上 下
12 / 33

第12話

しおりを挟む
「それじゃあアンドリューの知り合いに頼みに行きましょうか」

 私がそう言うと、アンドリューは少し考え始めた。

「あー、あんたは会わない方がいいかも」

 レイラは何のことだと一瞬考えるも、すぐに答えが出てきた。

「つまり、私を大嫌いな人が沢山いるという訳ね?」

 私がそう尋ねると、アンドリューは答える。

「まあな。言ったろ?あんたを殺したがってる人は五万といると。
しかしあんたを会わせると他の奴らに殺されかねない」

 それを聞いてレイラはふふっと笑った。

「私の心配をしてくれるのね?」

「俺があんたを殺すって決めてるのに、横取りされる訳にはいかないからだ!」

 アンドリューは睨みながら答える。

「はいはい、分かってるわよ。
それでどうするの?」

 私が尋ねると、アンドリューは仕方なく私の腕を掴んでまた路地の方へと引き返した。

 そしてまたロープで私の手足を縛り、小屋の中に入れられる。

「ドアは閉めておくから、逃げんじゃねーぞ」

 そう言ってアンドリューは去っていった。

「さて、この間私は暇だし、この後の事を考えようかしら?」

 ふと足に縛られたロープを見ると、一箇所劣化のせいか切れかかっていた。

「……
まあロープ外しても逃げなきゃ問題ないか」

 私は足の所に顔を近づけてロープを思いっきり噛む。

 そして切れかかっていた所の横から思いっきりロープを引っ張った。

 するとブチブチッとロープが切れる音がした。

 それから足を動かして少しずつロープを解いていく。

「ふー、足が自由になったわ」

 それから私は棚を物色する。

(お、これは……)

 私は棚からナイフを頑張って取り出す。
 後ろで腕が結ばれてるせいでナイフが取りづらい。

「痛っ!」

 取るとき少し指を切ってしまったが、まあ仕方ない。

 私は小屋の床の溝に何とかナイフを固定して、腕のロープを少しずつ切っていく。

 といっても後ろが見えないせいで、凄く難しい。

 結局、ロープが切れた頃には腕にあちこち切り傷が出来ていた。

 放っておいて雑菌が入るのもいやなので、小屋の蛇口を捻る。

 幸いちゃんと水が出てきてくれた。

 私は傷を水で洗い、ついでに喉が乾いていたのでその水を飲む。

 コップなどないので、自身の手で汲んで少しずつしか飲めないのが難点だ。

 手足の自由を取り戻し、私は小屋の中を見回す。

 一応トイレはあるし申し訳程度のキッチンもある。使われてはいなさそうだが。

 流石にお風呂は残念ながらない。

 それから棚があるくらいで、後は特に何もない。

 アンドリュー1人でここに住んでたのだろう。

「アンドリューのご両親はどうなったのかしら……」

 私に両親の仇と言っていたことから、恐らくもう他界しているのだろう。

 聞いてみたいが、それで思い出して逆上されて刺されたりしたら大変だ。

「はあ、誤解はいつか解けるかしら」

 誤解と言えば、とふと思い出す。

 私を悪女に仕立て上げたブラウン家は、どうする気でいるのだろう?

 もし私の追放を隠蔽して、私の悪事をまた捏造するつもりなら、私も証拠を揃えて訴えるのも手だ。

 それに税金の問題も、結局はこの街を管轄しているブラウン家には接触しなくてはならない。

 しかし私が居ない手前また簡単に捏造も出来ないだろうけれど。

 ユーリにとってそこは頭が痛い所だろう。

「今頃ユーリはどうしてるのかしらね?」
 
 私はふふっと笑った。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された悪役令嬢が処刑を回避するためにモブ男の力を使う

岡暁舟
恋愛
悪役令嬢のレッテルを貼られてしまったソフィアが処刑を回避するためには???

トカゲ令嬢とバカにされて聖女候補から外され辺境に追放されましたが、トカゲではなく龍でした。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。  リバコーン公爵家の長女ソフィアは、全貴族令嬢10人の1人の聖獣持ちに選ばれたが、その聖獣がこれまで誰も持ったことのない小さく弱々しいトカゲでしかなかった。それに比べて側室から生まれた妹は有名な聖獣スフィンクスが従魔となった。他にもグリフォンやペガサス、ワイバーンなどの実力も名声もある従魔を従える聖女がいた。リバコーン公爵家の名誉を重んじる父親は、ソフィアを正室の領地に追いやり第13王子との婚約も辞退しようとしたのだが……  王立聖女学園、そこは爵位を無視した弱肉強食の競争社会。だがどれだけ努力しようとも神の気紛れで全てが決められてしまう。まず従魔が得られるかどうかで貴族令嬢に残れるかどうかが決まってしまう。

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

妹の陰謀で追放された伯爵令嬢は隣国王子に溺愛される

克全
恋愛
「かくよむ」と「小説家になろう」にも投稿しています。妹のミーアと婚約者だった王太子のアンドレアに陥れられた伯爵令嬢パオラは国外追放されただけでなく、二人から刺客を放たれ殺されそうになっていた。そこに騎士を名乗るエドに助けられるが、実はエドはマネル王国の王太子で、運命の女性をさがしていたのだ。

異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪に婚約を破棄し追放刑とする」王太子は冷酷非情に言い放った。モドイド公爵家長女のシャロンは、半妹ジェスナに陥れられた。いや、家族全員に裏切られた。シャロンは先妻ロージーの子供だったが、ロージーはモドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていた。本当ならシャロンも殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。王太子だった第一王子ウイケルの婚約者にジェスナが、第二王子のエドワドにはシャロンが婚約者に選ばれていた。ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。どうしても王妃に成りたかったジェスナは、身体を張ってエドワドを籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせた。

(完結)妹に婚約者を譲れと言われた。まあ、色ボケ婚約者だったので構わないのですが、このままでは先が不安なので、私は他国へ逃げます

にがりの少なかった豆腐
恋愛
※後半に追加していた閑話を本来の位置へ移動させました ―――――――――― 私の婚約が正式に決まる前日の夜。何かにつけて私の物を欲しがる妹が私の婚約者が欲しいと言い放った。 さすがに婚約について私がどうこう言う権利はないので、私に言われても無理と返す。 しかし、要領がいい妹は何をしたのか、私から婚約者を奪うことに成功してしまった。 元より婚約に乗り気でなかった私は内面では喜びで溢れていた。何せ相手は色ボケで有名な第2王子だったのだから。 そして、第2王子と妹の婚約が正式に発表された後、私に関する根も葉もない悪い噂が流れ始めました。 このままでは、私がこの国で暮していけばどうあっても先は暗いでしょう。親も助ける気は無いようですし、ならばさっさとどこかへ逃げ出した方が良いかもしれませんね。 そうして私は他国の知人を頼りに、人知れず国を出ることにしました。 ※この世界には魔法が存在します ※人物紹介を追加しました。

愚者(バカ)は不要ですから、お好きになさって?

海野真珠
恋愛
「ついにアレは捨てられたか」嘲笑を隠さない言葉は、一体誰が発したのか。 「救いようがないな」救う気もないが、と漏れた本音。 「早く消えればよろしいのですわ」コレでやっと解放されるのですもの。 「女神の承認が下りたか」白銀に輝く光が降り注ぐ。

妹よりも劣っていると指摘され、ついでに婚約破棄までされた私は修行の旅に出ます

キョウキョウ
恋愛
 回復魔法を得意としている、姉妹の貴族令嬢が居た。  姉のマリアンヌと、妹のルイーゼ。  マクシミリアン王子は、姉のマリアンヌと婚約関係を結んでおり、妹のルイーゼとも面識があった。  ある日、妹のルイーゼが回復魔法で怪我人を治療している場面に遭遇したマクシミリアン王子。それを見て、姉のマリアンヌよりも能力が高いと思った彼は、今の婚約関係を破棄しようと思い立った。  優秀な妹の方が、婚約者に相応しいと考えたから。自分のパートナーは優秀な人物であるべきだと、そう思っていた。  マクシミリアン王子は、大きな勘違いをしていた。見た目が派手な魔法を扱っていたから、ルイーゼの事を優秀な魔法使いだと思い込んでいたのだ。それに比べて、マリアンヌの魔法は地味だった。  しかし実際は、マリアンヌの回復魔法のほうが効果が高い。それは、見た目では分からない実力。回復魔法についての知識がなければ、分からないこと。ルイーゼよりもマリアンヌに任せたほうが確実で、完璧に治る。  だが、それを知らないマクシミリアン王子は、マリアンヌではなくルイーゼを選んだ。  婚約を破棄されたマリアンヌは、もっと魔法の腕を磨くため修行の旅に出ることにした。国を離れて、まだ見ぬ世界へ飛び込んでいく。  マリアンヌが居なくなってから、マクシミリアン王子は後悔することになる。その事実に気付くのは、マリアンヌが居なくなってしばらく経ってから。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...