2 / 33
第2話
しおりを挟む
「いい考え?」
私はユーリの顔を訝しげに見る。
「お姉様にとってもいい提案なんですよ」
そうユーリは天使の様に微笑んだ。
私は背中がゾクゾクとする。
恐らく100%良い提案な訳がない。
「お姉様、因みに断ったら、また窓を割ってお姉様のせいにしても良いんですよ?」
そう可愛らしい笑顔のままユーリは脅してくる。
本当に、何でこんな悪女の正体がみんな分からないのだろう?
「はあ、分かったわよ、提案を飲めばいいんでしょ?」
そう言って私は妹の提案を聞いた。
それから少し時は過ぎ、私の16歳の誕生日になった。
勿論、私の誕生パーティーに婚約者のダニエルもユーリの婚約者のウィリアムも屋敷に来ていた。
それもそのはず、この誕生パーティーは私の結婚式も兼ねているからである。
そして、本来の予定ならば、私はボンド家へ今日嫁ぐ予定となっていた。
恐らく、それはそうならないだろうけれど。
案の定、ユーリの提案というものは私にとって良くないものだった。
それは。
「私、やっぱり結婚したくないです」
私が父と母に当日になって怖気つくという、馬鹿みたいな作戦だからである。
「何を言ってるのよレイラ、貴女には勿体ない様な方なのよ?
それを断るなんて!」
そう母が癇癪を起こし始めた。
「そうだぞ!レイラ、お前は何を言っているんだ!
冗談でもそんな事言うんじゃない!」
そう父も激昂しだす。
一方、ダニエルやウィリアムを始め、他の客もざわついている。
一応、ユーリ曰くダニエルもフォローしてくれるという話だったのだが。
「そんな、急に当日に言われましても困ります」
そうダニエルはおろおろし始めた。
あれ?本来なら自分も結婚出来ないと賛同する予定では?
私はふとユーリの方を見やる。
ユーリはまるで天使の様に私に微笑んだ。
しかし、私にはその顔が悪魔に見えた。
騙された。
客人の中にも私の意見に同情する様な人を連れてくると言っていたが、それも嘘だろう。
そもそも、ユーリはダニエルと付き合ってなどいない。
なら何故こんな事を言い出したのか?
ダニエルを奪う為?
それとも、私を蹴落とす為?
ふと、ユーリのお願いを思い出す。
「お姉様と私の立場を交換して欲しい」
それは、文字通りそういう事だったのか。
恐らく、ここには私の味方はいない。
みんなユーリの味方だ。
ここで私がユーリの悪行を言った所で、誰も信じてはくれない。
それどころか、火に油を注ぐだろう。
では前言撤回するか?
いや、もうこんな大勢の前で言ってしまった以上、引くに引けない。
つまり、私の人生は終わったと言う訳か。
「あーあ、もううんざり!」
私はそうみんなに聞こえる様に叫んだ。
これには流石のユーリもびっくりしたのか、目を丸くしている。
しかし、もう私にとっては全てどうでも良かった。
私はユーリの顔を訝しげに見る。
「お姉様にとってもいい提案なんですよ」
そうユーリは天使の様に微笑んだ。
私は背中がゾクゾクとする。
恐らく100%良い提案な訳がない。
「お姉様、因みに断ったら、また窓を割ってお姉様のせいにしても良いんですよ?」
そう可愛らしい笑顔のままユーリは脅してくる。
本当に、何でこんな悪女の正体がみんな分からないのだろう?
「はあ、分かったわよ、提案を飲めばいいんでしょ?」
そう言って私は妹の提案を聞いた。
それから少し時は過ぎ、私の16歳の誕生日になった。
勿論、私の誕生パーティーに婚約者のダニエルもユーリの婚約者のウィリアムも屋敷に来ていた。
それもそのはず、この誕生パーティーは私の結婚式も兼ねているからである。
そして、本来の予定ならば、私はボンド家へ今日嫁ぐ予定となっていた。
恐らく、それはそうならないだろうけれど。
案の定、ユーリの提案というものは私にとって良くないものだった。
それは。
「私、やっぱり結婚したくないです」
私が父と母に当日になって怖気つくという、馬鹿みたいな作戦だからである。
「何を言ってるのよレイラ、貴女には勿体ない様な方なのよ?
それを断るなんて!」
そう母が癇癪を起こし始めた。
「そうだぞ!レイラ、お前は何を言っているんだ!
冗談でもそんな事言うんじゃない!」
そう父も激昂しだす。
一方、ダニエルやウィリアムを始め、他の客もざわついている。
一応、ユーリ曰くダニエルもフォローしてくれるという話だったのだが。
「そんな、急に当日に言われましても困ります」
そうダニエルはおろおろし始めた。
あれ?本来なら自分も結婚出来ないと賛同する予定では?
私はふとユーリの方を見やる。
ユーリはまるで天使の様に私に微笑んだ。
しかし、私にはその顔が悪魔に見えた。
騙された。
客人の中にも私の意見に同情する様な人を連れてくると言っていたが、それも嘘だろう。
そもそも、ユーリはダニエルと付き合ってなどいない。
なら何故こんな事を言い出したのか?
ダニエルを奪う為?
それとも、私を蹴落とす為?
ふと、ユーリのお願いを思い出す。
「お姉様と私の立場を交換して欲しい」
それは、文字通りそういう事だったのか。
恐らく、ここには私の味方はいない。
みんなユーリの味方だ。
ここで私がユーリの悪行を言った所で、誰も信じてはくれない。
それどころか、火に油を注ぐだろう。
では前言撤回するか?
いや、もうこんな大勢の前で言ってしまった以上、引くに引けない。
つまり、私の人生は終わったと言う訳か。
「あーあ、もううんざり!」
私はそうみんなに聞こえる様に叫んだ。
これには流石のユーリもびっくりしたのか、目を丸くしている。
しかし、もう私にとっては全てどうでも良かった。
58
お気に入りに追加
2,614
あなたにおすすめの小説
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?
との
恋愛
「取り替えっこしようね」
またいつもの妹の我儘がはじまりました。
自分勝手な妹にも家族の横暴にも、もう我慢の限界!
逃げ出した先で素敵な出会いを経験しました。
幸せ掴みます。
筋肉ムキムキのオネエ様から一言・・。
「可愛いは正義なの!」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済み
R15は念の為・・
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
悪役令嬢だけど、私としては推しが見れたら十分なんですが?
榎夜
恋愛
私は『花の王子様』という乙女ゲームに転生した
しかも、悪役令嬢に。
いや、私の推しってさ、隠しキャラなのよね。
だから勝手にイチャついてて欲しいんだけど......
※題名変えました。なんか話と合ってないよねってずっと思ってて
婚約破棄された貧乏令嬢ですが、意外と有能なの知っていますか?~有能なので王子に求婚されちゃうかも!?~
榎夜
恋愛
「貧乏令嬢となんて誰が結婚するんだよ!」
そう言っていましたが、隣に他の令嬢を連れている時点でおかしいですわよね?
まぁ、私は貴方が居なくなったところで困りませんが.......貴方はどうなんでしょうね?
辺境伯令嬢が婚約破棄されたので、乳兄妹の守護騎士が激怒した。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
王太子の婚約者で辺境伯令嬢のキャロラインは王都の屋敷から王宮に呼び出された。王太子との大切な結婚の話だと言われたら、呼び出しに応じないわけにはいかなかった。
だがそこには、王太子の側に侍るトライオン伯爵家のエミリアがいた。
第一王子は男爵令嬢にご執心なようなので、国は私と第二王子にお任せください!
黒うさぎ
恋愛
公爵令嬢であるレイシアは、第一王子であるロイスの婚約者である。
しかし、ロイスはレイシアを邪険に扱うだけでなく、男爵令嬢であるメリーに入れ込んでいた。
レイシアにとって心安らぐのは、王城の庭園で第二王子であるリンドと語らう時間だけだった。
そんなある日、ついにロイスとの関係が終わりを迎える。
「レイシア、貴様との婚約を破棄する!」
第一王子は男爵令嬢にご執心なようなので、国は私と第二王子にお任せください!
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
聖女の力は使いたくありません!
三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。
ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの?
昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに!
どうしてこうなったのか、誰か教えて!
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる