異世界に召喚されたら職業がストレンジャー(異邦”神”)だった件【改訂版】

ぽて

文字の大きさ
上 下
90 / 106
最終章 最終決戦だヒャッハーな件

とある聖女の嘆息

しおりを挟む


「――あ、教官無事だったんだ?」

 転移後に私たちの前に立ちふさがったのは、行方不明になっていた教官と強そうな兵士達だった。幸い開けた場所だから、暴れるには不足はない。

「……姿を見かけないと思ったら、国に戻っていたのか」

 念入りに縛っておいたはずなんだがと、流君が首を傾げている。まぁ、私はあの教官なら、縄抜けのひとつもできるんじゃないかとは思ってたけどね。現役時代はいろんな場所を駆け巡って実践経験だけは豊富だって話だし。

「情報を流したスパイは教官で決定かしらね?」
「最初から味方じゃない奴をスパイとは言わんぞ、新名」

 うっわ、流君ってば辛らつ。でもまあ事実か。

「えーっと……二人とも教官になんか恨みでもあるん?」

 教養の講義以外では教官と接点のなかった北山君が、顔を引きつらせながらそんな問いを発した。

 なに当然のこと聞いてんのよ、この脳筋サムライ。あの人と接点が多ければ多いほど恨みは深くなるのよ! 思い出すのは行儀作法の稽古のつらさ! 私、普通の一般家庭の生まれだから、そんなのとは無縁だったのよ? なのにあの鬼ババアったら――思い出すだけで腹わた煮え繰り返る思いだ。私は好きであの鬼教官に教えを請うた訳じゃない!

 あの鬼ババア生産組の引率をしてたから、流君も似たような思いを抱いているだろう。

「とりあえず、ここで会ったが百年目ってヤツね!」
「ヤル気満々!?」

 それにしても、ここに飛ばされたのは私たち三人だけみたい。戦闘職が北山君一人っていうのがちょっと不安だけど……。

「――俺も戦える。問題はない」

 私の視線に気付いたのか、流君が手に持った大きなハンマーを構えなおした。……うん、殺傷能力は抜群よね、アレ。

「んじゃまあ、お先ー」

 戦闘職の意地か、北山君が敵に突っ込んでいった。

「待ちなさいよ北山君! 教官は私の獲物なんだからあ!」

 私も追いかけるように続く。聖女が前線に出ちゃいけないなんて誰が決めた! 私は前線もいける聖女なのよ!

「なら、俺は露払いかねぇ……」

 ぽつんと残された流君がそんな事を呟きながら私たちの後に続いた。

「せいッ」

 北山君の居合斬りが炸裂したけれど、浅い。敵の前列しか削れてない。

「てやぁぁっ!」

 私の十八番の衝撃波を起こす蹴りをブチこんだけれども……やっぱり前列しか削れない。

 どうも敵は教官に訓練された特別な部隊みたいで、削っても直ぐに補充されてなかなか教官まで攻撃が届かない。教官も自分が狙われてるのが分かってるので防御を厚くしている。防御力=部下の数な辺り、割と外道だけどあの教官だもの。驚くような事でもない。

「バラバラに応戦してたんじゃラチがあかないわ! こっちも連携するわよ!」
「了解っ!」
「承知!」

 ただでさえ数で不利なんだもの。こっちも出来ることはしないとね! 急造だけど何とかなるでしょ。

「流君、そのハンマー借りるわ! 思いっきり振り上げてちょうだい!!」

 私の言葉に一瞬キョトンとした彼だったけれど、直ぐに意図を察してくれたみたい。

「行くぞ、新名!」

 合図と共に流君のハンマーの先端にジャンプで飛び乗る。

「えっ、ちょ、新名マジか!?」

 ――振り上げの遠心力を利用して一気に教官までの距離を詰める!! 北山君が動揺しまくってるけどあなたにも役割はあるのよ!

「北山くん、前衛の兵たちはよろしく!」

 なーんて言ってる間に目標地点に着地。目の前には驚愕の表情を浮かべる教官。前衛の層を厚くしていたのが裏目に出たわね!

「なっ、まさか貴女一人で突貫してくるだなんて――!?」
「――問答無用、『龍翔蹴』!」

 別に驚くことじゃないでしょ。現代日本じゃ単独で戦うヒロインなんて、掃いて捨てるほどいるんだから!

 私の渾身の蹴りは教官もろとも数人の兵士を吹き飛ばした。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

処理中です...