英雄を作るための英雄譚

かる

文字の大きさ
上 下
2 / 7

ドラゴン

しおりを挟む
首から腕を離すと大輝はせ咳き込むように呼吸を整えようとした。

「ハァ……ハァ……お前は……ハァ……俺を……殺す気か?」

「わりぃわりぃ手が滑った。」

「本当に不幸になればいいのに……。」

「まぁ杞憂だろ。現に俺なんかに不幸が訪れるとしても犬の糞を踏むとかそのあたりだとかなり助かる。」

「それはかなり不幸なのではないか?まぁ今回の話を聞くのとは全く関係ないんじゃね?」

「だといいけどな……。」


*****


俺たちが体育館に来ると教師一同が体育館に集まっていた。
かなり大きな事件でもあったのだろうか?
教師たちは周りをきょろきょろしながら誰かを探しているようだ。
『最後のジェマ』が誰だったのか見つかったのだろうか?

「いや、縁起でもないこと言うもんではないな……。」

「あ?なんだ?」

「何でもねーよ。先生が話始めるから黙って聞いとけ。」

「はいよ。」

大輝が前を向くと、一人の老人らしき教師が話始めた。
年齢からして学年主任か教頭、校長だろうか?

「本日は皆さんに重大なお知らせが……よりあるそうです。」

『ある人?』気になる言い方だな。
別にこれから話し始めるんであれば今この場でその人物の名前を話しても良いのではないだろうか?

「よろしくお願いします。」

老教師の声に合わせて一人の女学生が壇上に登ってきた。
その姿を見た瞬間周りでざわめきや動揺が起こった。
俺も驚いた人々中の一人である。
なぜなら壇上に出てきた人物は……


「1年生の皆さんこんにちは!『西条 あやめ』です!」


ジェマ:序列第5位 『西条 あやめ』

「おいおいおいおい……マジかよ……!見ろよ有紀!西条先輩だぞ!」

「あ、あぁ……。」

大輝が興奮しながら俺のほうへ振り返ってくる。
確かに仕方がない。
ジェマとは研究においてかなり重要な役なのである。
希少的能力と希少価値のある英雄、そしてその英雄に見合った知性と教養を兼ね備えたいわば


『最強』


この言葉で片付いてしまうほどだ。
しかしジェマである彼女らは普段から表に姿を見せることはなく、同学年の人間ですら見たことのあるという人は半分いれば多いくらいである。
ましてや1年生が会うことなど0に等しい。

「どうしてこの場に……?」

大輝がつぶやくと西条先輩は大輝のほうを指さしながら質問を投げかけた。

「お、そこの君いい質問だねー。私はある目的があってここにいます。それは何でしょーか?」

「いや……あまりわかりません……。」

「『あまり』って何よ!アハハハハハ!少しはわかってるみたいな口ぶりよ?それ。」

「あ、すみません……。」

ジェマ相手に大輝は委縮してしまった。
普段ならもうちょいましな返し方が思いつくのだろうけどこの状況では頭が全く回転していないようだ。

「じゃあ彼の後ろの君、わかる?」

俺は自分の顔を指さして「自分のこと?」かのように聞くと西条先輩は数回うなずいた。

「わかりません。」

「へぇ。」

目つきが一瞬変わった。
周りにはバレない様にしていたのだろうが一瞬だけ殺気が込められていたのが分かった。
殺気に反応したやつを片っ端から尋問でもしていくのか?

「まぁ知らないならいいや。じゃあもう誰なのかわからないし、無理やり化けの皮はがすしかないか!」

西条先輩は壇上から降りると指パッチンをした。
それと同時に体育館全体の扉が占められ、固く閉ざされた。
すると体育館は地鳴りが発生した。

「な……なんだ!?地震か!?」

「いや違う!下だ!」

地鳴りとともに地面から巨大なドラゴンが出てきた。
ドラゴンは羽をはばたかせると体育館の天井を突き破った。
その後、空で一回転をし、体勢を立て直すとゆっくりと体育館の崩落している地面に着地した。

「さーてと……最後のジェマは『竜殺しドラゴンスレイヤー』かな?違ったらどうしようかはまだ考えてないけどね♪」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔
ファンタジー
 対向車線からトラックが飛び出してきた。  特に恐怖を感じることも無く、死んだなと。  想像したものを具現化できたら、もっと生産性があがるのにな。あと、女の子でも作って童貞捨てたい。いや。それは流石に生の女の子がいいか。我ながら少しサイコ臭して怖いこと言ったな――。  手から何でも出せるスキルで国を造ったり、無双したりなどの、異世界転生のありがちファンタジー作品です。  王国? 人外の軍勢? 魔王? なんでも来いよ! 力でねじ伏せてやるっ!  感想やお気に入り、しおり等々頂けると幸甚です!    モチベーション上がりますので是非よろしくお願い致します♪  また、本作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨムで公開している作品となります。  小説家になろうの閲覧数は170万。  エブリスタの閲覧数は240万。また、毎日トレンドランキング、ファンタジーランキング30位以内に入っております!  カクヨムの閲覧数は45万。  日頃から読んでくださる方に感謝です!

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

二周目だけどディストピアはやっぱり予測不能…って怪物ルート!?マジですか…。

ヤマタカコク
ファンタジー
二周目チートではありません。モンスター転生でもありません。無双でモテてバズってお金稼いで順風満帆にはなりません。  前世の後悔を繰り返さないためなら……悪戦苦闘?それで普通。死闘?常在でしょ。予測不能?全部踏み越える。薙ぎ倒す。吹き飛ばす。  二周目知識でも禁断とされるモンスター食だって無茶苦茶トレーニングだって絶体絶命ソロ攻略だって辞さない!死んでも、怪物になってでもやりとげる。  スキル、ステータス、内政、クラフト、てんこ盛り。それでやっとが実際のディストピア。 ようこそ。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

異世界帰りの勇者は現代社会に戦いを挑む

大沢 雅紀
ファンタジー
ブラック企業に勤めている山田太郎は、自らの境遇に腐ることなく働いて金をためていた。しかし、やっと挙げた結婚式で裏切られてしまう。失意の太郎だったが、異世界に勇者として召喚されてしまった。 一年後、魔王を倒した太郎は、異世界で身に着けた力とアイテムをもって帰還する。そして自らを嵌めたクラスメイトと、彼らを育んた日本に対して戦いを挑むのだった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...