96 / 106
最終章 最終決戦だヒャッハーな件
とある侍のワクドキ☆
しおりを挟むさーて始まりました『わくどき☆家探し』のお時間です。実況は俺、北山がするぜー! 突入メンバーの中じゃ地味に影薄い気がするのは、ここだけのヒミツだぞっ!
まず俺たちの前に現れたのは地下への長い階段だった。……いいねぇ、ゲームとかじゃあ宝物庫とかは地下が定番だよな! これは期待の持てるスタートだ。
「先生、念のために一発お願いします」
「へ?」
流の一言に、先生が戸惑っている。ちなみに俺にもサッパリだ。それをみて流は更なる説明の必要があると察したみたいだ。
「階段の途中にアレが居たら厄介なので」
流が指差す方向には、さっき先生が凍らせたばかりのデッサン人形。……あー、確かに。階段で出てきたら面倒だよなぁ。動きが制限された状態で、無限再生する人形と戦うとか正気の沙汰じゃない。先生も「なるほど」と納得。
「では、やってみますね。『|吹雪よ(テンペスタ・ディ・ネーヴェ)』!」
詠唱が長いせいか、さっきの魔術とは格段に威力が違う一撃が階段を突き抜けた。うっわ、寒っ!
「それじゃあ行きましょうか!」
「そうだねっ、おたからおたからー」
やたら張り切ってる新名と佐伯。……うん、まあ最初にお宝って言ったの俺だけどさ、張り切りすぎじゃね?
まあ、そんな訳で階段を降りて行った俺たち。案の定、途中には凍りついたデッサン人形が何体かいた。流、グッジョブ!
長い長い階段の先にあったのは――
「トレジャーハンティング的にはハズレよね、これ」
「立派な地下牢ですね、ありがとうございますー」
落胆する俺たちだったが、気付きの達人流の兄貴は違った。
「あれだけの数のデッサン人形を配置してたんだ。何かしらあるのは間違いないだろうよ」
「反王政派の役人さんとかだと、今後助かるわねぇ……」
先生はもう終わった後の事を考えてんのか……気が早すぎじゃねぇ?
そんな時。
――キィィィン。
やたら甲高い音が奥から響いてきた。金属が擦れるようなそんな音。不思議と不快感はない。
「これは……!」
何かに気がついた流が一目散に奥へ走り去った。ちょ、え、流サーン!? 意外と戦闘能力があるとはいえ、さすがに一人にするのはやばい。俺たちも慌てて後を追った。
そうして追いかけた先には――
音の発信源と思われる鞘に入った刀を持った男のほか、数名が牢屋に入れられていた。……つか、あの刀って神山のじゃね?
「おい、あんた! その刀何処で手に入れた!?」
今にも鉄格子を破りそうな剣幕でまくし立てる流。……そうだよ! 神山が肌身離さず持ってるはずの刀がここにあるっておかしいじゃん!
「あんたは……『鍛治師』さんっすか!」
最初は警戒していた男だったが、流の正体に気づくと途端に態度が変わった。
「リュージ君を助けてやって欲しいっす!」
「神山君に何があったんですか!?」
先生が鉄格子に飛びつく。あいつだけは何があっても大丈夫そうだと思っていただけに、皆が驚いた。
「俺たちが人質にされたばかりに、王に捕らえられてしまったっす……」
……神山を捕まえてナニする気なのか、サッパリ見当がつかない。エロい事じゃないのを祈るばかりだ。女子ならともかく、野郎のエロとかイラネー。
とりあえず、この人達をこのままにしておくのもマズイので、一旦牢屋から解放した。鍵? そんなものは俺の居合斬りで一刀両断だったさ!
そんな時、小耳に挟んだのは。
「にえ?」
「多分、生け贄って意味だと思うっすけど……王さまがリュージ君に、そんな話をしてたっす」
神山を生け贄にする? 神山といえば邪神サマな訳だが、それを生け贄にするってかなりヤバくね? 黒魔術的なイメージで。
「……あの、神山くんと一緒に女の子がいませんでしたか?」
おずおずと男――ヴァルというらしい――にたずねる佐伯。そうだよ! 神山といえばシータちゃん!!
「いや、リュージ君だけだったっす」
その返答に顔を青くする佐伯と、なぜか湯田。湯田は「ヤバイよ、ヤバイ! 下手したらブレーキ効かない暴走特急状態じゃん!」とか叫んでるが……。あー、神山といえば騎士団惨劇事件ですよねー。解放された途端に暴走したらやべーですねー……俺たち死ぬかもしんない。ブレーキ役のシータちゃんには是非、無事でいてもらいたいもんである。
結局、今回の探索の成果は神山の武器と、あいつに対する人質の解放だけだった。まー神山の刀もお宝っちゃお宝なんだが、専用装備だもんなー……。ゲームみたいにはいかないよな、現実は。
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
俺の職業は『観光客』だが魔王くらいなら余裕で討伐できると思ってる〜やり込んだゲームの世界にクラス転移したが、目覚めたジョブが最弱職だった件~
おさない
ファンタジー
ごく普通の高校生である俺こと観音崎真城は、突如としてクラス丸ごと異世界に召喚されてしまう。
異世界の王いわく、俺達のような転移者は神から特別な能力――職業(ジョブ)を授かることができるらしく、その力を使って魔王を討伐して欲しいのだそうだ。
他の奴らが『勇者』やら『聖騎士』やらの強ジョブに目覚めていることが判明していく中、俺に与えられていたのは『観光客』という見るからに弱そうなジョブだった。
無能の烙印を押された俺は、クラスメイトはおろか王や兵士達からも嘲笑され、お城から追放されてしまう。
やれやれ……ここが死ぬほどやり込んだ『エルニカクエスト』の世界でなければ、野垂れ死んでいた所だったぞ。
実を言うと、観光客はそれなりに強ジョブなんだが……それを知らずに追放してしまうとは、早とちりな奴らだ。
まあ、俺は自由に異世界を観光させてもらうことにしよう。
※カクヨムにも掲載しています
神の盤上〜異世界漫遊〜
バン
ファンタジー
異世界へ飛ばされた主人公は、なぜこうなったのかも分からぬまま毎日を必死に生きていた。
同じく異世界へと飛ばされた同級生達が地球に帰る方法を模索している中で主人公は違う道を選択した。
この異世界で生きていくという道を。
なぜそのような選択を選んだのか、なぜ同級生達と一緒に歩まなかったのか。
そして何が彼を変えてしまったのか。
これは一人の人間が今を生きる意味を見出し、運命と戦いながら生きていく物語である。
起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣
ゆうた
ファンタジー
起きると、そこは森の中。パニックになって、
周りを見渡すと暗くてなんも見えない。
特殊能力も付与されず、原生林でどうするの。
誰か助けて。
遠くから、獣の遠吠えが聞こえてくる。
これって、やばいんじゃない。
勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。
そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。
しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。
そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
【短編】悪役令嬢の侍女 〜ヒロインに転生したけど悪役令嬢の侍女になりました〜
みねバイヤーン
恋愛
リリーは乙女ゲームのヒロインである。侍女として、悪役令嬢のクロエお嬢さまに仕えている。クロエお嬢さまには孤児院から救っていただいた大恩がある。生涯仕える覚悟である。だからってねー、広大な公爵家の敷地で指輪を探すなんて、そんなこと許しませんからね。ワガママお嬢さまをうまく誘導するのも侍女の務め。お嬢さまと猛獣使いリリーの戦いが繰り広げられる、そんな平和な日常を描いた物語。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
ハルフェン戦記 -異世界の魔人と女神の戦士たち-
レオナード一世
ファンタジー
軌道エレベーターを築き上げ、月の植民地化まで果たした地球に生きるウィルフレッド。 アルマと呼ばれる生体兵器である彼は旧知との戦いのさなか、剣と魔法の異世界ハルフェンへと転移した。 彼は仲間と女神の巫女達とともに邪神ゾルドの復活を目論む邪神教団ゾルデと戦うことになるが…
カクヨムにて同時掲載中。
他のイラストレータ様のキャラ等の依頼絵はtwitterにて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる