幽霊探偵は男の娘⁉︎

本田ゆき

文字の大きさ
上 下
5 / 14

第5話

しおりを挟む
「なぁ、もう振り向いてもいいか?」

「ああ、いいぞ」

俺は母の持ってきた寝巻きに着替えていた。

「ったく、俺は男だからお前の裸なんて見てもなんとも思わないってーのによ。」

ぶつぶつ文句を垂れ流しながら男の娘は俺のところに振り向く。

俺はただでさえ男同士て裸の付き合いとか苦手なタイプなのに、180度どこからどう見ても女子に見える男子の目の前で着替えるのにはとても抵抗がある。

「ところでさ、早く読ませろよ、カノン」
「…は?」

男の娘は唐突にカノンを読みたがった。

いや、というか最初から読ませろと言っていたっけ?

「読ませろってせめて俺が先に読んでからにしろよ。」

俺が買ってきたカノンなんだ、もちろん俺が1番に読む権利があるはずだ。(母親から渡された金だけど。)

ところがこの男の娘は何言ってるんだ?と言うような顔をしている。

「俺、幽霊だから自分では漫画を持つことも開くことも出来ないんだけど。」

ふてぶてしく男の娘は俺に訴えかける、

「だから、お前が俺に読ませてくれって言ってんの!」

「え?」

それってつまり?

俺は勉強机の上にカノンをいつも以上に広げる。
そして俺が読んでいるすぐ横で男の娘も食い入る様にページを見つめていた。

読ませろって、そういうことか。

この光景って、教科書忘れた時に隣のやつと一緒に見るっていう、アレだよな。

1つの教科書を2人で見るやつ。

しかもあれっていつも以上に距離が近いから、相手が女子だった場合、なんか無意識にドキドキしたよな。

そんなことを頭の片隅に思い浮かべ、チラリと横から漫画を覗く男の娘を見遣る。

何というか、近いせいで長めのまつげとぱっちり二重、きめ細やかな肌に小さな唇と、何処をどうとっても美少女な横顔に、一気に俺は赤面してしまった。

やばい、今顔赤いのバレるのは嫌だ!
漫画に集中しよう!
俺はとっさに下を向いて漫画を見つめる

一方、見惚れられていた男の娘の方は、漫画に夢中で見られていたことも、それに対して赤面されていたことも何も気づかないのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

総務の黒川さんは袖をまくらない

八木山
ミステリー
僕は、総務の黒川さんが好きだ。 話も合うし、お酒の趣味も合う。 彼女のことを、もっと知りたい。 ・・・どうして、いつも長袖なんだ? ・僕(北野) 昏寧堂出版の中途社員。 経営企画室のサブリーダー。 30代、うかうかしていられないなと思っている ・黒川さん 昏寧堂出版の中途社員。 総務部のアイドル。 ギリギリ20代だが、思うところはある。 ・水樹 昏寧堂出版のプロパー社員。 社内をちょこまか動き回っており、何をするのが仕事なのかわからない。 僕と同い年だが、女性社員の熱い視線を集めている。 ・プロの人 その道のプロの人。 どこからともなく現れる有識者。 弊社のセキュリティはどうなってるんだ?

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

国民的ゲーム

乙魚
ミステリー
超短編ミステリーです。

さよならクッキー、もういない

二ノ宮明季
ミステリー
刑事の青年、阿部が出会った事件。そこには必ず鳥の姿があった。 人間のパーツが一つずつ見つかる事件の真相は――。 1話ずつの文字数は少な目。全14話ですが、総文字数は短編程度となります。

騙し屋のゲーム

鷹栖 透
ミステリー
祖父の土地を騙し取られた加藤明は、謎の相談屋・葛西史郎に救いを求める。葛西は、天才ハッカーの情報屋・後藤と組み、巧妙な罠で悪徳業者を破滅へと導く壮大な復讐劇が始まる。二転三転する騙し合い、張り巡らされた伏線、そして驚愕の結末!人間の欲望と欺瞞が渦巻く、葛西史郎シリーズ第一弾、心理サスペンスの傑作! あなたは、最後の最後まで騙される。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

シグナルグリーンの天使たち

ミステリー
一階は喫茶店。二階は大きな温室の園芸店。隣には一棟のアパート。 店主やアルバイトを中心に起こる、ゆるりとしたミステリィ。 ※第7回ホラー・ミステリー小説大賞にて奨励賞をいただきました  応援ありがとうございました! 全話統合PDFはこちら https://ashikamosei.booth.pm/items/5369613 長い話ですのでこちらの方が読みやすいかも

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

処理中です...