上 下
85 / 106
最終章 最終決戦だヒャッハーな件

準備はいいか、ヤローども!

しおりを挟む


 ソロンさんを王都の冒険者ギルドまで送った俺たちは、その足で城の前までやって来ていた。城唯一の入り口は跳ね橋が上がっていて入ることはできそうにない。と、思ったのだが――

「降りてますわね、橋」
「だなー」

 しかも「いつでもおいでませ」と言わんばかりに、門も開いている。

「明らかに罠といった感じだけれど……」

 甲斐先生が皆の心を代弁した。国境やら王都の入り口を厳重に封鎖して置いて、城だけコレってどうなんだ? 来て欲しいなら来て欲しいって素直に態度で表せよ!! 一周回ったツンデレか!? まったく可愛さなんて感じないが。

「念のために何人か外に残すか? 戦いに向いてない面子もいるしな」

 罠を警戒する流の兄貴がそんな提案を一つ。確かに生産職組なんかは戦えないことはないが、戦闘に向いているわけでもない。特に今回は恐らく対人戦が主になるだろうから、出来れば戦い慣れている奴らで固めるのが望ましい。

「そう言う流は残るのか?」
「俺は行く。コレがあるからな」

 と、手に持ったどデカイ鍛治用ハンマーを指差す流。……それ当たったら相手、普通に死んじゃわないですか? いいのか?

「そん時はそん時だな。こんな世界に来といて、何時までも綺麗な手のままって訳にもいかんだろ。特に俺は武器を作る職人だしな」
「うを、兄貴かっこいー」
「お前がそれ言うと皮肉にしか聞こえないんだが、神山」
「なんでだ?」

 意味がわからない。「お前な……」と何かを言いかけて、「いい、やっぱり何でもない」とか、言動がおかしいぞ?

 他にも意外な人物が立候補した。

「はいはーい、私も行きまーす!」

 佐伯である。つか、お前、装飾師だろ!? 戦闘で何の役に立つと?

「針と糸の扱いならまっかせて!」
「いや、だから針と糸で何をすると――」

 言いかける俺の目前にサッと差し出された、やたらでっかい針。腕くらいある。……ナニニツカウツモリナンデスカ、この針。

「この針と糸で、兵士さんたちを無傷で縛り上げたり……トカ?」
「…………針、いらなくね?」
「護身用ってことで!」

 誤魔化したな、こいつ。

「だってー、樹(いつき)も行くらしいし」

 え、そうなん? とか言いつつ『樹』て誰やねんと内心ツッコミを入れる俺。答えはすぐに出た。

「いや、みゆきち。戦闘にバフは付き物っしょ?」

 なんだ湯田の名前か。名前で呼び合うとか幼馴染やべぇ。どこのラノベだ?

「樹がオーケーなら私だってアリだよね、神山くん?」
「アリです、アリだから! 針の先をコッチ向けんな!」

 というわけで佐伯と湯田が突入メンバー入り。まあ最低限、自分の身が守れるなら問題ないか……。ただ、積極的にメンバー入りを狙う面子もいれば、そうでない面子もいた。

「あたしはパス。スナイパーは屋内より野外待機のがイイでしょ?」
「私もパスね。占星術師なんて戦闘力皆無だもの。みんなの無事を祈っておく」

 浅田の姐さんと、長谷部がリタイア宣言。他にも突入を渋ったのは、やはりというべきか女子が多い。護衛名目で居残りを希望する野郎どもも割といた。下心が透けて見えるぞお前ら。

 というわけで最終的には――

 俺、シータ、早乙女、石田、新名、甲斐先生、北山、流、佐伯、湯田の十人が突撃メンバーになったのだった。回復役が新名と甲斐先生くらいしか居ないけど大丈夫なん? いや、まあ友瀬が山のように回復薬をシータに渡してたからいいのか? しっかし、見事な脳筋パーティーである。……俺も含めて。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!

林檎茶
ファンタジー
 俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?  俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。  成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。  そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。  ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。  明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。  俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。  そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。  魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。  そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。  リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。  その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。  挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

妖精王オベロンの異世界生活

悠十
ファンタジー
 ある日、サラリーマンの佐々木良太は車に轢かれそうになっていたお婆さんを庇って死んでしまった。  それは、良太が勤める会社が世界初の仮想空間による体感型ゲームを世界に発表し、良太がGMキャラの一人に、所謂『中の人』選ばれた、そんな希望に満ち溢れた、ある日の事だった。  お婆さんを助けた事に後悔はないが、未練があった良太の魂を拾い上げたのは、良太が助けたお婆さんだった。  彼女は、異世界の女神様だったのだ。  女神様は良太に提案する。 「私の管理する世界に転生しませんか?」  そして、良太は女神様の管理する世界に『妖精王オベロン』として転生する事になった。  そこから始まる、妖精王オベロンの異世界生活。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

史上最低最凶の錬金術師~暗黒カエル男のサバイバル&ハーレムもの~

櫃間 武士
ファンタジー
俺の名前はカエル男、16歳。 もちろんあだ名に決まってます! 俺は高校デビューに失敗してイジメに遭い、毎日引きこもってゲームをしていた。 それなのにたまたま登校した日に限って、学校にいた奴らと一緒に異世界に転移してしまったのだ。 俺は偶然、万物の創造と破壊のマニュアル本「エメラルド・タブレット」を手に入れ、史上最強の錬金術師となった。 こうなったら、本音建前使い分け、他の奴らは蹴落として、美少女集めて俺だけのハーレムを作ってやるぜ!ゲロ!ゲロ!

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...