魔法学院の最底辺

かる

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病室での会話

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「お兄様、調子はいかがですか?」

「ん?すっかり元気になったよ。今日の試合に出れるくらいにはな。」

「そんなわけないじゃないですか。」

「いや本当だって、ほら。」

「何してるんですか!」

俺がベッドから降りてその場でジャンプをすると桃が怒った。

「いや本当に大丈夫だって!昨日委員長に回復魔法の専門に頼んだんだよ。」

「そうだったんですか!?でしたらどうして委員長は安静にしておけと……。」

「最初はその人の都合が合わなくてな。けれどこっちに昨日の夜中に来ることが出来たから回復してもらったんだよ。」

回復呪文とは重ね掛けすることはできない。例えば俺の体力が数値化されてるものとして満タンを100とした時、リカバーで10回復できるとしたら10を10回階回復したところで100にはならないのだ。ゾディアックヒールで50回復出来るように、上からさらに強い呪文をかけた時その分までは回復する。後は自然に回復するのを待つしかかないということだ。

「そうですか……しかし一応のため検査は受けてくださいね!」

「わかってる。」

俺は検査用の服に着替えてから病室を出た。

「失礼するぞ、調子は……慧はどうしたんだ?」

「お兄様は今検査中です、治ったとのことらしくて。」

「何!?治ってるはずないだろ!ジャンプでもすれば体がきしむレベルでまだ痛むはずだぞ!」

「え!委員長に直してもらったとお兄様は言っていらしてましたけど……。」

「あいつ……まさか……俺は先に試合会場のほうへ向かってる!」

「私も行きます!」

「本当に検査が受けてる可能性もあるからそこに残っていてくれ!」

「わかりました!」

「では先に失礼する!」

そういうと委員長は慌てて行ってしまった。

「お兄様、そろそろ出てきてください……。」

「悪いな、気を使わせて。」

「どうしてあんな嘘ついたんですか?」

「委員長に回復してもらったという話は嘘だが動けるという話は本当だぞ?」

「ではどうやって回復したんですか?」

「俺の自分で開発した呪文の一種だ……。」

「な!そんなもの、どうして公表しないんですか?そうすればお兄様だって周りから一目置かれるというのに……。」

「こんな魔法、周りの人間が使えば必ず厄介なことになる。いつだって魔法と科学の発展は戦争とともにあったのだから……。」

「お兄様は、周りに自分のことを話していらっしゃるんですか?」

「まだ話したことはない。」

それどころか桃と姉さんに隠していることだって山ほどある。いつだって俺は隠し通せてきた。

「お兄様は……いつまで自分の実力を隠しているおつもりなんですか?」

「そうだな……世界から脅威というものがなくなったらかな?」

「脅威とは?」

「『人間の心』……かもな。」

「そんな世界!誰も……望んでいない……はずです……。」

最初は勢いがついていたが徐々に小さくなっていく桃の声。

「だろうな。俺だってお前たちから心がなくなったら悲しい。」

人間の心がなくなったときすでに俺の心はなくなって悲しいとは思わなくなっているのだろうか。もしもこれから先『感情』というものがなくなったら……。

「でしたらどうs「さてと!俺は今から会場に向かうよ。」」

俺は桃の言葉を遮るようにわざとらしく勢い付けた。

「本当に……大丈夫なんですよね?」

「あぁ、しっかり見といてくれよ!あと……このことは委員長に話さないでおいてくれ。」

「ハァ……やっぱりお兄様はいつでもお兄様ですね……。」

桃が額に手をやり、ため息交じりにつぶやいた。そして制服に着替え、病室から出て会場へと向かう俺を温かい目で見守るのであった。
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