70 / 106
6章 隣国と和平会談する件
準備運動は人それぞれ
しおりを挟む「――という訳で、魔王さんよ。穴場のダンジョンがあれば教えて欲しい」
特産物は作物なんかを除けば、だいたいダンジョンで手に入れるのがこの世界の常識……らしい。早速、情報提供を求める流。ほかの和平交渉に参加予定の無いやつらもウズウズしだした。――って、おい。
「流さんや、会議はまだ終わってねーぞ」
「基本方針は魔族と人間の和平。で、俺らは結果待ち。詳細は交渉に行くやつらで詰めれば十分だろう?」
バックレる気満々か! 俺だって行かない方のグループなのに、最高責任者扱いだから残らなきゃならんというのに!
……え? 親善大使の役目? それは勇者に譲ります。勇者が親善大使した方が、邪神より説得力あるじゃん。という訳で俺ばっか損してる気がする。
「いやいや、こういう時こそクラスの団結力を見せるべきだとは思わないか?」
絶対に逃さねぇぞ……!
「門外漢が口を出したら纏まるモンも纏まらなくなっちまう。なら、自分に出来ることをするだけさ」
きゃー兄貴かっこいい! なんて言わねーからな! ……そりゃ、小難しい事考えるより、何も考えずにダンジョン攻略してた方がラクですよねー。俺もそうしたい。
「出来る事、なんて格好良さげに言ってもダンジョン攻略は暇つぶし以外の何者でもないよな?」
「攻略のち生産。ラスダン近くの素材で作ったヤツなら、さらなるパワーアップが望めるだろ?」
趣味は実益を兼ねるんだぜ、とか言い出す流。お前の鍛治仕事は趣味だったんかい! つーか、これ以上パワーアップしてどうするんだよ!? 現状ですら過剰気味なのに!
他の奴らも、なんか最終決戦に向けてのウォーミングアップ的な過ごし方をしたいらしい。
……なんだかんだ言いつつ、みんなこの世界に順応してんな。
――ところで。
皆が当然あるものと思ってる様子の「最終決戦?」だが――誰とするんだ? 今回魔王と邪神はラスボスじゃないぞ? ……あれ、なんか俺だけ置いて行かれてない?
「敵ならアルスターが残っているじゃありませんか」
「あー、そういえば」
シータの指摘で思い出した。
騎士団から仕掛けてきたのを撃退しただけだが、生き残りたちの証言――正当防衛――をあの国は認めないだろう。それにあのプライドだけは図太い王族や貴族達が和平交渉に応じるとも思えない。
いやー、一番嫌いだった騎士団長が居なくなったからすっかり存在も忘れ去ってたぜ……。だって王族や貴族は最悪でも、一般市民はいい人ばっかだからなあの国。まあ俺がまともに過ごしたの、王城とオルレットくらいだが。
「……そうか。和平交渉の後にはあの国との対立が待ってるのな」
「元の世界に帰る方法を本当に知ってる可能性がまだ残ってる。だが奴らが素直に吐くとも思えんしなぁ」
シータやガーディナーのリトは完全否定してたが、二人の情報が百パー合ってるかなんて誰にもわからない。流や他のみんなはその辺りを危惧しているようだ。
「あの国との潰し合いが待ってるなら、俺も修行するかねぇ」
レベル上げたらスキルの制限も無くなりそうな気がする。……おおっ、何だか急にヤル気が出てきたぞ! というわけで後の頭脳労働は頼んだ、シータ&ルージオ!
勢いに任せて会議室から飛び出す俺。他の暇人たちも後に続いてきた。
「よーし、まずはウォーミングアップに中庭の草刈りするぞー!」
片手振り上げそう言った途端に、後ろでズゴっとなにか沢山のものが倒れる音がした。振り返ると、後をついてきた連中がドミノ倒しになっている。……あっぶねーな! 職業の恩恵でステータスが上がってなきゃ大惨事だぞ!?
「こっち来てからそればっかだよなぁ、お前は!!」
「もう、草刈太郎とかに改名しちゃえよ、神山っち」
先陣ついて来ていた流と湯田が、一番下でなんかモゴモゴ言ってるがキコエナーイ。俺は定期的に草刈りしないと生きて行けない体になっちまったんだよ!!
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
俺の職業は『観光客』だが魔王くらいなら余裕で討伐できると思ってる〜やり込んだゲームの世界にクラス転移したが、目覚めたジョブが最弱職だった件~
おさない
ファンタジー
ごく普通の高校生である俺こと観音崎真城は、突如としてクラス丸ごと異世界に召喚されてしまう。
異世界の王いわく、俺達のような転移者は神から特別な能力――職業(ジョブ)を授かることができるらしく、その力を使って魔王を討伐して欲しいのだそうだ。
他の奴らが『勇者』やら『聖騎士』やらの強ジョブに目覚めていることが判明していく中、俺に与えられていたのは『観光客』という見るからに弱そうなジョブだった。
無能の烙印を押された俺は、クラスメイトはおろか王や兵士達からも嘲笑され、お城から追放されてしまう。
やれやれ……ここが死ぬほどやり込んだ『エルニカクエスト』の世界でなければ、野垂れ死んでいた所だったぞ。
実を言うと、観光客はそれなりに強ジョブなんだが……それを知らずに追放してしまうとは、早とちりな奴らだ。
まあ、俺は自由に異世界を観光させてもらうことにしよう。
※カクヨムにも掲載しています
神の盤上〜異世界漫遊〜
バン
ファンタジー
異世界へ飛ばされた主人公は、なぜこうなったのかも分からぬまま毎日を必死に生きていた。
同じく異世界へと飛ばされた同級生達が地球に帰る方法を模索している中で主人公は違う道を選択した。
この異世界で生きていくという道を。
なぜそのような選択を選んだのか、なぜ同級生達と一緒に歩まなかったのか。
そして何が彼を変えてしまったのか。
これは一人の人間が今を生きる意味を見出し、運命と戦いながら生きていく物語である。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
【短編】悪役令嬢の侍女 〜ヒロインに転生したけど悪役令嬢の侍女になりました〜
みねバイヤーン
恋愛
リリーは乙女ゲームのヒロインである。侍女として、悪役令嬢のクロエお嬢さまに仕えている。クロエお嬢さまには孤児院から救っていただいた大恩がある。生涯仕える覚悟である。だからってねー、広大な公爵家の敷地で指輪を探すなんて、そんなこと許しませんからね。ワガママお嬢さまをうまく誘導するのも侍女の務め。お嬢さまと猛獣使いリリーの戦いが繰り広げられる、そんな平和な日常を描いた物語。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!
日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」
見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。
神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。
特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。
突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。
なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。
・魔物に襲われている女の子との出会い
・勇者との出会い
・魔王との出会い
・他の転生者との出会い
・波長の合う仲間との出会い etc.......
チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。
その時クロムは何を想い、何をするのか……
このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる