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2、俺のこと

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 俺は高宮隼たかみやしゅん
 16歳。
 宝部たからべ県立真城ましろみなみ南高等学校一年生。
 東北の宝部県真城市というところに住んでいる。
 一応県庁所在地。
 真城に県立高校は四つある。
 東西南北だけど、そのうち一番偏差値高い進学校が北高。
 以下西(元女子高)、東(工業課、農業科がある)と続き、最下位が我が南高だ。
 自分の名前さえ書ければ入れる……ていうわけでもないけど、俺も含めて半分はアッパラパーといううわさの学校だ。
 
 ま、俺は嫌いじゃないけどね。
 
 いい先生がそろってるし、何より家から近くて、更に、俺の第二の家である道場からも近い。
 家族は気に入らないみたいだが、通うのは俺だからな。(あと、市立の商業や工業、県立真城大付属校、看護科のある翔心女子、電子科が有名な精妙院、お嬢様学校で真城全男子あこがれの聖レティシア女学院、南高より悪名高い城西穏心館じょうさいおんじんかんとかモロモロある)
 
 部活はやってない。
 帰宅部だ。
 というのは、放課後は、ガキの頃からやってる古武道の道場に通ってるんだ。
 だから中学では「校外活動部」で、若先生(師匠)の奥さんの美弥子みやこさんが、活動報告書書いて学校に提出してくれていた。
 武道は「天法院流護法拳法てんぽういんりゅうごほうけんぽう」。
 
 修験道しゅげんどうという仏教と神道が混じったような伝統的な宗教がある。
 昔は日本中に修験道の聖地があり、山伏やまぶしとも呼ばれる修験者たちが修行していた。
 宝部県には宝部修験がいて、俺の住む真城市の神門山じんもんざん、県南の飛駒岳ひこまだけ六願寺市ろくがんじし千早根山ちはやねさんなどが修験の霊山として有名だ。
 
 そこの、主に神門修験じんもんしゅげんに伝えられたのが天法院流護法拳法――通称「三法拳さんぽうけん」だ。
 三法さんぽうというのは、素手の技の体系が「風法(投げ中心の体系)」「龍法(関節技や締め技中心の体系)」「雷法(打撃中心の体系)」の三系からできているからとか、代表的な武器術が「杖術じょうじゅつ」「金剛杵こんごうしょ」「宝剣術ほうけんじゅつ」の3つとだからとか(他に手裏剣や鉄扇術がある)諸説あるけど、何が正しいのか俺にはわからない。
 
 初伝で呼吸法や各技法の基本を学び、中伝で丹田たんでん(眉間、胸、下腹部にある霊的な器官のこと)の力を技に乗せる訓練をする。
 これを「人法じんぽう」と言う。
 奥伝の「天法てんぽう」になると、技を超えた技になる。
 はら丹田たんでん)の操作と、気の運用が主体となるからだ。
 中には、法力とか神通力とかしか呼びようのない力を駆使する人もいる。
 俺も、実はそこまで行きたいと考えている。
 普通の人間やってたら見ることのできない世界を見、感じられない世界を感じ、使いようのない力を使ってみたい。
 それが俺の夢だ。
 と言っても、俺はようやく人法(中伝)を学んでるところだが。

 師匠の敷島しきしま蓮城れんじょう先生を若先生わかせんせいというのは、若先生の親父さんである敷島しきしま暁雲ぎょううん先生が、大先生おおせんせいと呼ばれているからだ。
 蓮城とか暁雲とかは修験者としての名前で、本名は若先生が「蓮志(れんじ)」、大先生は「暁(あきら)」だ。
 若先生は、道場脇で指圧・マッサージや接骨をおこなう治療院を経営しながら、道場で天法院流の指導をしている。
 大先生は今、神門山の宙源寺ちゅうげんじという寺で暮らしていて、俺は三ヶ月ぐらい会ってない。
 武道の名人であると同時に、宝部大学の特別講師だったり、修験者としても「阿闍梨あじゃり」なる称号を持つ凄い人だ。
 でも、普段は、誰にでも分け隔てなく接するとても気さくな爺ちゃんだよ。

 俺は、ガキの頃は身体が弱くて、すぐ熱出して保育園休んでた。
 若先生の奥さんの美弥子さんは、北高生の頃からのおふくろの親友だ。
 だからこの道場に通わせてくれた。
 小一の頃からだ。
 それで元気になったんだ。
 
 そして、ここで自分の生涯の目標を見つけた。
 だから、おふくろには感謝してる。
 ただその結果として俺が、道場漬け、武道漬けになり、あんまり学校の勉強しなかったことは面白くねえようだがな。(続く)
 
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