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第2章

授業

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この学校に転校して2日目。

1日目の昼休みは、他の生徒からの質問尽くしで、結局ヒロから学校案内を受ける

時間がなかった。そして今日、昨日のようにまた質問攻めにあわないかぎり、

ヒロに学校案内をしてもらうことになっている。



まだ何の部活に入るか、確定はしていないがある程度は決まっている。

…属性「水」の研究部… 今日の放課後に見学に行く予定だ。

昨日先生から例の杖は自己紹介の後もらった。ためしに振ってみたが

何も起こらない。配られた教科書を見てみると、いろんな呪文や棒の振り方、

心構えなどが書かれている。まあそこで魔法が使えるなら、まずここにいないはずだが。



泊まる場所は寮に決めた。もちろん、カイ、ケンで一部屋、ユウカで一部屋に。

寮には、1年生から6年生まで合わせて約20名ほどいた。予想よりは少なったが、

まだ多いよりかはましだろう。



たまたま隣の席になったヒロに声をかける。

「今日の1時間目は確か、実技「水」だったっけ?」



「ああ、時間割なら後ろの黒板に書いてあるよ」



「ああ、気づかなかった。どういう授業?」



「主に1日1、2つ呪文を覚えて、実際に使えるようにするんだ」



「覚えるのって、大変?」



「いや、それほどでもない。ほとんどが短くて覚えやすいものだから。

 プールの近くに訓練場があるから、1時間目までにそこにみんな移動するよ」



1時間目まで後約6分。



「じゃあ、もう今から行く?」



「もうそろそろ行こうかな…そこにいる2人にも声かけて」



2席前にはユウカとケンが集まり、昨日仲良くなったらしいコロンと

楽しそうにおしゃべりしている。こんな中、突然悪いが…



「もうすぐ、1時間目が始まるからプールの訓練場に行こう」



「OK~」

「今いく」



そういって3人は立ち上がり、ヒロの方に集まる。



「じゃあ、プールまでの校内案内がてら行こう」



「了解」

「はい!」



カイとケンの威勢のいい返事によって5分間の短い校内散策が始まる。



「ここが1年生の教室で、その隣が2年生の教室。ついでにそこに飾ってある

 絵は、19年前に卒業した先輩の優秀作品だとか…」



説明は続く。少し長い廊下の壁には、いろんな研究部の研究発表や、展示作品が並んでいる。1時間ここにいても飽きないような廊下。その先には開けた場所が見える。



「訓練場は、どんくらいで着く?」

ユウカが聞く。



「私の予想だと、大体後1分ぐらいかな…普通に歩いて」

コロンが答える。



そして、やはり1分後に50mプールが見えてきた。校舎より海側にあり、海がよく見える、

見晴らしのいい所だ。木が5本くらい隅っこに生えている。



キーンコーンカーンコーン チャイムが鳴る。

と同時に先生が

「集合!」

何やら少し高い丘の上に立って叫んでいる。…あんなに叫ばなくても十分に声は聞こえているんですけど…。



「今日は、実技「水」の授業です。皆さん、教科書と杖は忘れていませんか?」



『ハイ!』

クラス全員のそろった声。



「じゃあ、忘れ物なしと…。じゃあ、いつものように準備運動して、体操するように」



『ハイ!』



グラウンドというには少し小さい広場を6周みんなで走る。まあ、下界では陸上を

やっていたのでこのくらいなんともなかった。走り終えると、みんなで

体操をする。体育委員らしき人たちが前に出る。



「いっちにーさんし!」

力のある声。なんか、無駄に声が大きいような気がする。まあ、楽しいので良しとしよう。



「集合!」

の一言で先生の前に集まる。出席確認が合わった後、先生が話し始める。



「今日は、「水」について、学びます。属性、水の人てあげて下さい~」



ぎく!俺じゃん。

言われたとおりに手を挙げる。僕のほかには後もう1人手を挙げている人がいた。



「じゃあ、前の方のジェック、何か技を今まで習ってきた中で、

1つ披露して下さい」



・・・・当たらなくてよかった・・・



ジェックはみんなの前を向くと、両手を広げた。

「コロモン・ジェータ!」

と同時に手の平に小さな水の塊が浮き始める。それはどんどん大きくなり、

やがて顔くらいのサイズになる。それをソフトボールを投げるように、

プールに向かって投げる。プールから水の跳ねる音が聞こえる。

拍手が起こる。



「今日は、この前覚えたこの技、今のようにすぐに出せるように完璧にしていってもらいます。

属性が水じゃない人も、この技は比較的簡単なのですぐに出来るように

 なると思います。教科書p57。じゃあまず20分練習、始め!」



「は?教科書見てそんなすぐに出来るようになんの?」



「まあ、頑張れ。属性が水ならできるはず!」

ヒロにとっても前向きに言われて少し元気が出てきた。



「まあ、とりあえず教科書見て頑張ってみよう」

教科書p57をめくる。さっきの呪文みたいなのや、注意点、出来るようになるまでの

時間など、いろんな事が書いてある。とりあえず、のっているイラストのように

手を動かす。1回目…何も起こらない。2回目、少し集中してみる。

ん?何か今一瞬手の周りが涼しくなったような…。

3回目 !!一瞬、水滴が出来た!後20分あれば、出来るかもしれない。



「おお、君が例の下界からの転校生か」



「はい」



「どうやら、属性は「水」の様だね」



改めて見ると、男性の中でも下界で例えるなら、柔道部の顧問をやっていそうな

筋肉むき出しのごつい先生。近くで見ると、その筋肉の量に感嘆せざるを得ない。



「はい、「水」です」



「それにしても、才能あるんじゃないか?初めてにして、4回で少しコツを

 つかむとは」



「いや…運が良かっただけなんですよ、きっと」



「じゃあ、もう1回試してみて」



「はい」

先生の前なので、少し緊張する。さっきよりも集中する。



「コロモン・ジェータ!」

バシャ!手から出た水が地面に落ちる。

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