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最終章 最終決戦だヒャッハーな件
清水の舞台は意外と低いらしい
しおりを挟む「……これ、空飛べないと逃げるの無理くね?」
ヒュォォっと強い風が吹きつけてくる。まさに行きはよいよい帰りは怖い状態。
空を飛ぶ、といえば……
「森羅さんを使えば多少は緩衝材がわりになる、か……?」
大きい方なら普通に飛竜代わりにできそうだが、小さい方は無理っぽい気がする。しかし今の俺には小さい方しか出せないので、そっちに縋るしかない。
『逃がさんぞぉぉ!!』
なんて、悠長に考えてるヒマなんて無かった! ロボの腕が迫ってくる! ……のだが、関節とかの関係で手間取っているようだ。背中だもんな、ここ。ならば今のうちに――
「シータ、行くぞ!」
「えっ? 行くって、まさか――」
腕の中のシータが目を白黒させているが、余裕がないので行動で答える。
――つまりジャンプ。シータを抱きしめたまま、空中にダイブした。
「きゃぁぁぁ!?」
「森羅さん出てこぉぉーいっ!!」
ぼひゅんと現れた森羅さんは「キュルン?」と、つぶらな瞳をクリクリさせていた。あ、状況わかってないわコイツ。まあいい、片方の手でガシッと森羅さんの胴体をつかむ。
「キュルルゥ!?」
おう? 心なしか落下速度が緩やかになったぞ! これで墜落死はなくなったな。
「……むぅー」
だが新たな問題が発生。今度はシータの機嫌が良くない。ほおを膨らませている。やはり、いきなりはマズかっただろうか?
「……まあいいですわ。役得ですもの」
なんか知らんうちに機嫌が直った。……女子の心はわからんです。
『そこかぁぁぁ!!』
やばっ、アルスター王に気づかれた! 速度がゆっくりになっただけで、落ちてることには変わりないから自由は効かない。これは間違いなく捕まるっ!! 再びロボの腕が迫ってくる。もうダメか――
「『メガばくだん乱れ打ち』!」
友瀬の声が聞こえた。
て、ちょ、友瀬ぇぇーッ!?
次の瞬間、辺りに耳をつんざく爆音と視界を塞ぐほどの濃い煙が充満する。起こった爆風で、吹き飛ばされる俺たち。ロボからは逃げられたがやばい、このままだと地面に叩きつけられる!
「神山くん。助けに……きた、よ」
ワシのような大型の召喚獣に乗った桐生が、寸での所で俺たちを拾ってくれた。
「た、助かったぁー。桐生、さんきゅ」
礼を言うと桐生は顔をフードで隠して下を向いてしまった。奥ゆかしいヤツめ。なお友瀬の爆撃は尚も続いている。……ヤツには限界が無いというのか!?
ロボから離れた場所に降ろしてもらうと、シータが「ふぅ」と安堵のため息をもらした。
「生きた心地がしませんでしたわ……」
「結果オーライ! アレの電池も壊したし、そのうち動かなくなるさ」
とは思うが、念のため森羅さんでロボを確認してみると……。
名称:魔術回路のコア(半壊)
充填率:40/50
耐久回数:99/100
「……うわぁお。地味に電池が生きてる件」
半壊してるくせに稼働してるとか、機械のくせして根性あるじゃないか。……じゃ、ねーよ! あと一息でこの巨大ロボは単なる等身大一分の一プラモデルに早変わりする訳だが、あんな高い場所にあるコアをどうしろと!?
俺がうんうんと唸っていたら、八代が近寄ってきた。ああ、こいつ確か城の外担当に立候補してたっけ。
「え、なんで巨大ロボから神山出てきたん?」
「……アレの燃料がわりにされてたんだよ」
「……まじでか」
「まじで」
「魔力供給源のリュージがいなくなりましたから、魔術人形もじきに再生しなくなると思いますわ」
シータの言葉に、一瞬「ん?」となる八代。
「それってつまり、俺らがあのデッサン人形に散々苦労させられたのは神山のせいって事で|FA(ファイナルアンサー)?」
デッサン人形てなんぞや? との俺の視線に、アゴをしゃくってソレを指し示す八代。冒険者の皆さんが壊しても壊しても再生する等身大デッサン人形に苦戦している光景だった。再生のための魔力はロボから供給されているとの事。
……お、俺は悪くねぇー! 悪いのは全部アルスター王だ!!
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