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最終章 最終決戦だヒャッハーな件
とある聖女の嘆息
しおりを挟む「――あ、教官無事だったんだ?」
転移後に私たちの前に立ちふさがったのは、行方不明になっていた教官と強そうな兵士達だった。幸い開けた場所だから、暴れるには不足はない。
「……姿を見かけないと思ったら、国に戻っていたのか」
念入りに縛っておいたはずなんだがと、流君が首を傾げている。まぁ、私はあの教官なら、縄抜けのひとつもできるんじゃないかとは思ってたけどね。現役時代はいろんな場所を駆け巡って実践経験だけは豊富だって話だし。
「情報を流したスパイは教官で決定かしらね?」
「最初から味方じゃない奴をスパイとは言わんぞ、新名」
うっわ、流君ってば辛らつ。でもまあ事実か。
「えーっと……二人とも教官になんか恨みでもあるん?」
教養の講義以外では教官と接点のなかった北山君が、顔を引きつらせながらそんな問いを発した。
なに当然のこと聞いてんのよ、この脳筋サムライ。あの人と接点が多ければ多いほど恨みは深くなるのよ! 思い出すのは行儀作法の稽古のつらさ! 私、普通の一般家庭の生まれだから、そんなのとは無縁だったのよ? なのにあの鬼ババアったら――思い出すだけで腹わた煮え繰り返る思いだ。私は好きであの鬼教官に教えを請うた訳じゃない!
あの鬼ババア生産組の引率をしてたから、流君も似たような思いを抱いているだろう。
「とりあえず、ここで会ったが百年目ってヤツね!」
「ヤル気満々!?」
それにしても、ここに飛ばされたのは私たち三人だけみたい。戦闘職が北山君一人っていうのがちょっと不安だけど……。
「――俺も戦える。問題はない」
私の視線に気付いたのか、流君が手に持った大きなハンマーを構えなおした。……うん、殺傷能力は抜群よね、アレ。
「んじゃまあ、お先ー」
戦闘職の意地か、北山君が敵に突っ込んでいった。
「待ちなさいよ北山君! 教官は私の獲物なんだからあ!」
私も追いかけるように続く。聖女が前線に出ちゃいけないなんて誰が決めた! 私は前線もいける聖女なのよ!
「なら、俺は露払いかねぇ……」
ぽつんと残された流君がそんな事を呟きながら私たちの後に続いた。
「せいッ」
北山君の居合斬りが炸裂したけれど、浅い。敵の前列しか削れてない。
「てやぁぁっ!」
私の十八番の衝撃波を起こす蹴りをブチこんだけれども……やっぱり前列しか削れない。
どうも敵は教官に訓練された特別な部隊みたいで、削っても直ぐに補充されてなかなか教官まで攻撃が届かない。教官も自分が狙われてるのが分かってるので防御を厚くしている。防御力=部下の数な辺り、割と外道だけどあの教官だもの。驚くような事でもない。
「バラバラに応戦してたんじゃラチがあかないわ! こっちも連携するわよ!」
「了解っ!」
「承知!」
ただでさえ数で不利なんだもの。こっちも出来ることはしないとね! 急造だけど何とかなるでしょ。
「流君、そのハンマー借りるわ! 思いっきり振り上げてちょうだい!!」
私の言葉に一瞬キョトンとした彼だったけれど、直ぐに意図を察してくれたみたい。
「行くぞ、新名!」
合図と共に流君のハンマーの先端にジャンプで飛び乗る。
「えっ、ちょ、新名マジか!?」
――振り上げの遠心力を利用して一気に教官までの距離を詰める!! 北山君が動揺しまくってるけどあなたにも役割はあるのよ!
「北山くん、前衛の兵たちはよろしく!」
なーんて言ってる間に目標地点に着地。目の前には驚愕の表情を浮かべる教官。前衛の層を厚くしていたのが裏目に出たわね!
「なっ、まさか貴女一人で突貫してくるだなんて――!?」
「――問答無用、『龍翔蹴』!」
別に驚くことじゃないでしょ。現代日本じゃ単独で戦うヒロインなんて、掃いて捨てるほどいるんだから!
私の渾身の蹴りは教官もろとも数人の兵士を吹き飛ばした。
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