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第2章
期待を胸に
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一度息を吐いて、自分を落ち着ける。呼吸がだんだんと落ち着いてくる。
遠くから聞こえてくる部活動生の声、自分の心臓の鼓動が聞こえてくる。
1時間目の実技の時間に習ったことを頭の中でイメージトレーニングしていく。
「コロモン・ジェータ」の大まかな動きから細かいところまでしっかりと頭で
思い浮かべていく。そしてそれ通りに手を前に出し、両手の指で丸を作る。
「コロモン・ジェータ!」
何も起こらない‥。いや、なにか‥自分の下によくプールにあるような水の影がある。
それが目で確認できたあと、バシャバシャ!
上から大量の水が落ちてきた。水が多すぎて全身濡れてしまった。
術が使えた喜びと、濡れてしまった後悔が複雑にまじりあう。
使えたのは良かったが、最後まで気を抜いたらいけないんだ‥。
とりあえず、術は使えた。しかしコントロールが全くできていない。
次はしっかりとコントロールできるようにしなくては。
しっかりと頭で反省する。
「ねえカイ、全身ずぶ濡れだけど‥何したの?」
考え事をしていると、いつの間にか横にケンとユウカが立っていた。
「え!いや、これはその‥」
いきなり声をかけられると誰でも驚く。
「絶対何か隠してる」
ユウカのストレートすぎる目線はさすがにかわせない。ここは正直に告白するべきか‥。
いや、告白したらいけないかもしれない。転校1日目でこんな術が使えるように
なったことなど知れば、逆にユウカ達がショックを受けてしまうかもしれない。
なんでそんな才能をカイだけが持っているのかと。
「派手に水遊びしてた」
「1人で?」
「うん‥」
こんな理由嘘だとすぐに分かってしまうと知っていながらつい言葉に出してしまった。
「で、本当は?」
すぐにばれた。
「ただ、今日の1時間目の実技「水」の時間の術を試したくなって‥」
「それで‥全身濡れるぐらいに水が出てきたわけね」
「ああ」
「まあ、さっきからずっと500回くらい練習してたなら、その努力は凄いと思うよ」
どうやらユウカとケンは一部始終を見ていなかったみたいだ。とりあえずばれなかった。
「ああ、ありがとう」
と言いつつ、“実は1回です”と言いたいのをじっとこらえる。
「お前らもやってみるか?」
「いや、私はこの後部活を体験しに行こうかな‥って思ってる。だからちょっと
今日は無理」
「俺は‥特にすることないから付き合ってやってもいいけど。6時までなら」
ケンは応じてくれた。そういえば、俺も明日くらいには「水」の部活に行ったほうが
いいのかもしれない。はっきりいって、どんなことをやってるのか楽しみだし、
早くいろんな技を使えるようになりたい。この才能を見せびらかさない程度に
部活に参加して、友達も作っていきたい。
「って言うか‥なんでこんな場所で練習?」
ここは見られたくないと言ったほうがいいのか、いやそんなことを言えばすぐに
なぜそんなに隠す理由があるのかと疑われる可能性がある。豊潤な語彙の表現力
にかける俺にとっては難しい質問だ。
「まあ水の魔法の練習だから、周りに迷惑かけない陸上トラックの反対側の空き地っぽくなってるところがいいかなって思って」
まあ、上手く説明できたほうだろう。
「ふ~ん、じゃあ私はこれで失礼」
ユウカは特に気に掛けずに行ってしまった。というか最初から興味なんてなかったのかもしれない。
「じゃあ、とりあえず俺も今日の教科書で習ったところしてみる。
カイはさっき相当濡れてたからもうこの術マスターしたのか?」
「いや、あとはコントロールってところかな‥」
練習すること60秒、
「よし、コントロール完了!」
意外にも早くコロモン・ジェータをマスターすることができた。最初のほうの20秒は集中するのに時間がかかったが、そのあとの10秒で術を出す。残りの時間で上に浮かんだ水の玉をゆっくりと横にスライドさせていく。そして芝生の上で落とす。あとはもういつでも使えるように心構えをしておくのみ。
「カイ、お前天才か?俺なんてコントロールも何もできないのに、
今の1回でコントロールまで成功させて」
どうやら今のを全て見られていたようだ。
「まあ、そうかもな‥いや、待てよ。俺の属性が水だからかもしれない」
「確かに」
「じゃあ、俺も火の魔術試してみようかな。そしたらカイみたいに上手くなれるかもしれないし」
一応、教科書は昨日全て配られた。それぞれの属性の教科書があり、6年間でそれを学習し
ていく。この学校は下界で言うところの小学校と中学校を合わせたもの、という感じだ。
だから教科書の最初のほうのページは、本当に簡単な文字の読み方などが載っていて、
後ろのほうからやっと術の使い方について学習していく。そしてたまに杖の使い方も
載っている。だから放課後いくらでも自主練可能ということになっている。
「まあ、教科書があるならいいんじゃない?」
「まあ、こういうこともあると思って、いつも自分の属性の「火」の教科書だけは持ち歩いてる」
そう言うとカイは自分のバックからその教科書を取り出した。
「じゃあ、まずは簡単そうな‥「ファイアーベース」からやってみようかな‥」
まあ、ちょっとやそっと術を試してみても何も起こらないことは想像できる。
そして20回くらい練習したところであきらめる姿もしっかりと頭で想像できる。
まあ、友達として信じてみるか。
教科書を見ながらケンが腕を動かす。おどおどしていて、ぎこちない。
「ファイヤーベース!」
ドドゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
!!何か爆発でも起こったのか?とりあえず身をかがめる。しかし‥熱い。熱風がこっちに向かって勢いよく流れてくる。もしかしたら今こんなところで火傷を負ってしまうかもしれない。それならば‥さっきの水を‥。
「コロモン・ジェータ!!!!」
と同時に2人の上に巨大な水の塊ができ、滝のように2人を叩く。
ザザザザザザザ‥
本日2度目のびしょ濡れ。火はおさまったが、逆に驚きと興奮が入り混じった異様な空気
が2人を包む。初めてとは到底思えない手から出る火の量。
「え!」
「お前‥」
言葉が出てこない。
「いつの間に習ったんだ?俺に隠れて‥」
「いや、今のが初めて」
「ホントに??」
「うん。まあ、とりあえず学校を燃やさずにすんだよ。ありがとう」
「ああ。いいんだ」
ケンももしかして上界から地球に送られてきたのか?何らかの理由で。
そうだとしたら俺とケンが中界にやってきたのは運命なのかもしれない。
「ケン、俺と一緒に副校長先生、ランチェル先生のところにいってみるか?
この辺で有名な占い師というだけあって、ちょっとむちゃくちゃだけど腕前は確かだよ」
「カイは行ったことがあるような口調だったけど」
あ。言ってしまった。
「うん‥正直に言うよ。1時間目の体育の先生のお勧めでさっき行ってきた」
「なんで?」
「もしかしたら凄い才能を持っているかもしれないそうだから、自分は何者なのかと」
「で、占いの結果は?」
「本来は上界を治めてるくらいの魔力を持っているって‥」
「・・・・・」
「だから‥ケンも1回であれほどに術が使えるなら‥もしかしたらと思って」
「‥ぜひ案内してくれ」
遠くから聞こえてくる部活動生の声、自分の心臓の鼓動が聞こえてくる。
1時間目の実技の時間に習ったことを頭の中でイメージトレーニングしていく。
「コロモン・ジェータ」の大まかな動きから細かいところまでしっかりと頭で
思い浮かべていく。そしてそれ通りに手を前に出し、両手の指で丸を作る。
「コロモン・ジェータ!」
何も起こらない‥。いや、なにか‥自分の下によくプールにあるような水の影がある。
それが目で確認できたあと、バシャバシャ!
上から大量の水が落ちてきた。水が多すぎて全身濡れてしまった。
術が使えた喜びと、濡れてしまった後悔が複雑にまじりあう。
使えたのは良かったが、最後まで気を抜いたらいけないんだ‥。
とりあえず、術は使えた。しかしコントロールが全くできていない。
次はしっかりとコントロールできるようにしなくては。
しっかりと頭で反省する。
「ねえカイ、全身ずぶ濡れだけど‥何したの?」
考え事をしていると、いつの間にか横にケンとユウカが立っていた。
「え!いや、これはその‥」
いきなり声をかけられると誰でも驚く。
「絶対何か隠してる」
ユウカのストレートすぎる目線はさすがにかわせない。ここは正直に告白するべきか‥。
いや、告白したらいけないかもしれない。転校1日目でこんな術が使えるように
なったことなど知れば、逆にユウカ達がショックを受けてしまうかもしれない。
なんでそんな才能をカイだけが持っているのかと。
「派手に水遊びしてた」
「1人で?」
「うん‥」
こんな理由嘘だとすぐに分かってしまうと知っていながらつい言葉に出してしまった。
「で、本当は?」
すぐにばれた。
「ただ、今日の1時間目の実技「水」の時間の術を試したくなって‥」
「それで‥全身濡れるぐらいに水が出てきたわけね」
「ああ」
「まあ、さっきからずっと500回くらい練習してたなら、その努力は凄いと思うよ」
どうやらユウカとケンは一部始終を見ていなかったみたいだ。とりあえずばれなかった。
「ああ、ありがとう」
と言いつつ、“実は1回です”と言いたいのをじっとこらえる。
「お前らもやってみるか?」
「いや、私はこの後部活を体験しに行こうかな‥って思ってる。だからちょっと
今日は無理」
「俺は‥特にすることないから付き合ってやってもいいけど。6時までなら」
ケンは応じてくれた。そういえば、俺も明日くらいには「水」の部活に行ったほうが
いいのかもしれない。はっきりいって、どんなことをやってるのか楽しみだし、
早くいろんな技を使えるようになりたい。この才能を見せびらかさない程度に
部活に参加して、友達も作っていきたい。
「って言うか‥なんでこんな場所で練習?」
ここは見られたくないと言ったほうがいいのか、いやそんなことを言えばすぐに
なぜそんなに隠す理由があるのかと疑われる可能性がある。豊潤な語彙の表現力
にかける俺にとっては難しい質問だ。
「まあ水の魔法の練習だから、周りに迷惑かけない陸上トラックの反対側の空き地っぽくなってるところがいいかなって思って」
まあ、上手く説明できたほうだろう。
「ふ~ん、じゃあ私はこれで失礼」
ユウカは特に気に掛けずに行ってしまった。というか最初から興味なんてなかったのかもしれない。
「じゃあ、とりあえず俺も今日の教科書で習ったところしてみる。
カイはさっき相当濡れてたからもうこの術マスターしたのか?」
「いや、あとはコントロールってところかな‥」
練習すること60秒、
「よし、コントロール完了!」
意外にも早くコロモン・ジェータをマスターすることができた。最初のほうの20秒は集中するのに時間がかかったが、そのあとの10秒で術を出す。残りの時間で上に浮かんだ水の玉をゆっくりと横にスライドさせていく。そして芝生の上で落とす。あとはもういつでも使えるように心構えをしておくのみ。
「カイ、お前天才か?俺なんてコントロールも何もできないのに、
今の1回でコントロールまで成功させて」
どうやら今のを全て見られていたようだ。
「まあ、そうかもな‥いや、待てよ。俺の属性が水だからかもしれない」
「確かに」
「じゃあ、俺も火の魔術試してみようかな。そしたらカイみたいに上手くなれるかもしれないし」
一応、教科書は昨日全て配られた。それぞれの属性の教科書があり、6年間でそれを学習し
ていく。この学校は下界で言うところの小学校と中学校を合わせたもの、という感じだ。
だから教科書の最初のほうのページは、本当に簡単な文字の読み方などが載っていて、
後ろのほうからやっと術の使い方について学習していく。そしてたまに杖の使い方も
載っている。だから放課後いくらでも自主練可能ということになっている。
「まあ、教科書があるならいいんじゃない?」
「まあ、こういうこともあると思って、いつも自分の属性の「火」の教科書だけは持ち歩いてる」
そう言うとカイは自分のバックからその教科書を取り出した。
「じゃあ、まずは簡単そうな‥「ファイアーベース」からやってみようかな‥」
まあ、ちょっとやそっと術を試してみても何も起こらないことは想像できる。
そして20回くらい練習したところであきらめる姿もしっかりと頭で想像できる。
まあ、友達として信じてみるか。
教科書を見ながらケンが腕を動かす。おどおどしていて、ぎこちない。
「ファイヤーベース!」
ドドゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
!!何か爆発でも起こったのか?とりあえず身をかがめる。しかし‥熱い。熱風がこっちに向かって勢いよく流れてくる。もしかしたら今こんなところで火傷を負ってしまうかもしれない。それならば‥さっきの水を‥。
「コロモン・ジェータ!!!!」
と同時に2人の上に巨大な水の塊ができ、滝のように2人を叩く。
ザザザザザザザ‥
本日2度目のびしょ濡れ。火はおさまったが、逆に驚きと興奮が入り混じった異様な空気
が2人を包む。初めてとは到底思えない手から出る火の量。
「え!」
「お前‥」
言葉が出てこない。
「いつの間に習ったんだ?俺に隠れて‥」
「いや、今のが初めて」
「ホントに??」
「うん。まあ、とりあえず学校を燃やさずにすんだよ。ありがとう」
「ああ。いいんだ」
ケンももしかして上界から地球に送られてきたのか?何らかの理由で。
そうだとしたら俺とケンが中界にやってきたのは運命なのかもしれない。
「ケン、俺と一緒に副校長先生、ランチェル先生のところにいってみるか?
この辺で有名な占い師というだけあって、ちょっとむちゃくちゃだけど腕前は確かだよ」
「カイは行ったことがあるような口調だったけど」
あ。言ってしまった。
「うん‥正直に言うよ。1時間目の体育の先生のお勧めでさっき行ってきた」
「なんで?」
「もしかしたら凄い才能を持っているかもしれないそうだから、自分は何者なのかと」
「で、占いの結果は?」
「本来は上界を治めてるくらいの魔力を持っているって‥」
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「だから‥ケンも1回であれほどに術が使えるなら‥もしかしたらと思って」
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