて否定する。
「えー!?
今の無しなの?」
「寂しかったんじゃないのか?」
「どっちなんですか、オリヴィア姉様?」
3人に問われて私は顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「もう何だって良いでしょ!?
そうよ!!
あんたらが居ないと寂しかったわよっ!!
何よ文句あるならやってやろうじゃないのこのばかぁ!!!」
もうどうにでもなれという一心に叫んだ後私はすかさず逃げ出した。
「オリヴィアちゃん!?
文句なんてないから逃げないでー!?」
「台詞と態度が完全に合ってないぞオリヴィア様!」
「全く、素直なんだか素直じゃないんだか」
3人は口々にそう言いながらオリヴィアを追いかける。
「またいつもの日常が戻って良かったな」
後ろからそんな4人の光景を見てハワード子爵はイザベラへとそう告げた。
「ええ。本当に良かったわ。
みんなになんてお礼を言ったら良いか……。
それに、あなたもありがとう」
イザベラはニコリとハワード子爵に微笑みながら礼を言う。
「私は今回何もやってはいないさ。
礼ならあの子達に言ってくれ」
「ふふ、そうね」
でも、貴方が同盟を組むために東奔西走していた事、私はちゃんと分かってますからね。
イザベラはにこやかに微笑んだ。
こうして、オリヴィアがハワード家に来て1年とちょっと。
少しずつ、分かりづらいかもしれないけれど、しかし確実にみんなの心に変化が訪れていた。
「桜、咲いていたのね」
オリヴィアはハワード家のお屋敷の窓から満開の桜を見て、初めてハワード家に来た時の事をふと思い出していた。
あの時も、確かに満開の桜の中、お屋敷へとやって来た。
でも、あの時は桜を見る余裕なんてなかった。
血の繋がらない赤の他人と、家族の振りをしなくてはいけない。
それが、不安で、怖くて堪らなかった。
母の握りしめる手が震えていたから、私がしっかりしなくてはと気丈に振る舞っていたけれど、本当は逃げ出したくて仕方がなかったんだ。
でも、今ではここが、私にとって帰りたい場所となった。
怖いと思っていた血の繋がらない赤の他人に、幾度となく助けられた。
「オリヴィアちゃん♡」
「オリヴィア様!」
「オリヴィア姉様♪」
少しだけ、こんな私でも幸せな夢を見れる気がした。
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