宇宙の果てから地球にやってきたら神として英雄になりました

たんぽぽ

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1章

パトロール‥だったはずが

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熊本県の横に位置する有明海‥
そこには1隻の黒と赤に塗られたタンカーがあった。夜で静まりかえった中、
やけにタンカーの中央部だけライトで明るく照らされている。月は曇っているせいで
地上に顔は出さず、夜の静寂が肌に深々としみてくる。
 
海というだけあって時折波の音がザーザーと聞こえ、地球と言う星の
自然の大きさ、美しさを感じてしまう。カンダルにはこんなに美しい
海はなかったし、これに似たようなものはあったとしても、
海のはるか10km地下にはいろいろなカンダル中央政府の施設があった。
なんて地球っていい星なんだろう。あ!あれは流れ星か?
一瞬、ほんの1秒にも満たない間だったが、確かに南から北に
流れ星が現れ、どこかに消えていった。確か人間は
流れ星が流れる間に願い事をすると本当に叶うと信じているらしい。
確かに俺もまさか叶うわけないだろ、と思っていたが
実際に見てみると本当に願ったら叶えられそうな気がした。

「コパーレ!」
後ろからカラが俺を呼ぶ声が聞こえる。そうか、俺は今からこのユーラシア
大陸と太平洋をカラとパトロールするんだったな。

「ごめん、物思いにふけてた」

「そう。じゃあ私はもう行く準備はととのったわよ」
あっさりスル―されてしまったが、今は特に気にする気分じゃない。

「ああ、俺も今ととのったところだ」
手すりから身を起こし、ライトで明るく照らされている船の中央部に行く。


「‥随分と豪華な偵察機だな」
どうやらその偵察機は垂直離着陸、逆反射パネル、さらには偵察機と言うのに
豪華な品ぞろえのミサイルさん達。

「まあ、背景にはアメリカ、その裏には国際連合もいるしね。
 偵察機はこのくらいでなくちゃ」
カラは自慢げに言う。

「国際連合?そんなものも後ろにあったのか」

「ええ、そうよ。だってアメリカだけじゃなく世界を守るんだから」
今の名言?そう思ったが特に口には出さなかった。

「そして‥これがあなたの着る服、と言いたいところだけど
 急な都合でパトロールの終わりにアメリカに直接キノ博士のところに
 取りに行くことになったから」

「はあ‥」

「ああ、あとこの無線落ちないように持っておいてね」
渡されたのはイヤホン型の小型無線機。耳につけると意外とフィットする。




そして5分後、俺は夜の空を気持ちよく飛んでいた。夜は飛行機のライトのおかげで
飛行機の位置が分かりやすく、昼よりもはるかに快適に飛べる。そういや、
俺って視力も反射神経も人間の5倍くらいはいいんだっけ?
じゃないとこんなに飛べないよな?  そう思いながら海の上をひたすら
飛び続ける。
「コパーレ!もっとゆっくり飛べ!!追いつけんじゃん!!」

カラの殺気まじった声がイヤホンから大音量で流れる。
そういや‥さっきからカラの偵察機のエンジン音が聞こえないな‥

「今どのへん?」

「てめえの360km後ろだよ!!」
殺気しかない。

「しょうがない‥時速300kmくらいに落とすよ」


しばらくすると地平線の向こうにハワイらしき島が見えてきた。
町のあちこちに青い光がともり、高層ビルが見える。

‥いや、待てよ。飛んできた時間的にこんなに近くに島が見えるはずがない。
だいたいハワイには火山があって‥こんなビルばっかりじゃなかった気がする。
しかも全部が青い光に包まれている。もうこれは明らかにハワイじゃない。
こんなの地図にも載ってない。だとすると‥一体なんだ?何なんだ?

「なあ、カラ。ここから約20km先に島なんてあったっけ?」

「は?あるわけないじゃん。大体ここって日本とハワイのど真ん中の位置よ」
確かにこんな島存在するはずがない。しかし今俺の目にはそれがはっきりと
写っている。確かにある。

「ホントにか?」

「ええ、そうよ」

「じゃあ、俺の今の今の位置まで後1分足らずで追いつくだろ?俺のところに来たら
 スピードを時速0kmに落としてくれ」

「ええ、なんか良く分からないけど‥分かったわ」
いや、あり得ない。ここに存在するはずがない。青い光に包まれた
まだ人類が開拓していない土地が地球上にあるはずがない。
いや‥

‥俺だから見えるだけなのかもしれない。だとすると‥
あそこにはカンダル人がいるのか?人間以外の生物がいるとしか
考えられない。だとすると‥やはりカンダル人だとしか考えられない。
あんなに高度な文明を持ったのは俺が知っている中ではカンダル人だけ。
しばらくそこを眺めていると、カラの偵察機が来た。

「なあ、あれ‥お前に見えるか?」

「え?何も見えないけど‥」
カラは目を凝らす。

「本当に何も見えないか?俺にはあそこに島があるように見えるんだが‥」

「!!!!!!!!!!!!!!!」

「み、見えた‥」
驚き126%の声。もう声にもなっていないようだ。

「え?え?見えたんだけど」
恐らくこの島は本当にあると思って見ないと人間、またはカンダル人以外には
見えないようになっているのだろう。
昔の冒険者たちはどこかに島があると思って毎日を船で旅をした。
だからその冒険者たちには見えた。しかしそれが語り継がれるにつれ‥
だんだんその人たちから島がある、という信念が消えていき、
ついには今の外の人間には見えなくなってしまった。

 つまり‥アトランティス大陸‥。

古代ギリシャの哲学者、プラトンが著書に書き残したのは‥大西洋。
しかし3000年も経過するとプレートの動きなどで‥
太平洋に移動したのだろう。いや、やはりそこには人間でない何かが
いるかもしれない。エジプトのピラミッドの壁画にあるような、
またはナスカの地上絵のような。だとすると‥もうすでに、何千年も
前から姿を隠す技術は持っていたと言える。カンダル人ではない
なにか別の生物かもしれない、ということになる。

これは世紀の大発見、いや、再発見なのではないか。
いや‥待てよ。そんなに高度な文明を昔から持っていたとすれば‥
今頃俺たちは向こうに気づかれているかもしれない。いや、その位の事なら
今の日本やアメリカの技術力でも十分にできる。つまり俺たちは
99.9%気づかれている。しかもこんなに大きな音を出す偵察機が
空中に止まっているのなら気づかれないはずがない。

ここは‥いったん撤退すべきだろうか。
いや、冷静な判断としてすべきだろう。

「おい!今すぐにここを撤退する!理由は後で聞いてくれ!」

「え?」

「すぐにだ!!」
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