異世界に召喚されたら職業がストレンジャー(異邦”神”)だった件【改訂版】

ぽて

文字の大きさ
上 下
84 / 106
最終章 最終決戦だヒャッハーな件

夜の墓場でラジオ体操

しおりを挟む
 モンスターの亡骸の口から出て来たライさんを見て、声も出せずに固まってしまう。
だってそれもそうだろう、死んだと思っていた人がいきなり目の前に出て来て平静を装える人がいるわけない。

「ラ、ライさん……?」
「ん?あぁ……、レース君何故君がここにいるんだい?首都に行った筈じゃなかったかな」
「あ、えっと……」
「顔が真っ青だね、暫くゆっくり深呼吸して落ち着いた方がいい、落ち着くまで待ってるからね」

 ライさんはそういうと中にある袋のような物を口から外すと綺麗に折りたたんでいく。
とりあえず言われたように深呼吸をして、少しずつ気持ちは落ち着いては来たけど……冷静になる程彼がどうしてあの超広範囲を灰にする攻撃の中で生き残れたのかが疑問に思ってしまう。

「さて、落ち着いたかい?」
「……はい」
「なら良かった、とりあえずレース君の事だからどうして俺が生きているのか気になっているのだろうから……先にそっちを答えるよ、さっき出て来た袋に付与された魔術と能力のおかげだよ」

 手に持った袋をぼくに見せてそういうけれど、あれは多分【空間収納】の魔術が付与された魔導具だと思う。
ただ素材が布だから燃えたら意味が無いと思うし、それ以上に空間収納の中に人が入れる何て聞いた事が無い。

「……空間収納に人が入れるの?」
「勿論入れるさ、ただ本来であれば術者が中に入ったら最後……出てこれないという意味ではとても危険だね」
「そうなんだ……、なら魔導具が壊れてしまったら出てこれないんじゃ?」
「そこはトキに付与して貰った能力のおかげだね、ハスと組む事が多いから俺の着る服や道具には【不燃】という一定時間燃えないようになっているんだ」
「あぁ……ハスの戦い方はいつも周辺に炎をばらまくから、確かに必要かも」

 たまたまそういう火属性や、その派生形に対して耐性がある装備をしていたから助かったという事だったみたいだ。
そのおかげで今こうして生きているのだから、本当に良かったと思う。

「ただこの能力は発動してから魔力が尽きるまでの間決して燃える事が無い変わりに、非常に燃費が悪くてね……使えても半刻が限度だよ」
「一時間も使えるなら充分な気がするけど?」
「君はまだ体験してないから分からないと思うけど、ハスの特性【陽炎】は周囲の温度を急上昇させ近づく事さえ困難な状況を作り出すからね、状況次第では半刻でも足りない位だよ」
「一緒に戦ってる時に使ってるの見なかったけど……そんなに危険なんだ」

 本当にそんな能力があるなら、使われた時に耐える事が出来るだろうか……。
……ただアキラさんと一緒に行動していた際に使っていただろうし、もしかしたら何らかの方法があるのかもしれない。
例えば自身の属性を纏ってみるとかだろうか、雪の魔力で冷気を纏えば熱気に耐えられるかも、ハスと合流したら相談してみようかな。

「それにしても驚いたよ、俺がアンデッドの身体を詳しく調べていたら、ドラゴンのアンデッドが現れてね」
「周囲に人のアンデッドもいたから危なかったんじゃ?」
「人のアンデッドに関しては雷の魔術で、筋肉を収縮させて動けないようにしておいたから問題無かったけど、ドラゴンに関しては不意を突かれたから反応に遅れたよ」
「……よくその状態で生き残れたね?」
「俺もそう思うよ、あの時遠くから閃光が近づいて来るのに気づいて咄嗟にドラゴンの口に魔導具をひっかけて中に入らなかったら間違いなく死んでたよ、そういう意味ではこの個体に感謝しないとね」

 そう言ってドラゴンの方を向くと深く頭を下げて動かなくなる。

「ライさん?」 
「ん?あぁ、そういえばメセリーにはこの風習は無かったね、栄花では死者に向けて目を閉じてお辞儀をした後暫く心の中で感謝の気持ちを伝える風習があるんだよ、君の育った国だと死者は直ぐに火葬した後に魔術で圧縮して魔力の篭った宝石にするんだったよね」
「そうらしいけど、身近で亡くなった人を見たこと無いから……経験した事は無いかな」

 メセリーでは亡くなった人を宝石にする事で、その人が生前使えた魔術を込められた魔力の量に応じて使えるようになるらしい。
過去に【魔王】ソフィア・メセリーに、歴代の魔王の遺体を宝石に加工して指輪にしたものを見せて貰った時は綺麗に見えたけど、何時かはぼくも誰かを宝石にする日が来るのだろうか。
育ての親であるカルディア母さんか、又は老いて死別することになったダートかカエデのどちらかかもしれないし、無いとは思うけどルードとの戦いで死んだらぼくがそうなるかもしれない。

「まぁ、いずれ経験する事になるよ」
「ライさんは経験した事あるの?」
「勿論あるさ、栄花騎士団の任務で殉職した仲の良かった団員の葬式とかね……ってつい話が長くなって変な所に行ってしまったね」
「いえ、結構来てて楽しかったから大丈夫だよ」
「そう言って貰えると嬉しいけど、今はそれよりもどうしてここがこうなって、首都に行った筈の君が俺を探しに来たんだい?」

……ライさんの質問に答えるように、彼に会う前に【滅尽】アナイス・アナイアレイトとの間に起きた事や、その後のぼく達の行動について話すのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

異世界に転移したからモンスターと気ままに暮らします

ねこねこ大好き
ファンタジー
新庄麗夜は身長160cmと小柄な高校生、クラスメイトから酷いいじめを受けている。 彼は修学旅行の時、突然クラスメイト全員と異世界へ召喚される。 転移した先で王に開口一番、魔軍と戦い人類を救ってくれとお願いされる。 召喚された勇者は強力なギフト(ユニークスキル)を持っているから大丈夫とのこと。 言葉通り、クラスメイトは、獲得経験値×10万や魔力無限、レベル100から、無限製造スキルなど チートが山盛りだった。 対して麗夜のユニークスキルはただ一つ、「モンスターと会話できる」 それ以外はステータス補正も無い最弱状態。 クラスメイトには笑われ、王からも役立たずと見なされ追放されてしまう。 酷いものだと思いながら日銭を稼ごうとモンスターを狩ろうとする。 「ことばわかる?」 言葉の分かるスキルにより、麗夜とモンスターは一瞬で意気投合する。 「モンスターのほうが優しいし、こうなったらモンスターと一緒に暮らそう! どうせ役立たずだし!」 そうして麗夜はモンスターたちと気ままな生活を送る。 それが成長チートや生産チート、魔力チートなどあらゆるチートも凌駕するチートかも分からずに。 これはモンスターと会話できる。そんなチートを得た少年の気ままな日常である。 ------------------------------ 第12回ファンタジー小説大賞に応募しております! よろしければ投票ボタンを押していただけると嬉しいです! →結果は8位! 最終選考まで進めました!  皆さま応援ありがとうございます!

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

処理中です...