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6章 隣国と和平会談する件
一度壊れたものは修理後もこわれやすい
しおりを挟む今すぐに「かしこさ」を引き上げるのは無理なので、とりあえず話を先に進めることにした。うん、あれだ。小さい方でも、大きい方並みのブレスが吐ければ脅しとしては十分な訳で……。
「キュルッ!」
おお! なんかめっちゃやる気に満ち溢れてるな、森羅さん。
「キュルゥーー!」
気合いの入った鳴き声と共に、森羅さんの口元に何かエネルギーっぽいものが集まっていく! いけるか!?
――と期待に満ち溢れた瞬間もありました。
「キュルッ!」
気合いに満ちた森羅さんの声と共に、ぽひゅん。と、気の抜ける音を残してブレスは不発に終わった。
「……所詮、小さいほうはマスコット枠か」
鑑定能力でスペック使い切ってるんですね、わかります。とか思ってたら――
「むしろ不発で良かったですわ! 成功していたら、私達まで生き埋めになってしまうではありませんか!」
プリプリとシータが怒りの表情で仁王立ちしていた。おおう、確かに! ここ地下だった!!
さて、こんな俺たちのコントのようなやり取りを始終目撃していたアルスター騎士団の生き残りの皆さん。笑いを堪えてる奴とかいるんですけど。中にはあからさまに嘲笑浮かべているのもいる。……この空気じゃ俺が尋問するとか無理っぽくね?
「あの時の勢いは、どうやら火事場の馬鹿力の類いだった様だな?」
騎士団の残りの中で一番偉そうな奴が見下す様に言ってきた。さっき嘲笑浮かべてた奴だ。事実だが、改めて言葉にされるとムカつく!
「我らの誇りにかけて何をされようとも口を割ったりはせんぞ」
あの野郎、こっちが弱いとわかった途端に手のひら返しやがった! それにしても「誇り」ねぇ?
「無防備な街に裏から奇襲をかけようとしていた方々に誇りなどあるとは思えませんが?」
「しかもお前ら、陽動にうちのクラスメート使いやがってたよなぁ?」
いくら上級職連中が揃っているといっても、対人には慣れていない……それも年端もいかない連中を、魔王軍にぶつけようとしていた奴らに誇りなんてあるものか。
……ああ、思い出してたらなんかイライラしてきたな。
そう言えばこいつらシータに容赦無く攻撃してたんだろうな。いくらシータに沢山の護衛の魔物がいると言っても、ダンマス戦ではダンマスを狙うのが常套手段だ。きっと、彼女を集中攻撃していたに違いない。俺が駆けつけた直後、彼女から力が抜けた瞬間の記憶が脳裏をよぎった。傷だらけでボロボロだった彼女の姿。
――よし、アイツら殺そう。
クルリと何かが切り替わった気がした。背後、小さな森羅が居たあたりでごおっと風が巻き起こる。
「ガルァァ!」
風がおさまった頃にはデカイ森羅が。おい初回特典とか嘘じゃねーか。
「え? リュージ、一体何を!?」
シータが戸惑っているが話は後だ。とりあえず生き残りどもから情報を搾り取って――始末しないと。
「おい、オマエラに今回の魔国入り指示を出したのは誰だ?」
「ふ、ふん、いくら脅そうが我らは――」
持っていた刀を抜いて居合い斬りを縦に一太刀。衝撃波は鉄格子すら切り裂いて、発言していた騎士の皮一枚切り裂き、背後の壁に縦長の傷跡を残した。
「答えろ」
「大臣の命令で……」
「――不合格」
今度は森羅が加減した極小ブレスを騎士の頭上スレスレに放った。
「正直に答えろ。もっと上に指示した奴が居るんだろう?」
下手しなくても他国に騎士団が足を踏み入れてる時点で領土侵犯になりかねないんだ、大臣ごときの命令であるものか。たとえ魔王討伐のお題目があったとしても、だ。
「お、王です! 王の命令で我らは――」
「おい、こら! 貴様騎士の誇りは!」
脅していたのとは別の騎士が、耐えきれずに口を開いた。代表の騎士が慌てて昏倒させたが、遅い。
「シータ、証言は取れたぞ。もう要らないだろうコイツら?」
「まだ要りますから! 落ち着きなさいな、リュージ!」
俺はこの上なく落ち着いてるんだが、これ以上どう落ち着けと?
ふと視線を移してみると、案内役の兵士が「邪神様さすが邪神様!」とか混乱した様子で呟いているがどうしたんだお前は。
「ああ、もうっ! 自覚がないのが末恐ろしいですわねっ!」
仕方ないですわと呟くとシータはコボルトコンビを呼び出して――
「遠慮なくやっておしまいなさいな!」
そしてコボルト達のこん棒が迫ってきた映像を最後に、俺の意識は途切れた。
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