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流石ですわね。

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 そして3人で会場に戻ると、ちょうどルーカスとシーラに出会った。

「あら? 3人とも何処かへ行っていたの?」

 シーラにそう尋ねられ、ノアがそれに答える。

「シーラお嬢様、やはりルイス様はオリヴィア姉様の事を狙っている様です。
ルイス様がオリヴィア姉様を好きなことは仕方ないですが、僕としては気が気でないです」

 そうノアは困った様に話す。

 シーラはそれを聞いて、そちらも困った様に言う。

「あらそうなのね、分かったわ。
私もルイスが変な動きをしない様に見張っておくわ」

 ルイスはどうやら実の姉であるシーラにまで信用されていないらしい。

 まあ身から出た錆とは言え、少し可哀想かもなと思ってしまう。

「それにしても、オリヴィア様は流石ですわね。色んな人を虜にしてしまうなんて」

 それは褒めてるのか嫌味なのだろうか?

「あ、えーと、ありがとうございます」

 どちらにしろ私には嬉しくない言葉なのだが。

「オリヴィア様、少しだけ2人で話したいのだけれど、いいかしら?」

 そうシーラに言われ、私はシーラの後をついていく。

 何となく、ルーカスが心配そうな顔をしている。

 何かあったのだろうか?

 私は会場からまた離れて、テラスの方へと案内された。

 夜風が頬に当たり気持ちがいい。

「ふふ、オリヴィア様。
少し恋話しない?」

 そういきなり言われて私は困惑する。

「恋話ですか?」

「ええ。
ノア君とはどうなのかなって思って」

 そうニコニコと聞いてくる。

 ハンネル姉弟はどうしてこうも私とノアの関係を深掘りしようとするんだか。

「どうと言われても、普通だと思います」

「普通って?」

 うぅっと私は言葉が詰まる。

 そもそも付き合っていないし、男性と付き合った事もないから、付き合ってる男女の事なんて喋れる訳がない。

「えーと、普通に挨拶したり、一緒に勉強したり、それからー」

「それから?」

 シーラは目をキラキラさせながら聞いてくる。

「キスしたり……」

 頬にとはいえさっきやったし、嘘ではない、はず。

「まあ! お熱いんですね!」

 何故かそうシーラがはしゃぐ。
 こんな事聞いて何が楽しいんだろうか?

「はあ、羨ましいわ。
でも安心しました。ノア君と仲良くやれてる様ですね」

 成る程、シーラにとって私は恋敵なのだから、私がルーカス以外の男と仲良くしてくれてる方がありがたいということか。

 だからそんなにはしゃいでる訳ね。

「私もルーカス様とその様な関係になれたらいいのですが……」

 そう少し悲しそうに笑いながらシーラは言う。

 やはりルーカスと何かあったのだろう。

「あの、因みにこれは義姉のエマ……義姉様からの情報なんですけれど」

 そう私は落ち込み気味のシーラに話す。

「差し出がましいかもしれませんが、ルーカス義兄様は追いかけられるより追いかけたい派らしいですよ」

 それを聞いて、シーラは難しそうな顔をする。

「追いかけられるより追いかけたい……。
つまり、ガンガンアタックするよりも、待った方がいいという事かしら?」

 そう尋ねられ、私は頷く。

「多分、ぐいぐい行くのは逆効果かと」

「やっぱり、そうなんですね」

 私はそのシーラの反応にびっくりした。
 てっきり怒り出すかと思ったが、シーラも勘づいてはいたのか。

「しかしお恥ずかしながら、私ルーカス様の事となるとつい暴走してしまって……。
ルーカス様が困っているのは分かっているのに」

 そう悲しそうにシーラは話す。

 私は何と声をかけようか考えていると、先にシーラの方から話し出した。

「ルーカス様はモテるから、私も不安で仕方ないんです。
早く振り向かせて安心したいとそんな事ばかり考えてしまって……。

でもそれはただのエゴなんですよね。
これからは、もっとルーカス様の事を気遣っていこうと思います。

ありがとうございます、オリヴィア様」

 そうシーラは私に頭を下げる。

「いや、私としては2人に幸せになって欲しいと思っただけで、特に何もしていませんし」

 私はそう手を横に振って否定する。

 私としては、シーラとルーカスがくっついてくれた方がお屋敷でルーカスから猛アタックされる事もなくなるしそっちの方がありがたいなと思ってるなんて口が裂けても言えない。

 シーラは顔を上げると、心なしか晴れやかな笑顔になっていた。

「ではオリヴィア様、会場へ戻りましょうか」

「ええ」

 そしてシーラは会場へ戻ろうと後ろを向いたが、また何かを思い出した様にオリヴィアの方へ振り返った。

「そうそう、オリヴィア様、うちの弟のルイスに狙われてるんですって?」

「え?
ええ、まあそうらしいです」

 私は軽く答える。

「身内の事をこう言うのもアレだけれど、ルイスには気を付けてね」

 まさかシーラにまで気を付けろと言われるとは。

「あの、シーラ様から見てもルイス様はそういう感じなのですか?」

 私は失礼にならない様にぼかしながら話す。

「そうね…… 。

ルイスが何人かの女の子と揉めてるところなんかは見た事あるわ。
アレでも次期当主なのだから、しっかりして欲しいのだけれど」

 そう溜め息を吐きながらシーラは話す。

 次期当主、そう言えばルイスはこのハンネル家の長男なのか。

 ルーカスもそうだけれど、やはりプレッシャーもあるのだろう。

 その反抗心のせいで女遊びに走ったとしても、おかしくはなさそうだ。

 しかし、家族はそれに気づいてはいないのだろう。
 もしくは分かってて放置しているのか。

 何だか知れば知るほど、ルイスも可哀想に思えてくる。

 もしルイスがこの様な立場でなければ、もっと普通に恋愛をしていたのかもしれない。

 まあ、そんな事を推測したところで、私には関係ない話だが。

「じゃあ、今度こそ戻りましょうか」

 そう言って、シーラは私の先を歩き出した。

 私もそれについて行く。

 そして、会場に戻ったのだが、珍しくシーラはルーカスの元へは行かなかった。

 先程の私のアドバイスを聞いてのことだろうか?

 これがいい方向に転べばいいけれど、そう内心オリヴィアは願った。

 それからはシーラにプレゼントを渡し、誕生会は何事もなく幕を閉じた。
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