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6章 隣国と和平会談する件

意外と独占欲が強かった

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「――はぅあ! 俺は一体!?」

 気付いたら兵士さんにおんぶされていた今日この頃! 何があったらこうなるんだ??

「あっ、神山くん起きたー」
「神山っち、頭のたんこぶ大丈夫?」

 うむ、そういえばコボルト君ちゃんさんに思いっきりこん棒で殴られた記憶があるな! ……レベルが上がってなきゃ死んでたとこですよ、シータさんや。

「キュルルー」

 おう、お前もいたか森羅さんよ。まーた小さくなってるがどういう仕組みなんだ、これ。

 …………ん?

「って、湯田に佐伯!? いつの間にパーティーインを!」
「あははー。神山くんとシータちゃんが連れ立って何処かに向かってたからデートかなぁって」
「つまりデバガメってやつだね!」

 そこで胸を張るな湯田、覗きは犯罪だぞ。それにしても。

「二人はダンジョン攻略行かなかったん?」

 時間的にみんな攻略に出発した後だと思ってたんだが。

「まー私の場合、街でも材料手に入るからダンジョン攻略必須じゃ無いし」
「ぼくなんて、みんなが作ったものに付加魔術かけるだけですしー」

 二人の職業上前線に立つってのはあまり考えられないし、別にレベル上げの必要も無いって訳か。ま、生産職と後衛職だもんな。

「それにしてもヒマだねー。神山くんどっか面白い場所知らない?」
「ヒマって……なぁ、俺は草刈りしたらダンジョン組に合流しようと――」

 それにずっと城にいたから、正直言って街になにがあるとかよく知らない。聞かれても困るんだよなぁ。

「なら私がご一緒しましょうか?」

 俺が答えに詰まっているとシータが、二人に申し出た。……まぁ、彼女なら俺よりは目立たないから大丈夫か。

「ええっ、シータさんが!? よっしゃ!」
「やったー、美少女と一緒に観光!」

 おーい。なんか反応が俺とはダンチではないですか、佐伯に湯田よ。

「いいよ、どーせ俺と一緒に街に行ったって楽しめないもんな……俺は俺で草刈りを楽しむんだ……」

 ふふふ、一人でも寂しくないもんねー。そういえば告白以来シータとデートっぽい事とかしてないのに先越されたとか思ってないからなぁ! 特に湯田ァァ!

「うを!? なんか神山っちがすごい形相でぼくを見てるんですけどぉぉ!?」
「これは……嫉妬ね!」
「ちょ、みゆきちぃ! 助けてはくれないの!?」
「私というものがありながらシータさんにデレっとした罰でーす」
「そんなぁぁ……」

 佐伯の名前はみゆきっていうのか。初めて知った。そういや佐伯と湯田は幼馴染らしいって聞いたことある。

「ククク、湯田よ。後で覚えとけよ」
「ちょ、怖い怖い。神山っち怖い」

 クックック。恨むなら軽薄な自分と、薄情な幼馴染を恨むんだな!

「二人ともそのくらいにしておあげなさいな。ユダがあまりにも可哀想です」
「えー、でもこいつ。俺より先にシータとデートっぽいことするっていうじゃん?」
「私もいるけどねー」
「女子は許す」

 たまにはシータも女子同士で出かけると良いだろう。だが男子同行は許さん。俺は独占欲が強いのだ。

「というわけで、湯田。お前は俺と一緒に草刈りだ」
「ええっ? ナンデ草刈り!?」
「楽しいぞー、草刈りは」
「キュルッ」

 森羅さんも「まあ、ガンバ!」と湯田にエールを送っている。お前は普通にこっち来るんだなー。

「――じゃ、神山くん。また後でねー」

 そう言って佐伯とシータは連れ立って行ってしまった。

「それじゃあ俺たちも行くか」
「えええ、ぼくが草刈り行くのは確定なの!?」
「別に嫌なら眺めてるだけでもいいぞ? ただし女子との合流は却下」

 どうしても行くというなら俺の背を越えていけ! ……越えられるものならな!

「ううっ、大人しく眺めておきます……」

 素直でよろしい。


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