異世界に召喚されたら職業がストレンジャー(異邦”神”)だった件【改訂版】

ぽて

文字の大きさ
上 下
79 / 106
6章 隣国と和平会談する件

革命をおこすぜ!

しおりを挟む
「くそ……」

「相変わらずな笑い方、ウザ……」

「釘井先輩、知っているんですか?」

 超慈がステラに尋ねる。

「まあ、多少ね……」

「多少とは寂しいことを言うじゃねえか!」

 声を上げながら明るい髪色で短髪の青年が姿を現す。上にはジャージを羽織り、下にはハーフパンツをはいている。超慈が目を細める。

「あいつが……」

「まさか待ち伏せしているとはね……」

「俺ら体育科はこの時期、体育祭の準備で色々忙しい! そこを狙ったのはわりといい線行っていたが、俺ら『合魂団』にはお見通しだったぜ!」

「合魂団……」

「そう、合魂団の実質ナンバー2……」

「おっと、名前くらい名乗らせろよ……朝日燦太郎(あさひさんたろう)とは俺のことだぜ!」

 燦太郎と名乗った男は自らを指差して豪快に笑う。

「部長の話にあった朝日燦太郎……」

「パイセンの言っていた通りに馬鹿っぽいでしょ?」

「おいおい、馬鹿とはなんだ、馬鹿とは! ってか、あの人、そんなこと言っていたのか⁉ 地味に傷つくぞ!」

「いえ、部長は超のつく脳筋だと言っていました」

 超慈は訂正を入れる。

「おう、そうかそうか……って、同じようなことじゃねえか!」

「ニュアンス的には褒めている感じでしたが……」

「感じでも駄目だろう!」

 燦太郎は大声を上げる。ステラがうんざりしたように呟く。

「そうやって、すぐ騒ぐところがウザいっての……」

「声がデカいのはしょうがねえだろう! 体育会系は声出してナンボだからな!」

「まあいいや……一応聞いておこうと思うんだけど……」

「うん?」

 燦太郎が首を傾げる。

「朝日……パイセンが戻ってこないかだってさ」

「断る!」

「だろうね」

 燦太郎の返答に対し、ステラは肩をすくめる。

「ただ、どうしてもというのなら……」

「いや、いいや。別に無理にとは言わないから」

 ステラが手を左右に振る。燦太郎が慌てる。

「お、おい! 人の話を聞け!」

「いいよ、別にもう……」

「興味を失うな!」

「もとよりウチは興味ないから、興味があるのは部長だし……」

「お前や竹村は戻ったらしいな!」

「まあね」

「何故だ⁉」

「何故って……居場所が急に無くなっちゃったようなものだからね」

「倶楽部も同好会も大分派手にやられたようだな?」

「そうだね」

「噂程度には聞いているが、この短期間で一年連中を灰冠さんが鍛え上げたのか?」

「あの人に育成手腕があるとマジで思っているの?」

「全く思わねえ!」

「そうでしょ」

「部長、随分な言われようだな……」

 2人のやりとりを聞きながら、超慈が呟く。燦太郎が顎に手をやって頷く。

「ということは……一年の奴らがなかなかやるということか」

「見たところ、それなりの魂力を持っているよ」

「その眼鏡くんも一年だろう? 膝をついてしまっているが?」

 燦太郎が超慈を指差す。ステラが間髪入れず答える。

「この子はアンタと同じ『脳筋枠』だから」

「フォ、フォローなし⁉」

「俺はそんな枠に入った覚えはねえぞ!」

 ステラの答えに超慈は驚き、燦太郎は憤慨する。ステラは立ち上がる。

「ウチとしてはマジでどっちでも良いんだけど……例えば、合魂団を潰せば……アンタも聞く耳を持ってくれるってことかな?」

「出来るもんならな!」

「来るよ!」

 ステラが超慈に声をかける。超慈も慌てて体勢を整える。

「遅い!」

「ぐっ!」

 超慈は吹き飛ばされる。ステラが声をかける。

「大丈夫⁉」

「ま、まともに喰らっちまいました。なんてスピードだ……」

「それはそうだろう。なんてたって……」

 燦太郎が自分の靴を指差す。ステラが口を挟む。

「『魂武亜棲(コンバース)』……あいつの魂道具だよ。あれであいつの元々の俊足が更に強化されている」

「お、俺より早く説明すんじゃねえよ!」

 燦太郎が憮然とする。仰向けに倒れていた超慈が半身を起こして呟く。

「なるほど……そういう魂道具もあるのか……」

「どう、やれる? 無理そう?」

「いや、美人の前で弱音吐いていられないでしょう……」

「! び、美人って……」

 超慈の言葉にステラは顔を赤らめる。燦太郎が叫ぶ。

「隙ありだぜ! 釘井! お前の魂力を頂いてやるぜ!」

「⁉」

「なっ⁉」

 ステラに飛びかかった燦太郎が驚く。自身が繰り出したキックを超慈が刀で受け止めていたからである。

「ぐっ……それ!」

「ば、馬鹿な……何故反応出来た?」

「俺の魂道具、魂択刀は魂を選ぶ刀……故に高い魂力を感知することが出来る……」

「な、なんだと⁉」

「……ような気がする!」

 超慈の言葉にステラがずっこける。

「ちょ、ちょっと感心しかけた気持ち返してよ!」

「結果オーライでしょう!」

「ちっ!」

「む⁉」

 燦太郎が姿を消す。ステラが慌てる。

「また見失った!」

「落ち着いて! 右斜め前に糸魂蒻を!」

「⁉ えい!」

「ぐおっ⁉」

 ステラの繰り出した糸に片足を絡め取られた燦太郎は転倒する。

「や、やった⁉」

「魂力を感知出来るって言ったでしょ?」

「くそ……『力任せ蹴り』!」

「なっ⁉」

 燦太郎がもう片方の足で糸を切ったことに超慈は驚き、ステラは舌打ちする。

「それなりの硬度の糸を蹴りで切った⁉ これだから脳筋は!」

「小細工は要らねえ! 正面から蹴り飛ばす!」

 燦太郎がステラたちに突っ込んでくる。ステラが糸を繰り出す。

「くっ! なっ⁉」

「脳筋でもそれなりに考えるぜ!」

 燦太郎が後ろに回り込んでステラの背中を狙う。

「しまっ……⁉」

「もらった! なにっ⁉」

「そうはさせねえ!」

 再び超慈が燦太郎のキックを刀で受け止める。燦太郎が苦い表情になる。

「またか、眼鏡! いい加減しつこいんだよ!」

「その言葉そっくり返すぜ!」

「ちぃ!」

 超慈の振るった刀を燦太郎がかわす。

「くっ、素早い!」

「動きが読めても捕まえらえなきゃ意味ないぜ!」

「釘井先輩! 糸を俺に巻き付けて!」

「ええっ⁉」

「速く!」

「そ、それ!」

 ステラは言われた通りに超慈の体に糸を巻き付ける。超慈は叫ぶ。

「強く引っ張って下さい!」

「う、うん!」

「あ~れ~!」

 糸がほどけた超慈がコマのように回転する。回転によってグラウンドの芝が舞う。

「⁉ くっ! 芝が目に……!」

「動きを止めたな! そこだ! ……って、め、目が回る……」

 超慈がフラフラとしながらも燦太郎との距離を詰める。

「しまっ……!」

「喰らえ!」

「ぐはっ……!」

 超慈が強烈な頭突きを喰らわせ、燦太郎は仰向けに倒れる。

「脳筋同士らしい決着なのかな……?」

 ステラが首を傾げる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

処理中です...