1 / 328
初めましてのご挨拶
しおりを挟む
どうやら、今日から私は貴族の仲間入りとなる様です。
そんな風に自分の事なのに何処か他人事の様に私は考えていた。
正直言って、この名門ハワード家の門を潜るまでは、まるでその事実が信じられなかったのだ。
私の名前は、今日からオリヴィア・ハワードとなる。
ずっと下町で育ってきた私にとって、このお屋敷はまるで雲の上の様な存在だった。
それが今目の前にあるだなんて。
「オリヴィア、今日からここが私たちのお家になるのよ」
母はそう言って私に笑ってみせたが、しかしその笑顔は少し引き攣っており、私の右手を握っている母の左手は少し震えて汗が滲んでいた。
恐らく緊張しているのだろう。
そんな緊張している母を見て、私は逆に自分がしっかりしなくてはと決意する。
それから、私達親子は執事にお屋敷の中へと案内されて、なんだかよく分からない大きな部屋へとやってきていた。
そこには新聞でしか見た事のないハワード男爵と、なんとも顔面偏差値の高い3人の子供達が並んで立っている。
「やあ、愛しのイザベラ、それとオリヴィアお嬢ちゃん」
そう言って、ハワード男爵は母の手の甲に口付けをした。
「あの、子供達も見てるから、ね?」
母は照れているのか赤面していた。
そんな2人を見て私は横であーあ、お熱い事でとボソリと呟く。
恐らく2人には聞こえていないだろう。
「初めまして、オリヴィアちゃん。
私が今日から君の父となるジョン・ハワードだ。
何か困ったことがあったらいつでも声をかけてくれて構わないよ。
それと、こちらが今日から君の兄弟となる私の娘と息子達だ。
さあ、自己紹介を」
ハワード男爵がそう言うと、ハワード男爵の横にいた3人が私の目の前へとやってきた。
右から
「ルーカス・ハワードだ。
よろしく、オリヴィアお嬢様」
私より2つ上の16歳で義理の兄となる。
真ん中からは
「初めまして、オリヴィアちゃん!
エマ・ハワードよ」
年は私と同い年の14歳なのだが、2ヶ月程誕生日が私より早い為私の義理の姉となる。
そして左からは
「初めまして、オリヴィアお姉さん。
ノア・ハワードと申します」
こちらは私より1つ下の13歳で義理の弟となる。
3人はそう言って簡単に挨拶を済ませた。
何というか、近くで見ると誰も彼も美形揃いで血筋とは凄いなと改めて思う。
よろしくね。と、エマと名乗った少女が笑顔でこちらに右手を差し出してきた。
しかし、私はそれをバシッと弾く。
「オリヴィア! 何してるの!?」
後ろから母の怒る声が聞こえてくるが、そんなもの私には関係ない。
母の再婚は素直に嬉しかった。
母は父を亡くしてから私の為に昼も夜もずっと働いてばかりいたから、母が幸せになれるのならそれでと良いと思っていた。
しかし、あくまで私は母さえ幸せであればいいという考えだ。
私は別に貴族達と馴れ合おうだなんて思ってなどいない。
母はきっと、働きに出ている間、私があの下町で一人家を守っていた事を知らないのだろう。
家に子供一人しかいないと分かった汚い大人達は私を誘拐しようとしたり、家のものを盗もうとしたりと企て、あの手この手で私に擦り寄ってきた。
自分の子供を手先に使う親だっていた。
人の好意には裏がある。
それは例え貴族の子供達だって同じだろう。
この3人だって、今は父であるハワード男爵や私の母がいる手前優しくしているだけで、裏で私を下町から来た卑しい娘と虐めてくる可能性だってある。
それなら最初から堂々と孤立した方がいい。
「私、あなた達と仲良くなりたいなんて思ってないから。
放っておいて」
「オリヴィア! 謝りなさい!」
そう怒る母を、まあまあとハワード男爵がなだめた。
「オリヴィアちゃんも多感な時期だし、すぐには色々と受け入れられないだろう」
そしてハワード男爵は私に怒るでもなく、にっこりと笑いかける。
「ここまで来るのに馬車で揺られて疲れたろう?
メイドに部屋まで案内させるから、少し休むかい?」
そして恐らく私に気を遣ってそう提案してくれた。
私はまだハワード男爵の事も信じきってはいないが、今のこの気まずい状況でそれはありがたい助け舟だった。
「是非そうさせて下さい」
私がそう返事をすると、1人のメイドがやって来て私をこれから私の自室となるであろう部屋へと案内してくれた。
案内された部屋は、部屋の面積だけで前に住んでいた下町の家の面積と同じくらいあって私は思わずびっくりしてしまう。
「セレブのお部屋って本当に広いのね」
私はふぅ、とベッドに腰を下ろした。
そして先程の光景を思い出す。
手を弾かれたエマは少し目を潤ませていた。
それに、他の兄弟も驚いた表情でこちらを見ていた。
恐らく今まで人に嫌われたこともないのだろう。
余程甘やかされて育ってるに違いないと私は勝手に決めつけた。
「私は悪くないわ。
自分の身は自分で守るしかないもの」
でも、少し悪いことしたかな……と、ほんのちょっぴり私の良心が痛んだ。
そんな風に自分の事なのに何処か他人事の様に私は考えていた。
正直言って、この名門ハワード家の門を潜るまでは、まるでその事実が信じられなかったのだ。
私の名前は、今日からオリヴィア・ハワードとなる。
ずっと下町で育ってきた私にとって、このお屋敷はまるで雲の上の様な存在だった。
それが今目の前にあるだなんて。
「オリヴィア、今日からここが私たちのお家になるのよ」
母はそう言って私に笑ってみせたが、しかしその笑顔は少し引き攣っており、私の右手を握っている母の左手は少し震えて汗が滲んでいた。
恐らく緊張しているのだろう。
そんな緊張している母を見て、私は逆に自分がしっかりしなくてはと決意する。
それから、私達親子は執事にお屋敷の中へと案内されて、なんだかよく分からない大きな部屋へとやってきていた。
そこには新聞でしか見た事のないハワード男爵と、なんとも顔面偏差値の高い3人の子供達が並んで立っている。
「やあ、愛しのイザベラ、それとオリヴィアお嬢ちゃん」
そう言って、ハワード男爵は母の手の甲に口付けをした。
「あの、子供達も見てるから、ね?」
母は照れているのか赤面していた。
そんな2人を見て私は横であーあ、お熱い事でとボソリと呟く。
恐らく2人には聞こえていないだろう。
「初めまして、オリヴィアちゃん。
私が今日から君の父となるジョン・ハワードだ。
何か困ったことがあったらいつでも声をかけてくれて構わないよ。
それと、こちらが今日から君の兄弟となる私の娘と息子達だ。
さあ、自己紹介を」
ハワード男爵がそう言うと、ハワード男爵の横にいた3人が私の目の前へとやってきた。
右から
「ルーカス・ハワードだ。
よろしく、オリヴィアお嬢様」
私より2つ上の16歳で義理の兄となる。
真ん中からは
「初めまして、オリヴィアちゃん!
エマ・ハワードよ」
年は私と同い年の14歳なのだが、2ヶ月程誕生日が私より早い為私の義理の姉となる。
そして左からは
「初めまして、オリヴィアお姉さん。
ノア・ハワードと申します」
こちらは私より1つ下の13歳で義理の弟となる。
3人はそう言って簡単に挨拶を済ませた。
何というか、近くで見ると誰も彼も美形揃いで血筋とは凄いなと改めて思う。
よろしくね。と、エマと名乗った少女が笑顔でこちらに右手を差し出してきた。
しかし、私はそれをバシッと弾く。
「オリヴィア! 何してるの!?」
後ろから母の怒る声が聞こえてくるが、そんなもの私には関係ない。
母の再婚は素直に嬉しかった。
母は父を亡くしてから私の為に昼も夜もずっと働いてばかりいたから、母が幸せになれるのならそれでと良いと思っていた。
しかし、あくまで私は母さえ幸せであればいいという考えだ。
私は別に貴族達と馴れ合おうだなんて思ってなどいない。
母はきっと、働きに出ている間、私があの下町で一人家を守っていた事を知らないのだろう。
家に子供一人しかいないと分かった汚い大人達は私を誘拐しようとしたり、家のものを盗もうとしたりと企て、あの手この手で私に擦り寄ってきた。
自分の子供を手先に使う親だっていた。
人の好意には裏がある。
それは例え貴族の子供達だって同じだろう。
この3人だって、今は父であるハワード男爵や私の母がいる手前優しくしているだけで、裏で私を下町から来た卑しい娘と虐めてくる可能性だってある。
それなら最初から堂々と孤立した方がいい。
「私、あなた達と仲良くなりたいなんて思ってないから。
放っておいて」
「オリヴィア! 謝りなさい!」
そう怒る母を、まあまあとハワード男爵がなだめた。
「オリヴィアちゃんも多感な時期だし、すぐには色々と受け入れられないだろう」
そしてハワード男爵は私に怒るでもなく、にっこりと笑いかける。
「ここまで来るのに馬車で揺られて疲れたろう?
メイドに部屋まで案内させるから、少し休むかい?」
そして恐らく私に気を遣ってそう提案してくれた。
私はまだハワード男爵の事も信じきってはいないが、今のこの気まずい状況でそれはありがたい助け舟だった。
「是非そうさせて下さい」
私がそう返事をすると、1人のメイドがやって来て私をこれから私の自室となるであろう部屋へと案内してくれた。
案内された部屋は、部屋の面積だけで前に住んでいた下町の家の面積と同じくらいあって私は思わずびっくりしてしまう。
「セレブのお部屋って本当に広いのね」
私はふぅ、とベッドに腰を下ろした。
そして先程の光景を思い出す。
手を弾かれたエマは少し目を潤ませていた。
それに、他の兄弟も驚いた表情でこちらを見ていた。
恐らく今まで人に嫌われたこともないのだろう。
余程甘やかされて育ってるに違いないと私は勝手に決めつけた。
「私は悪くないわ。
自分の身は自分で守るしかないもの」
でも、少し悪いことしたかな……と、ほんのちょっぴり私の良心が痛んだ。
12
お気に入りに追加
531
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。
黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。
差出人は幼馴染。
手紙には絶縁状と書かれている。
手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。
いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。
そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……?
そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。
しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。
どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。

人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる