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最終章 最終決戦だヒャッハーな件

胡散臭い助っ人

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 斉藤が連れてきた援軍と、友瀬の作った王水のおかげでいくらか数は減らしたものの、その大半が倒しても倒しても蘇る人型兵器たち。それに対峙する人間の体力が尽き始めてきた頃――

「――ラチがあかない。……仕方ないかしら」

 そう呟いたのは、今まで頑なに戦いに加わろうとしなかった長谷部だった。

「星よ巡れ――『小隕石(プチメテオ)』」

 彼女がそう唱えて杖を掲げると、空に魔法陣が現れた。そこから大小いくつもの岩が人型兵器に降り注ぐ。その威力はすさまじく何体もの兵器がひしゃげ、潰れ、崩れ落ちた。完全に潰れたものに限っては再び動く兆候はない。

「長谷部が立った!?」
「そんな裏ワザあるならどうして今まで戦わなかった!?」

 各地で起こるブーイング。しかし。

「すごく、疲れる……のよ、これ。それに私の本業占い師……」

 そんな言葉を残して長谷部は倒れた。

 彼女の行動は、人々に僅かにだが希望をもたらした。人型兵器も完全にスクラップにしてやれば蘇ることはないのだと!

 とはいえ、それができる人間は限られる。やはり詰みか、と人々が膝をつきかけたその時――

「――後頭部に命令と魔力を受信する受信機がある。それを潰すんだ!」

 青年の声が響き渡った。声の主は金髪碧眼の美丈夫。赤を基調とした見るからに上流階級とわかる服装に、皆は戸惑う。今回、敵の大部分は貴族だからだ。

 そんな空気を肌で感じたのだろう、彼は声高に告げた。

「私は、秘密結社『魔術の友』総帥のリト! リュージ君やシータ君の友人さ!」

「とっても胡散臭いです……」
「秘密結社なのに秘密にする気ゼロなのね」

 普段あまり主張しない杵築をはじめ皆がうろんな視線をリトに向けた。

「まあこいつが本当に味方かは、とりあえず奴らの頭吹っ飛ばせば判る事だろうさ」

 浅田の男前な言葉に、思わずヒュウと口笛を鳴らすリト。

「リュージの友人は面白い子が多いようだねぇ」
「あたしは普通だよ! 『爆炎(ばくえん)』!」

 叫びつつ放たれた矢は正確に敵の頭に突き刺さる。そして爆発。一気に数体の頭なし人形が完成した。バランスを崩して倒れる人形たち。

 再生は――しない。

 多くの場所から「おぉ!!」と歓喜の声があがる。

「よっしゃぁ! 突破口が見えたぁぁ!」
「でも刃物で頭潰すの無理くね? 矢で潰す姐さんやべえ……」

 盛り上がる八田に、不安の声をあげる八代。彼の槍は突く事に特化した武器だ。潰すのには向いていない。

「爆発四散系の技使えばイイじゃん」
「槍にそんな技ねーよ!」
「王水は? あれ後頭部に吹っかけたら行けるっしょ。あとは受信機をピンポイントにぶっ壊すとかさー」

 「そういうの得意っしょ、やっしーはさ」と斉藤もフォローにまわる。

「あのデッサン人形に背後から後頭部に一撃って、割と難しい気がするけど……まあなんとかするかー」

 まんざらでもない様子で呟く八代。地味に斉藤の言葉に気を良くしていた。そして突っ込んだ結果――

「ぎゃぁぁッ、首が三百六十度回転したぁぁっ!?」

 苦労して背後に回ったものの、ご覧の有様である。

「……まあ、人形ですしおすし」
「可動範囲ハンパねーですよな。つか頭を串刺しにすればいいって話じゃね?」

 姐さんみたくさー。と、視線を移した先では、浅田が人外並みの腕力でもって矢を放って一体一体確実に仕留めていた。最初に使った技は使っていないようだ。どうも制限があるらしい。
 他の場所でも、チームを組んだ冒険者たちが一体のデッサン人形相手に善戦しているのがちらほら見受けられる。

「さーて、僕らもお仕事しますか」
「そうだな、なんか八代にデッサン人形が群がってきてるし」

 あれ絶対に格下認定されてるよなー。とは八田の言である。


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