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ハッピーバースデー!

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「オリヴィア、誕生日おめでとう!」

 朝食を食べ終わった後私は母に呼び出されて母の部屋に来ていた。

「ありがとう母さん」

「はい! これ誕生日プレゼント♪」

 すると母からニコニコ顔でポンッと何やら箱を渡される。

「開けてみて?」

「あー、分かったわよ。

って、これ、可愛すぎない?」

 箱の中には白いリボンのあしらわれたハイヒールが入っていた。

「お洒落は足先からなんて言うでしょ?
これを機にあんたも可愛くなりなさいよ?」

「えーー……」

 確かにこういう可愛いものは好きではあるが、やはりいざ自分が履くとなると恥ずかしい。

「あら、嫌なの? エマちゃんから貰ったその可愛いブレスレットは毎日つけられるのに?」

 母に指摘されて私はバッと腕につけているブレスレットを隠した。

「こ、これはつけてないとエマが怒るからであって!」

「私がどうかしたの? オリヴィアちゃん」

 すると背後からエマに声を掛けられた。

「今別にあんたの事呼んだわけではないんだけれど!?
てか何でいるのよ!?」

 いつの間にかエマが母の部屋に入って来ていたのだ。

「わー! このハイヒールすっごく可愛らしいわ!!」
「でしょでしょ!? オリヴィアに似合うと思ってー♡」

「いや人の話聞いてよ」

 そして何やらエマと母の2人で勝手に盛り上がり始める。

 前から薄々思っていたけど、この2人多分相性が良いと思う。波長が合うというか、ノリが近いというか。

「ほら、エマちゃんもプレゼント渡しちゃって!」
「えへへ、えーと、オリヴィアちゃん!
どうぞ受けって下さい!」

「え? あ、ありがとう」

 結局何故エマがここに来たのか分からないまま私はエマから少し大きめの箱を受け取る。

「早速開けて見て欲しいわ!」

「はいはい……て、これ、まさか!」

 箱の中にはなんとも可愛らしいドレスが入っていた。

「あら、私のあげたハイヒールと合いそうね!」
「ねえオリヴィアちゃん!
この際だから着てみて欲しいわ!」

「まさか2人ともグル?」

 ハイヒールもドレスも別のお店のものらしいが、確かに合いそうな組み合わせである。

 これは狙ったとしか思えないのだが。

「やーね、オリヴィアったら!
確かに私はハイヒールでエマちゃんはドレスをプレゼントしようとは言ったけど、別々に買ってきたのよ?」

「そうよ! オリヴィアちゃんが喜びそうなものを買ってきたの!」

「あー、そうなのね……」

 やはりこの2人似ている気がする。

 実はこの2人が本当の親子ですなんて言われても信じてしまいそうだ。

 それは兎も角、着るのは流石に恥ずかしい……。

「ありがたく受け取るけど、着るのはまたいつかの機会で……」

 と私はそそくさと部屋を出ようとするも、母とエマに腕をがっしりと掴まれた。

「あら~折角渡したんだもの。
母さん、ちょっとくらい着てるところみたいわ」
「そうよオリヴィアちゃん!
安心して! 絶対可愛いから!」

「え? いや、あの?」

「ふふふ♡」

 その後、母により無理矢理着替えさせられてしまった。

 因みにエマは私がもし逃げ出そうとした時捕獲する為(本当は生着替えを見て倒れるといけないから)という理由で廊下で待っていた。
 
 私が着替え終わると、母がエマに声をかけて部屋へと招く。

「キャー! 可愛らしいわオリヴィアちゃん!♡」
「我が娘ながら本当に可愛いわね!
着せ替え甲斐があるわ!」

 こうして私はパステルパープルのドレスに白いハイヒールというなんとも可愛らしい格好をさせられた。

 因みに私が嫌いなフリフリはそんなについていない。そこはありがたいのだが。

 ブレスレットだけならまだしも、こうも全身可愛らしくされると、何とも気恥ずかしい。

「あの、一回着たんだし、もう脱いでもいいかしら?」
「「えぇーー!?」」

 すると、2人揃って不満そうな顔をする。

「いや、そもそも今日私誕生日なんだし、私が無理する必要無いというか!」
「でもオリヴィア、あんた本当はそういう格好したいんでしょ?」

 母はさも当然の様にそう言ってきた。

 何故バレてるんだ。やはり母親というものは子供の考えはお見通しなのだろうか。

「オリヴィアちゃんの誕生日なんだもの、オリヴィアちゃんが好きな格好がいいとは思うんだけどね!」

 エマも何やら追い討ちをかけてくる。

「まあオリヴィアが仕方なく着せられているという体でいきたいならそれでもいいんだけど?」

「……はぁ。
もういいわよ。もう一回着替えるのも面倒だし、今日一日はこの格好でいるわ……」

 私のこの発言を聞いて、母とエマはやったー! とハイタッチしだした。

 やっぱりこの2人グルだったろと思う。

 それから私とエマは母の部屋を後にした。

「オリヴィアちゃん! 今日は沢山遊んでいっぱい思い出作りましょう♡」

「私普通に読書しようと思ってたわ」

「ええ!? そんな! せっかくの誕生日なのに!」

 私が部屋に戻ろうとするとエマに引き留められる。

 そこに、メアリーが私の名前を呼んでこちらへと向かってきた。

「あ、オリヴィアお嬢様、ちょうど探していたんですよ。お客様がお見えですよ」

「え? 客?」

「はい。ルイス様とシーラ様とアデック王子がいらしてます」

「え? アデック王子まで?
というか私その3人の誰にも誕生日なんて教えていないのに!?」

 一体どこから情報を仕入れたのだろうか?

 しかし待たせるのも悪い為、私とエマは客間へと向かった。

「というか、エマまで何で着いて来てるのよ?」

「だってルイス様がいると聞いたら、流石にオリヴィアちゃん1人に出来ないわ!」

「いや、向こうも3人で来てるのだから、別に大丈夫だと思うけど」

 しかしエマも引き下がりそうにないので、仕方なく2人で客間へとやって来た。

「やあルーカス様にノア君。
俺は今日オリヴィア様の誕生日と聞いて訪ねた訳で、君たちに用はないんだが?
特にノア君、君にはね」

「いやですね、今日は誕生会も開いてないし招待状だって出てないでしょう?」

 案の定ノアとルイスが既にいがみ合っていた。

「ルイス、ノア君にそう毎度突っかかるのはやめなさい」

「ノアも変に挑発するな。お客様だぞ?」

 そして上2人に叱られている。

 こうして見るとシーラやルーカスはきちんとしてるんだなと思う。

「あ、オリヴィアー! 誕生日おめでとう!」

 そしてこの中で一番最年長の王子であるアデックは私を見るなりすぐそう言ってきた。

「アデック王子! 俺の方が先に言いたかったのに!」
「え? そうだったのか? なんかごめんな?」

 謝ってる割にアデックは全く気にしていなさそうである。

「オリヴィア様! お誕生日おめでとう!」
「お誕生日おめでとうございます、オリヴィア様」

 それから気を取り直してルイスと、それからシーラもそう言ってきた。

「アデック王子にルイス様にシーラ様、ありがとうございます。
あと、何故今日が誕生日だと分かったんですか?」

「まあ一国の王子が一人の貴族の誕生日を調べるなんて朝飯前だからな?」

 私の質問にアデックはそうしたり顔で答える。

「職権乱用では?」

 こうも容易く情報が手に入れられると、王子というのも中々便利なものだなと思ってしまう。

「ところでオリヴィア様! 今日の衣装も一段と可愛らしくて似合ってるね」

「おー、いつもと違う感じだな。良いんじゃないか?」

「え? あ、どうもありがとうございます」

 ルイスとアデックにそう褒められてなんとなく気恥ずかしく感じる。

 例えお世辞だとしても少し嬉しい。

「オリヴィア姉様、とってもお似合いですよ。可愛らしいですね♪」
「オリヴィア様、普段の格好も素敵だが今日は一段と可愛いぞ!」
「ふふん! 私が選んでプレゼントしたドレスだもの! 似合わない筈がないわ!」

「はいはい、ありがとう」

 恥ずかしくなるのでもうあまり褒めないで欲しい。


 しかしまあ、客間にこうも人がいると中々騒がしいなと思う。

「じゃあ早速プレゼントだが」

 そう言ってアデックが包みを取り出すと、横から他の男性陣がガヤを入れて来た。

「俺が先に渡します!」
「いや、ここは俺が!」
「僕ですよ!」
「みんな、喧嘩は駄目ですよ!」

「誰から先でも別にいいわよ」

 私は半ば呆れつつ答えた。

 それから結局じゃんけんで渡す順番が決められたのだった。
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