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最終章 最終決戦だヒャッハーな件
とある装飾師のひとり言
しおりを挟む「先生!」
城を進む私たちに走り寄ってきたのは、新名ちゃんたちだった。
「新名さん、流くんに北山くんも。無事で何よりです!」
大きな怪我もないようで、先生は本当に嬉しそうに声に応える。
「こっちには教官が化けて出たんだけど、そっちはどんなでした?」
え? 教官生きてたんだ?
「こっちは貴族の皆さんがコンニチワーだったよー」
先生の代わりに樹が答えた。新名ちゃんのトコにも敵がいたってコトは――
「他のみんなも今ごろ何かと戦ってるのかなぁ?」
「おそらくそうでしょう。転移の罠でバラバラにするというのは、戦力の分散が主な目的ですからね」
ふうむとあごに手を当てて流くんが呟いた。
「あちらさん、総力戦で来ているみたいだな。魔国で騎士団を無力化しておいて良かったと思うよ」
「騎士団を二、三人で相手しろって言われたら地獄だって! それを一人で無効化した神山はヤベェと思います」
北山くんも流くんと同意見みたい。私は騎士団がどれだけ強いかはわからないけど、日々接してた北山くんがそういうならそうなんだろう。なんだか神山くんがお空の上の人になりつつあるんだけどー?
「まぁ、神山くんなら大丈夫でしょう。……根拠はないけれど」
「シータちゃんも付いてるだろーしなぁ」
シータちゃんがいれば神山くんは大丈夫。そんな確信がある。魔国の地下牢でのことがあったからかなぁ?
「ここから先、目指すのはやはり玉座の間ですか、先生?」
「そうね。アルスター王が居そうなのは、その辺りしか思い浮かばないし……」
先生たちが話している間、手持ち無沙汰だったので辺りをみまわしてみると――玉座の間に行く方とは別の通路に、ぽつんと不自然な人影が見えた。
「あっちは確か……立ち入り禁止区画、だっけ?」
誰かいるんだるろうか? そう思って近づいてみると、等身大のデッサン人形が立っていた。材質が木か金属かの違いはあるけど、もうまんまそのもの。
それが腕を振り上げて――
「佐伯っちゃん危ない!」
新名ちゃんの蹴りでをうけた人形は、壁を壊しつつ横に吹っ飛んでいった。
「え? なにいまのデッサン人形?」
「なんかヤバそうな気がしたから蹴り飛ばしたんだけど……なに、アレ?」
妙に力が抜ける外見なんですけど、と新名ちゃんが呆れ顔で呟いた。その矢先に。
ガタリ。と、デッサン人形が吹っ飛んだ先から音がした。見てみると、瓦礫を押しのけて立ち上がろうとしている。人と同じ形をしているけど、普通に人には無理な姿勢を取ってて気持ち悪い。
「うげっ、新名のあの蹴り受けてもまだ動くのかよアイツ」
普段なら追及されそうな北山くんの言葉も気にならないくらいの緊張感が辺りを支配する。不気味だった。
カタリカタリと音を立てながら、ゆらりと立ち上がったデッサン人形は、再び私たちに襲いかかってきた。
「せりゃぁっ!」
今度は北山くんが鋭い斬撃で、デッサン人形の上半身を斬り落としたのだけど……。ズズズ……と、重い音を立てて下半身とくっついて再生してしまった。
「無限再生持ちか。厄介だな」
「つーか、キモいわ! 何なんだよアレ!?」
冷静に分析する流くんとは対照的に、青い顔で叫ぶ北山くん。気持ちはわかる。攻撃しても再生してゾンビみたいに迫ってくるデッサン人形とか悪夢でしょ、これ。
「倒せないのなら動きを止めるまでです! 『|凍れ(グラキエース)』!」
先生の氷の魔術でなんとか動きは止まった。でも――
「なんでこんなものが……?」
「確か、この先は立入禁止だったな……。こいつの立ち位置からするに見張りだろ」
この先には何か見られちゃまずいものがあるのかもしれん。と言う流くん。
「それってアレじゃん、絶好の突入ポイント! 上手くいけば弱み握れる系の!」
北山くんがなんだか一人盛り上がってる。でもたしかに。戦いが始まった後にも見張りを置いてるなんて「何かありますよ」って言ってるも同然だよね。
「行ってみようよ!」
私も北山くんに便乗してみた。私、ゲームとかだとラストダンジョンは隈なく調べてからラスボスに挑む系なんだ。美味しいアイテムがガッポリ手に入れば儲けものだし!
「……そうですね。アルスター王が何を企んでいるのか判らないいま、芽は潰しておくべきでしょう」
先生がうなづいてくれた。こうなったらこっちの勝ちだよ! 待ってなさいよー、未だ見ぬお宝さんたち!
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