幽霊探偵は男の娘⁉︎

本田ゆき

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第13話

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時は遡って、日曜日の朝9時頃。

俺はかなたに言われた通り、昨日犯人が出入りしていたというアパートまでやってきた。

「俺の言うこと信じて貰えられるかな…?」

「まあ、何とかなるだろ。」
不安がる俺とは逆に、かなたは呑気にそう答えた。

不安な気持ちでピンポンを押すも、反応が返ってこない。

「もしかしたら居ないのか?」

「なら、俺ちょっくら見てくるわ!」

するとかなたが部屋にすり抜けて入っていった。

こういう時、幽霊って便利だなと少し思う。

その後すぐにかなたはドアからまたすり抜けて戻ってきた。

「いるけど、警戒してるっぽい。
一応、声かけてみ。」

「警戒されてるのに大丈夫なのか?」

そう言いつつも、仕方ないのでドアをノックして声をかける。

「ごめんくださーい。
少しだけ、お話したいのですが。」

自分で言ってても胡散臭いが、他に言い回しが特に思いつかなかった。

すると、ガチャッと少しだけドアが開いた。

防犯用のドアガード越しに、お姉さんは顔を覗かせた。

「あなた、誰?」

「あ、えーと、神宮翔って言います。
実は、その、昨日不審な人がこの部屋を出入りしているのをたまたま見ちゃって…。」

俺がそういうと、お姉さんの顔は見る見る内に青ざめていった。

何か心当たりがあるのだろう。

「それで、この部屋に住んでる人に伝えようと来たんです。
俺から警察に言っても、子供の言うことだからと信じて貰えないかもしれないので。」

俺は真剣にお姉さんにそう告げた。

お姉さんは、部屋をすぐ様出てきた。

「君、かける君、だっけ?
それは本当なのよね?」

お姉さんがこちらを見つめながら問いかける。

「はい。間違いないです。
男の人がドアを何かで開けて、その後糸を使って外から中の鍵をかけたんです。」

「分かったわ、きっと、その男の人は、私の元カレだと思う。
警察に行こうか迷っていたけど、決心がついたわ。」

そして、お姉さん、もとい鈴木美穂さんは元カレに前から粘着されていたこと、今付き合ってる彼が容疑をかけられたことなど、教えてくれた。

「もっと早く警察に言っておけば良かった。まさか彼がこんな人だったなんて。」

お姉さんの話によると、その元カレの黒田幸雄は、一見真面目で、とても好青年だったと言う。しかし、付き合ってからはDVや束縛が酷く、1ヶ月で別れたとのことだ。

「しかしまあ、人は見かけによらないんだな。」
とかなたが呟いた。
普段女の姿をしているかなたが呟くと、なんだか説得力がある。

それから警察にお姉さんが事情を話し、警察も事を重く見てすぐ様お姉さんの部屋に向かってくれた。

警察としても、ただの空き巣ではないだろうと読んでいたらしい。

なんせ、1軒目から3軒目まで完璧に証拠を残さなかったのに、4軒目でこれ見よがしに指紋が出てくる時点で、話が少し出来すぎていたのだ。

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