【完結】悪役令嬢だけど何故か義理の兄弟達から溺愛されてます!?

本田ゆき

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 オリヴィアがレイアン王子と共にオルトレアの王室に来て、1週間経ったある日。

 オリヴィアは、今日も悲しみにくれてハワード家に戻りたいと切望して……

「ここをこうして……出来た!
うん、我ながらこのぬいぐるみ、上手くいったわね」

 悲しみにくれ、て……?

「あの3兄弟にも邪魔されないから色々と捗るわ!
次は何を作ろうかしら!?」

 ……どうやら割と楽しんでいる様です。



 改めましてこんにちは、オリヴィア・ハワードです。
 ハワード子爵に誘われてオルトレアにやって来たらレイアン王子に脅されて婚約して王室へと連れてこられました。
 そんな状況下で、何故ナレーションが戸惑う程に私が楽しんでいるかというと、結論はただ一つ。

「すっごく快適……!」

 あの3兄弟に邪魔されずに趣味や読書に没頭出来るし、女性にそこまで学は必要無いという国王の考えにより勉強も強制されず、そして煩わしいパーティに行かなくてもいいだなんて!

 そんなこんなで私は王室に来て1週間、気ままに引きこもりライフを楽しんでいたのだ。

 最初こそはどうなることかと不安ではあったが、脅されて婚約させられたという事実を除けばかなり快適である。

 あれこれ考えて不安にならない様にと1週間趣味にふけっていたのだが、そのお陰で割とプラスに考える事が出来る様になった。

「しっかしまぁ、気がかりなのよねぇ……」

 私は作った猫のぬいぐるみを抱きかかえながら、レイアンの事を思い出す。

「ここに連れて来られて以来、1回も顔を合わせてないし……」

 レイアンは私に一目惚れしたと言っていた。
 しかし、本当に私の事が好きなら、1週間も放置するだろうか?
 まあ、王子だから忙しいだけかもしれないが。
 もしくは釣った魚には餌はやらない精神なのかも。
 私としては別にそこまで会いたいとも思わないし、寧ろ好都合ではあるのだが。

 それでも、そもそも好きな人と婚約する為に好きな人を脅すというのもどうなのだろう?

 確かに、欲しいものを手に入れる為ならどんな汚い手を使ってでもいいという人が世の中には少なからずいる。

 そういう人は大体その欲しいものに執着していたりするが、レイアンは私に執着している様にはとてもじゃないが見えない。

 あの3兄弟やルイスと違い、レイアンは私に迫ってきた事はない。

 まああの3兄弟やルイスを基準に考えるのがそもそもいけないのかもしれないけれど。

「なーんか、嘘くさいのよね……」

 レイアンの笑顔を思い出しながら私は考える。

 レイアンは、本当は私の事が好きではないんじゃないのか?

 あくまで勘なのだが、レイアンが私に向ける視線は、とても好意的だとは思えなかった。

 ただ、そうなると私と婚約した意味が分からない。

 やはりあの馬車の件での口封じの為?

 それならこんな回りくどい事をせずとも、私とノアに直接口封じしたらいいだけの話である。

 なら何故?

 レイアンの目的がいまいちよく分からない。

「はあ、よく分からないわ。
でもどうせ王子と結婚するなら、アデック王子の方が良かったな……」

 私はそう呟いて、アデックならもしかしたらレイアンが何を考えているのか分かるのだろうかとふと考える。

 それから私は手紙を書こうと思いたち、机に向かった後にやっととある事実に気付いた。

「あ……もうアデック王子に手紙を出せないのか……」

 オルトレアの王子と婚約している私が、ノルトギアの王子に手紙を出すなんて普通に考えておかしいだろう。

「もう前みたいには話せないのか、ちょっと残念……」


 ……ん? 残念?


 確かにアデックは友達として色々と相談に乗ってくれて話しやすいし、私の知らない事を知ってて話を聞くのは楽しいとは思うけど。

 もしかして、私はアデックの事……

「いや、やめよう。
もうそんな事考えた所で意味がないし」
 
 もし私がアデックを恋愛として好きだったとして、その気持ちに気付いた所でもうレイアンと婚約をしているのだから、今更遅すぎるし、考えた所で無駄だ。

 忘れよう。

 アデックに限らず、他の3兄弟やルイスやシーラ、クリス、母さんにハワード子爵、他の使用人達とは、もう今後二度と会えないかもしれないのだ。

 私がみんなの事をどう思っているのかとか、恋愛や友情がどうこうとか考えるのはもうやめよう。

 ……思えば母さん以外のみんなとは出会って1年足らずなんだ。
 人生のうちのたった1年なのだから、私も、みんなも、きっと何年も経てば忘れてしまうだろう。

 それでいいんだ。

 それで。



 心残りもそんなにないだろうし……。

「あ、でもノアから貰った本、まだ読んでないんだった……」

 まあでも使用人に言えば取ってきて貰えるらしいし、何なら新しく買ってもいいし……。

 そう言えばルイスとの文通も終わりか……。
 どう書けばいいか分からなくて結局ずっとありきたりな事しか書いてなかったっけ?
 もっとちゃんと書いておけば良かったなぁ。

 ルーカスから貰ったリトル・キャットのぬいぐるみ、本当は凄く嬉しかったのに嬉しいって言えなかったっけ。

 エマから貰ったブレスレットや髪飾りも本当は凄く嬉しかったなぁ。
 最後の最後まで泣かせちゃって、あの後大丈夫だっただろうか……。

 ノアもまた一人で勝手に行動しそうで怖いな……今回の一件で責任を感じてないといいけど。


 ああ、そっか。

 たった1年で、こんなにも心残りが出来ていたのか。

 
「……かえりたい」


 帰りたい。

 本当は今すぐに帰って、今度こそ意地を張らないで素直にみんなと過ごしたい。

「……うっ……っく……」

 気付いたら、涙が溢れていた。




「はあ……あー、泣いてうじうじしてても仕方ないし、本でも読もうかしら」

 私はひとしきり泣いた後、気晴らしに読書でもしようと部屋に置かれている本棚から読めそうな本を物色する事にした。

 因みに、当たり前なのだが本棚には大体オルトレア語の本が置かれており、残念ながら私はオルトレア語が読めない。

 なので必然的にまだ読めそうな英語の本を探す。

「……あれ?
これ、オルトレア語ですら無いわよね?」

 私は本棚の本を見て不思議に思った。

 本棚にはオルトレア語らしき本と、英語、それにノルトギア語の本まであったのだ。

 しかし、それだけではなく、全く見知らぬ言語の本がいくつもあった。

 それも、一つの言語ではなく、沢山の言語の本が並んでいた。

「何これ……記号みたいな言語に……こっちの言語も見たことないわ。
これもまた別の言語みたいね……」

 どうやらこの本棚には世界各国の本が置かれている様である。

「凄いわね、王室だからかしら?
そう言えば、レイアン王子も私と話していた時ノルトギア語だったしね」

 レイアンがあまりにも普通にノルトギア語を話していたからあまり気にはならなかったのだが、よくよく考えてみたらあれだけスラスラと異国の言葉を使えるのは凄いなと思う。

 それに、アデックも確かテレビとかで異国の言葉を話していたっけ?

 王子だから、やはりそのくらいは出来て当然という事なのだろうか。

「やっぱり王子って凄いのね……ん?」

 私は本棚を見ていてとある事に気がついた。

「ここだけ、何でこんなにバラバラなんだろう?」

 この部屋には4つ本棚があり、基本的にはシリーズ物はきちんと並べられている。
 言語の違う本も、全て綺麗に並べられているのだが、何故か1番右側の本棚の、上から3段目だけ、本の種類やシリーズものがバラバラに入れられていた。

 他が綺麗に揃えられている分、そこだけが酷く異質に見える。

「他の所は全部揃っているのに……あ、この本だけ上下が逆だわ」

 私は上下が逆になっていた本を取り出して直そうとした。

「あら? これ、あの著者の本だ」

 その本は、たまたまいつも読んでいた伝記物や、あの恋愛物語ラブ・ストーリーを書いた著者のものであった。

「この人凄い沢山本を出してるのよね」

 私はその本をそのまま手に取りパラパラとめくる。

 すると、本の間から1枚の紙がヒラリと落ちてきた。

「紙?
何かしら」

 そこには、「Read head from the right (頭を右から読んで)」とだけ書いてあった。

「頭を右から読んで……?
HEAD……DAEH?
いや、変よね?」

 訳も分からず、私は手に取った本の冒頭を取り敢えず読んでみる。

 しかし、本を読んでみても内容は普通の伝記物だった。

「頭……頭文字って事?」

 ふと私はバラバラに本が置かれている棚が視界に入った。

 もしかして。

 私はそのバラバラの本棚の本を一つずつ見ていく。

「……やっぱり!
本のタイトルの頭文字を右から読むとちゃんと言葉になる様に置かれている!」

 本のタイトルの頭文字は、R、E、W、A、R、D、E、H、T、F、O、K、C、A、B、E、H、Tの18文字だった。
 それを右から順に読んでいく。

「The back of the drawer……引き出しの裏?」

 それからすぐ様部屋の机の引き出しを開けてみた。

 中には何も入ってはいない。

「裏、て事は……」

 私は引き出しを開けたまましゃがんで裏側を見てみると、そこには手紙が貼り付けられていた。

 その手紙を私は破かない様にそっと取る。

 手紙の表には、「Bingo! Got it! (ピンポーン! 大正解!)」と書かれていた。

「何なのかしら?」

 気になってそのまま手紙を開けてみる。


「……えっ」

 その手紙には、驚愕の事実が書かれていた。
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