【完結】悪役令嬢だけど何故か義理の兄弟達から溺愛されてます！？

それを先に言って！

　そして、シーラの誕生会当日となった。

「え？
これ本当？」

　オリヴィアは馬車から降りて度肝を抜かれていた。

　なんと、目の前にそびえ立つハンネル家はおよそハワード家の2倍ほどの大きなお屋敷だったのだ。

「そりゃあ、オリヴィアちゃん、ハンネル家は簡単に言うと王室の親族ですもの」

　エマはオリヴィアにそう軽く説明する。

「そんな大事な事はもっと先に言って！」

　オリヴィアはエマに向かって叫んだ。

　何せオリヴィアとしてはシーラの事はただの一貴族としてしか見ていなかったのだ。

　というより、貴族の中のランクなど、詳しい事はあまり分かっていない。

「王室の親族って、ほぼ国のトップじゃない！？」

「オリヴィア姉様、ハンネル家って結構有名なのですが、ご存知なかったんですね」

　ノアにそう言われるが、そんなもの半年前まで普通の下町の娘だった私が知る訳もないだろう。

「知らないし聞いた事もないわよ」

「因みにオリヴィアちゃんが前に貰った茶葉も、各国から取り寄せた超一流の茶葉だったのよ？」

「え！？
そうなの！？」

　確かに高級そうな茶葉だと思っていたが、特に気にせず普通に飲んでいた。
　というか量が多かったので、エマにもお裾分けしたんだった。

　それならもっと大事に味わえば良かったと少し後悔する。

「こんな所に私来ても良かったのかしら……」

　と、今更ながら自信を無くしてきた。

　そもそも、さっきも言った様にこの間まで下町の娘だった私なんて、場違いに決まっているだろうに。

「まあまあオリヴィア姉様、招待されたのですから勿論大丈夫ですよ」

「そうよ、オリヴィアちゃん。
何かあったら私達がすぐ助けるわ！」

　ノアとエマは笑顔でそう言ってくれた。

　普段は鬱陶しいと思う2人だが、今日は何だか頼もしくみえる。

　一方、横にいるルーカスはずっと暗い顔のまま話に参加してこない。

「他人事だけれど、ルーカスあれで大丈夫なのかしら？」

　私はこっそりエマとノアに訊く。

「うーん、今年は特にやばそうね」
「まあ、婚約破棄してからは初のお呼ばれですからね」

　エマとノアも小声で答えながら心配そうにルーカスを眺める。

「でも当人達の問題だから、私達が口出しなんて出来ないし」
「まあ自分で蒔いた種なので、自分でどうにかするしかないですね」

　しかし、2人とも特にルーカスを助けるつもりは無いらしい。

「それもそうね」

　そしてもちろん私もルーカスを助けるつもりなど無かったのだった。

　そうして4人はハンネル家の執事に連れられ、屋敷の中へと案内された。

　入ってみたらやはりハワード家以上に広い。
　それに、飾られているもの全てが高級そうで、何だか落ち着かない。

「私、本当に場違いなところに来てしまった気がするわ……」

　ハワード家以上のお屋敷を見た事のないオリヴィアは目眩にかられそうになった。

「オリヴィアちゃん、安心して、私達も緊張してるのは同じよ」

　エマも本当に緊張しているのか、笑顔を少し引きつらせつつもオリヴィアをフォローする様にそう言った。

「オリヴィア姉様、何なら手でも繋ぎましょうか？」

　ノアはニコニコとそう言いながらわざとらしく手を差し出す。

「いや、流石に結構よ」

　私は即座にそれを断った。

　しかし、いつもの様な馬鹿なやり取りをしていたら少し緊張もほぐれた様な気がする。

　すると、後ろから声が聞こえてきた。

「ルーカス様ぁ！
それと他のみんなも来てくれてありがとう！」

　シーラはそう言いながらこちらへとやってくる。

　そしてすぐ様ルーカスの隣を確保する様に立った。

「あ、ああ。
シーラ様、お誕生日おめでとうございます」

　ルーカスはそう笑顔で言うものの、その笑顔は少し引き攣っている。

「ルーカス様、ありがとうございます」

　だがシーラはそんなルーカスのぎこちない笑顔に気がついていないのか物凄く嬉しそうである。

「おめでとうございます、シーラ様」
「シーラお嬢様、おめでとうございます」

　エマとノアもルーカスに続いてシーラへ祝福の言葉をかける。

「ふふ、2人ともありがとう」

「あ、シーラ様お誕生日おめでとうございます。
招待までして下さり、ありがとうございます」

　私もそうお礼と共に祝福の言葉を言った。

「来てくれてありがとう。
ゆっくりしていって下さいね」

　するとシーラはニコリとそう言ってくれた。

　しかしとてもじゃないけれど、こんな高級そうな所でゆっくり出来そうもない。

「あ、そうそう、ルーカス様に是非見て欲しいものがあるんです！」

　シーラはそう言うとルーカスの腕を掴み奥へと歩いていく。
　ルーカスも動揺しつつも言われるがままについていった。

「……大変そうね」
「「同じく」」

　私の率直な感想に、残った2人も同意した。




　それから私達残された3人は執事にそのまま案内されて中央の立食広場へとやって来た。

　するとそこには、既に沢山の人が集まっていた。

「うわ、本当に社交界並みに人が来るのね」

「まあ、王室も関わってますしね。
色んな国のお偉いさんとかも来てますよ」

　ノアにそう説明されて私は聞かなければ良かったと若干後悔した。

　知れば知るほど、どんどん胃が痛くなる。

　なるべく大人しくしておこう。
　変な事件とかに巻き込まれなければいいけれど。

「プレゼントは後で渡す機会があるから、それまではゆっくりしましょ。
オリヴィアちゃんは何か食べる？」

「あ、オリヴィア様！」

　エマが提案する最中、私は後ろから呼び止められて振り向くと、そこには少し遠くから手を振っているルイスの姿があった。

「「でやがった……」」

　それを見るなりエマとノアが小声で舌打ちする。

　これはどうやら絶対面倒臭い事になるなと私はすぐ様察した。