宇宙の果てから地球にやってきたら神として英雄になりました

たんぽぽ

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1章

地球へ

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「見ろ、あれが地球と言う星だ。実に青々しくて綺麗だろ?」

「うん。俺もあんなに青い星は見たことないよ」
この宇宙船に乗って7年が過ぎた。俺は6歳まで母星カンダル
で過ごし、そこからこの宇宙船に乗りっぱなしの生活を続けてきた。
少々退屈だが7年後には植物の生い茂る生命の星、地球で過ごすことができる
と考えるとあっという間に1年1年過ぎて行った。それにここから見える
無限大に広がる宇宙を見ているとその景色だけで満足し、決してここに
長い間いるのに不満はなかった。そしてついに今日という日が来たのだ。
地球に降り立つ日が。この日をどれだけ待っていただろう。

 地球‥それはカンダルよりもはるかに文明が遅れていて、魔法を
使う技術だって存在しない。だからきっと俺たちが行けば驚かれることだろう。
もちろん、そこで暮らす時にはしっかりと人間に化け、言葉も日本語、英語、
イタリア語、スペイン語を完璧に話せるようにしておく。聞くところ人間は
相当記憶能力が低いらしく、言語も多くても4~5言語までしか話せないらしい。
に比べてカンダル人は最低でも20カ国語は話せる記憶能力があり、
人間よりはるかに知能的にも優れている。

「ただいまより、12009回目のワープに入ります。1時間後に
 到着予定です」

「分かった。さあみんな、あと3時間だ。あと3時間で地球の地面
触れることができるんだ」

父の威厳のあり、どこか嬉しそうな声が宇宙船内に響く。

「コンドル・パーカー・レイッシュ。どんな気持か?7年ぶりの星は?」
父が聞いてくる。

「‥人間に会えるのが楽しみ。こんなに青く恵まれた星の中で
 育った人間は一体どんな心を持っているのか‥」

「‥きっといい心を持っているだろう。感情豊かで‥
 きっとどの星の生き物よりも興味津津だろう」

「じゃあ、魔法についても‥知ろうとするかな?」

「いや‥あせらなくてもいい。彼らはまだ魔法は実在しないものとして
 見ている。もし彼らが本当に魔法があると信じたら我々の本当の
 能力を使うといいだろう。知ろうとはするだろうが、それが真意でない限り
 余計に魔法を使うことはない」

「わかった‥。‥この名前長すぎるから、別のやつにしていい?地球の中では」

「‥「コパーレ」はどうだ?バランス良く取ったらなんかいい感じになったぞ」

「悪くはない‥でも良くもない」

「まあ、悪くないのではいいじゃないか」
父は俺の方をポンと押すと向こうの操縦席の方に行ってしまった。
こう話している間にいつの間にかワープは始まり、一つ一つの
星の光が直線となっていく。もちろんその直線の延長線上には地球が
あり、1秒1秒と過ぎていくにつれ地球が大きくなっていく。

―そしてワープは終わった。今度のワープは2分もたたないうちに
終わり、今は目の前に月と言われる衛星が見える。やっとこの時が来た。
恐らく今から地球の軌道に入り、着陸する。もうすぐこの
家族にとっての新しい生活がスタートする。考えただけで
わくわくする。

「ねえ、お兄ちゃん、あの地球ってなんであんなに青いの?」
気づくと横には4歳年下の妹、セラが立っていた。なぜこいつだけ
名前が異常に短いのか知らないが、今となってはそんなことを
気にする必要はない。

「‥あそこに太陽があるだろ?この地球の大気でその光が反射して
 水の所が青く見えるらしい」
そう、あの恒星は太陽、と言うらしい。あの恒星はカンダルからでも
見える。6歳の時、地球に引っ越すと聞いた時にはよくその周辺の恒星を
図鑑であさったものだ。

―そしてとうとう40分が経過した。待ちに待った地球への着陸の時。

「全反射パネル、及びレーダー反射パネル作動。着陸予定30秒後」
コンピューターが知らせる。え?待てよ、30秒後って早くね?
いくら待ちに待ったと言ってもそこまで早くしなくても大丈夫なのだが。

「大気圏突入」
今ガラスの外に見えるのは真っ赤な炎‥となるらしいのだが、
どうやらここからワープして着陸するらしい。

「ワープ開始」











―そこは緑と青にあふれた美しい星だった。7年ぶりに船を降りると、
しっかりと踏みごたえのある土。そして崖の下には岸辺に打ち寄せる
波。空には翼を大きく広げて飛ぶ鳥の姿。そしてカンダルよりも
はるかに綺麗な空気。まさしく生命の星、地球。
土に触れると少し手に土がつき、湿り気、さらには大地の得体のしれない
エネルギーまでさえも体の真で直接感じることができる。

「イヨッシャアアアアア!!!」
俺は出せるだけの声を振り絞って歓喜を上げた。
この地球の中心に向かって叫んだ。
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