【完結】悪役令嬢だけど何故か義理の兄弟達から溺愛されてます!?

本田ゆき

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モヤモヤの答え

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 お屋敷に着いた私とノアは庭園の抜け穴を通って一目散に自室へと戻った。

(因みに庭園から自室に戻るまで人目を避けて通るのは何気に骨が折れる)

 それから自室で下町の格好からすぐ様ドレスへと着替え直した。

「ふぅ、なんとかなったわね」

 着替え終わった後広間に行くと、私を見るなりすぐ様ルーカスとエマが駆けつけて来た。

「オリヴィアちゃん! 暫く見なかったけど何処か行ってたの!?」
「オリヴィア様! 探しましたよ!
ノアも姿が見えなかったけど、まさか一緒だったんですか!?」

「あー、いや、えーと……」
「ルーカス兄さんにエマ姉さん、はいこれお土産でーす♡」

 私がどう言おうか迷っていると、すかさず横から着替え終わった後のノアが2人にお菓子の缶を手渡す。

 そういえばノアは駅で何やら買っていたっけ。

「え? 何よこれ?」
「オリヴィア姉様とまたデートしてきたのでそのお土産ですよ」

 それを聞くなり、エマとルーカスはすかさずノアを問い詰める。

「お前、この前もオリヴィア姉様と出掛けてたじゃないか!」
「そうよそうよ! ノアだけずるいわ!」

「別にずるくないですよー。
ちゃんとオリヴィア姉様の同意の元ですし。
ねぇオリヴィア姉様♪」

 そんなノアの態度を見てこいつは本当にちゃっかりしてるなぁと半ば呆れる。

「まあ、そうね。ちょっと用事があったから付き合って貰っただけよ」

「そんな! オリヴィア様、次は俺が付き合います!」
「私もオリヴィアちゃんの用事に付き合いたい!」

 ノアがデートだなんて言ったせいで場が全く収まらなくなってしまった。

 私がノアを睨むも、ノアはそんな事気にも止めずにニコニコとしてるのが尚腹立たしい。

 こうなったらもう逃げるしかない。

「私疲れたから部屋で休むわ」
「えー! オリヴィアちゃんもう行っちゃうのー!?」

 私はエマの制止も聞かず3人を置いて足早に部屋へと戻った。

「はぁ、ノアの奴め」

 部屋に戻った私はボスンとベッドに腰掛けた。

 それから今日あった事をゆっくりと思い出す。

 ホワイトブラン先生の所に貴族は来ていない事とネイブさんがやはり口止めされていた事。

「どう考えても怪しいけど、これ以上手掛かりが無いんじゃどうしようもないわね」

 しかし、ノアがこれで諦めてくれるだろうか?

 ノアはきっと死んだあの子が自殺として処理されている事に納得がいかないのだろう。

 それは私だって同じだ。

 好奇心と言うより、真相をきちんと知りたい。

 ノアだってあの子の事を想えば、恐らく諦めたくないだろうし。

 すると、また胸の中がモヤモヤし出した。

 最初は事件が不可解だからモヤモヤしてると思っていたのだけれど、何だかノアとあの子の事を考えてるとモヤモヤしてしまう様な気がする。

 一体、何なのだろう?

 そんな事を考えていると、コンコンと部屋のドアがノックされた。

「オリヴィアお嬢様、いらっしゃいますか?」

「何かしら」

 私がドアを開けると、メイドが少し安心した様な顔をする。

「良かった、お昼頃から探していたんですよ」
「あ、そうなの?
ごめんなさい、何かあったかしら?」

 私が尋ねると、メイドは私に手紙を手渡してきた。

「また、王室からお手紙が届いてまして」

「本当急よね」

 私は手紙を受け取りすぐに封を開けて内容を確認する。

「オリヴィアへ

前に話してから随分時間が経ったのでそろそろ何かしら進展があったか是非聞かせてくれ。
明日また13時に王室で待ってるぞ。

まあ何もなかったら猫と遊んでけ。
馬車もちゃんと出すのでよろしくな!

アデック」

 また本当に急な手紙である。
 そして毎度の事ながら書き方が軽く本当に王子が書いているとは思えない。

「明日王室に行くことになったわ」
「そうだろうと思いもうメアリーが準備していましたよ」
「流石ね……」

 メアリーは手紙がきた時点で既に察していたのだろう。

 まあ私宛に王室から手紙が来た場合殆ど誘いの手紙だからそう考えるのも無理はないか。

 それなら折角だしこのモヤモヤしている事を訊いてみよう。

 本当は自分の気持ちなのだから自分で気付かなくてはいけないのだろうけれど、というか、前にアデックにそう言われたのだけれど。

 でも考えても分からないものは仕方ない。

「なんやかんや一番アデック王子に相談してる気がする様な……」

 少し相談し過ぎな気もするが、まあ、王子とはいえ友達だしそれくらいは別に大丈夫だろう。

 私は特に気にしない事にした。


 そして翌日。

「おー、オリヴィア。誕生日振りだな」
「あぁ、そうですね。確か」

 私はいつもの如くアデックの部屋に案内された。

「可愛い! あー、癒されるわぁ」

 部屋に入るなり私は即座に猫を抱きしめた。

「それは良かったな。
あ、後前回スクープされたの、驚いたか?」

「それは勿論驚きましたよ!
何せ生まれて初めて雑誌に載りましたからね」

 私はアデックの問いに少し嫌味を含めて答える。

「まあ、馬車を降りる際撮られるだろうとは予想してたんだが、確定していないのにお前に写真を撮られたかもと言っても不安にさせるだけかと思ってな」

 それを聞いて、確かにそうだなとオリヴィアは納得する。

「まあ本音を言うならお前がどの位驚くかちょっと見たかったんだが」

「今折角納得しかけたのに台無しですよ」

 私は呆れて溜め息を吐いた。

「手紙にも書いたが俺にしつこく付き纏う輩がいてな。

いずれどっかの機会で一度訴えてやろうかとも思うが、何せ一国の王子が下手に民間人を訴えたらあの噂は本当だったのか、なんて言われかねないからなんとも難しいんだよな」

「それはまあ、そうでしょうね」

 やはりアデックもそういう事には手を焼いている様だ。

 まあ有名な人ほどそうなるのも仕方がないだろう。

「だからまあお前もぼちぼち下手にスクープされても気にするなよ。

じゃあ前置きはこのくらいにして。

それで、あの後何か進展でもあったか?
誰かと付き合ったりした?」

 アデックはまるでからかう様に訊いてくる。

「残念ながら誰とも付き合ってませんよ。

ただ、最近何だかモヤモヤする事があって」

「モヤモヤする事?」

 私は馬車の事件の事は隠して簡潔に説明した。

「何というか、下町にいた頃私がたまに見かけた女の子とノアが昔仲が良かった事とか、その子がちょっとした事故で亡くなったんですけど、亡くなった今でもノアがその子の事を想っている事とか、そういうのに何かモヤモヤしちゃって」

 それを聞いてアデックは溜め息を吐いた。

 いや、それもう100%嫉妬じゃねーか。
 というか、その話を聞く限りではオリヴィアはノアの事好きだろ多分。
 しかしそれに対して全く無自覚なのが恐ろしい。
 何故気付かないんだ?

 それとも、自分の気持ちを閉じ込めて気付かないフリをしているのか……?

 アデックはこれをどう伝えたらいいのか腕を組んで悩む。

「そうだな……。
オリヴィア、因みにお前はノアの事をどう思っている?」

「どうとは?」

「いや、だから、例えばノアの事を考えてドキドキしたりとか、妙に顔が火照ったりとか、好意的に見えたりとかしないか?」

 アデックの質問にオリヴィアは暫く考えて口を開く。

「……いえ、特には」

 そのオリヴィアの平然っぷりにアデックは内心驚いた。

 マジかー。嘘だろ?
 逆に何で? と訊き返したい。

 しかしオリヴィアは本当に何とも思っていない様に見える。
 もしノアの事が好きなら、多少動揺したり赤面したりくらいはしそうなのに、それが全くない。

 となると、ノアの事が本当に好きではないのか?

「あー、いや、てっきり俺はそのモヤモヤは嫉妬だと思ったんだが、どうにも違いそうだな」

「嫉妬……」
 
 アデックの話を聞いて、オリヴィアは少し考え込んだ。

 そして、何かに気付いたかの様にハッとする。

「ああ、そうか。

アデック王子、すみません。自己解決しました」

 そうオリヴィアはスッキリとした笑顔で伝えてくる。

 一体何に気付いたのか、逆にそちらが気になるが、まあ解決したのなら良しとしよう。

 アデックはそう考えて変に詮索する事はしなかった。

「そうか。何か知らんが良かったな」

「はい。聞いてくれてありがとうございます。
あの……遊んでも……?」

 オリヴィアはチラチラと猫の方を見ながらアデックに恐る恐る質問する。

「ああ、他に何も無いなら遊んでっていいぞ」

 アデックはやれやれと言った顔で答えた。
 それを聞いてオリヴィアは目を輝かせながらそのまま猫と遊び出す。



 ……そういえば、この子だけ毛色も種類も違うんだよなぁ。

 猫と遊んでいる最中、私はふと以前から気になっている事をアデックに訊いてみた。

「前から少し気になってたんですけど、このベラちゃんだけ長毛種ですよね?
ルナちゃんとレオくんはそっくりだから兄妹かなとは思ってたんですけど」

 私は長毛の猫を抱きながらアデックに質問する。

 因みにベラ、ルナ、レオは猫の名前である。

「ああ、ルナとレオは兄妹で、ベラだけ貰ったんだ。
そいつだけオルトレア出身でな」

「オルトレア出身?」

 私はあの馬車の事件に関わっているであろう国名を聞いて反応する。

「ああ、前に話した元婚約者から譲り受けたからな」
「その婚約者って、オルトレアの方だったんですか?」

「ああ、そうだが……」

 そこまで言ってアデックは口をつぐむ。

 アデックの様子を見るに、恐らくこれ以上は話したくないのだろう。

「そうだったんですね」

 流石に亡くなったアデックの最愛の女性の事を根掘り葉掘りと聞く趣味もないので、私はそのまま猫と戯れてから帰る事にした。



 それから屋敷に帰って来て私はノアがよく居る庭園へと訪れた。

「あ、オリヴィア姉様。
今日は王室から帰ってくるのが早かったね」

「ええ、まあね」

 案の定ノアは庭園のガーデンチェアに座りながら絵を描いている。

「ちょっとノアと話したい事があって」
「話したい事?」

 私はどう話そうか少し悩み、一呼吸ついてから話し出した。

「実は、馬車の事件を調べてる時に、ノアがあの子の話をすると、何だかモヤモヤする事があって」

「モヤモヤ?」

 てっきり馬車の事件の話をするのかと思っていたノアは、不思議そうにオリヴィアを見やる。

「何と言うか、こう、ノアとあの子が仲が良かったって知ってから、胸が苦しくなる感じがするというか」

「……それって」

 もしかしてオリヴィア姉様があの女の子に嫉妬しているのか?

 そうだとするなら俺の事を意識してるって事?

 だとしたら、不謹慎かもしれないがめちゃくちゃ嬉しい。

 ノアははやる心臓を無理矢理押さえつけてなるべく表情に出さない様にした。

「私、多分嫉妬してたんだと思う」

 オリヴィアははっきりとノアに告げた。

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