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6章 隣国と和平会談する件

準備運動は人それぞれ

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「――という訳で、魔王さんよ。穴場のダンジョンがあれば教えて欲しい」

 特産物は作物なんかを除けば、だいたいダンジョンで手に入れるのがこの世界の常識……らしい。早速、情報提供を求める流。ほかの和平交渉に参加予定の無いやつらもウズウズしだした。――って、おい。

「流さんや、会議はまだ終わってねーぞ」
「基本方針は魔族と人間の和平。で、俺らは結果待ち。詳細は交渉に行くやつらで詰めれば十分だろう?」

 バックレる気満々か! 俺だって行かない方のグループなのに、最高責任者扱いだから残らなきゃならんというのに!
 ……え? 親善大使の役目? それは勇者に譲ります。勇者が親善大使した方が、邪神より説得力あるじゃん。という訳で俺ばっか損してる気がする。

「いやいや、こういう時こそクラスの団結力を見せるべきだとは思わないか?」

 絶対に逃さねぇぞ……!

「門外漢が口を出したら纏まるモンも纏まらなくなっちまう。なら、自分に出来ることをするだけさ」

 きゃー兄貴かっこいい! なんて言わねーからな! ……そりゃ、小難しい事考えるより、何も考えずにダンジョン攻略してた方がラクですよねー。俺もそうしたい。

「出来る事、なんて格好良さげに言ってもダンジョン攻略は暇つぶし以外の何者でもないよな?」
「攻略のち生産。ラスダン近くの素材で作ったヤツなら、さらなるパワーアップが望めるだろ?」

 趣味は実益を兼ねるんだぜ、とか言い出す流。お前の鍛治仕事は趣味だったんかい! つーか、これ以上パワーアップしてどうするんだよ!? 現状ですら過剰気味なのに!

 他の奴らも、なんか最終決戦に向けてのウォーミングアップ的な過ごし方をしたいらしい。

 ……なんだかんだ言いつつ、みんなこの世界に順応してんな。

 ――ところで。

 皆が当然あるものと思ってる様子の「最終決戦?」だが――誰とするんだ? 今回魔王と邪神はラスボスじゃないぞ? ……あれ、なんか俺だけ置いて行かれてない?

「敵ならアルスターが残っているじゃありませんか」
「あー、そういえば」

 シータの指摘で思い出した。

 騎士団から仕掛けてきたのを撃退しただけだが、生き残りたちの証言――正当防衛――をあの国は認めないだろう。それにあのプライドだけは図太い王族や貴族達が和平交渉に応じるとも思えない。

 いやー、一番嫌いだった騎士団長が居なくなったからすっかり存在も忘れ去ってたぜ……。だって王族や貴族は最悪でも、一般市民はいい人ばっかだからなあの国。まあ俺がまともに過ごしたの、王城とオルレットくらいだが。

「……そうか。和平交渉の後にはあの国との対立が待ってるのな」
「元の世界に帰る方法を本当に知ってる可能性がまだ残ってる。だが奴らが素直に吐くとも思えんしなぁ」

 シータやガーディナーのリトは完全否定してたが、二人の情報が百パー合ってるかなんて誰にもわからない。流や他のみんなはその辺りを危惧しているようだ。

「あの国との潰し合いが待ってるなら、俺も修行するかねぇ」

 レベル上げたらスキルの制限も無くなりそうな気がする。……おおっ、何だか急にヤル気が出てきたぞ! というわけで後の頭脳労働は頼んだ、シータ&ルージオ!

 勢いに任せて会議室から飛び出す俺。他の暇人たちも後に続いてきた。

「よーし、まずはウォーミングアップに中庭の草刈りするぞー!」

 片手振り上げそう言った途端に、後ろでズゴっとなにか沢山のものが倒れる音がした。振り返ると、後をついてきた連中がドミノ倒しになっている。……あっぶねーな! 職業の恩恵でステータスが上がってなきゃ大惨事だぞ!?

「こっち来てからそればっかだよなぁ、お前は!!」
「もう、草刈太郎とかに改名しちゃえよ、神山っち」

 先陣ついて来ていた流と湯田が、一番下でなんかモゴモゴ言ってるがキコエナーイ。俺は定期的に草刈りしないと生きて行けない体になっちまったんだよ!!


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