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6章 隣国と和平会談する件
これからどうする?
しおりを挟む一夜明けて。
何とか合流したクラス全員と魔王陣営が一同に会した。のだが――
「…………」
総勢四十人近く居るっていうのに、会議室には沈黙が満ちていた。かくいう俺も何から話したら良いのかわからない一人ではあるんだが。これ、なんの話し合いだっけ?
「……ええと、もう一度改めて確認するんだけど。ルージオさん……というより魔族の皆さんは、人との和平を希望しているという事で良いのかしら?」
そんな中で甲斐先生が重い口を開いた。
「ええ。正直な話、今の我らには世界征服をする理由が無いのです。そんな余裕もありませんし」
魔族は少数民族ですので。と、ルージオ。まぁ、それならワザワザ喧嘩ふっかけるより周辺の国と仲良くする方が良いよな。
「ただ、リュージ様からも指摘があったのですが、我らのやり方はいささか問題があるらしく……」
進軍と間違えられた件ですねー……最近のことらしいし、まだ尾を引いてるんじゃないか? 実際、義勇軍とかの進軍を許しちゃったわけだし。
「……あー、だからかぁ。ジャックロットの空気が緊張してたの」
「アルスター騎士団が素通りできたのもそれが原因だろうな」
早乙女と流がウンウンとうなづいている。案の定だったらしい。
「ちなみに具体的にはどんな意見が飛び交ってたんだ?」
ジャックロットには寄ってないからなー、ちょと興味がある。
「いよいよ決戦も近いか! みたいな悲壮感が漂ってたなー。俺らめっちゃ歓迎されたし」
勇者といえば、対魔王最終兵器だもんなぁ。そりゃ歓迎もするわ。……ん、ということは――
「ルージオ。いまって、俺らが思ってたよりもヤバイ状況じゃね?」
「――と、言いますと?」
「あっちからすると旅立った勇者と騎士団が消息不明じゃん?」
勇者は魔国に亡命で、騎士団を消息不明にしたのは俺ですが。
「……いつジャックロットが本腰を入れてもおかしくありませんね」
どうしたら! という表情で俺を見るルージオ。おい、魔王情けないにも程があるぞ。あと俺もそんなに万能じゃ無いから、期待に満ちた目で見るのヤメロ! 罪悪感に苛まれる!!
「――というわけで甲斐先生、何かいい方法無いっすかね?」
考えてもわからなければ、俺より頭のいい人を頼るべし。先生は口に手を当てて思案すると、
「そうねぇ……杵築さん、ジャックロットとの調停お願いできる?」
「――へっ? あっ、はいっ!」
先生に指名されたのは、大人しそうな女子・杵築だった。彼女の職業は調停者(ミディエーター)。簡単にいえば喧嘩してる奴らの間に入って、仲直りさせる職業である。
先生からの直々の指名に杵築も緊張を隠せないようだ。なんか動きがカクカクしている。まぁ、まさかこの期に及んで出番が来るとは思ってなかったんだろうなぁ……。しかも国と国の仲裁という超プレッシャー事案。
「あと、ルージオさんは魔国側の交渉役の手配をお願いします」
「お安いご用です!」
やけに張り切ってるが大丈夫か、ルージオ? 俺のイメージだと魔国上層部って脳筋しかいないイメージなんだが。
「おや、リュージ様。何か不安な事でもおありですか?」
「不安しかねーよ。お前ら本当に平和的な交渉が出来るのか?」
「……国家間交渉となると数百年ぶりですから……その、自信はあまり……」
あ、顔そらしやがった。やっぱり脳筋なのか? 喧嘩っ早いのか?
「その辺りは私たちも同席してフォローするから心配は無用よ、神山君!」
むんすと腕まくりする甲斐先生。
どうやら和平交渉には勇者一行も同席するようだ。先生が同行してくれるなら心強いが……魔族と勇者が一緒に出てきて和平交渉なんて、吉と出るか凶と出るか。相手側のジャックロットはさぞや混乱するだろうなぁ。
「和平交渉にまで同伴とは勇者様達は忙しないな」
流がニヒルな笑みを浮かべて言う。
「え、流達は行かねーの?」
「和平交渉なんて、そんな大勢で押しかけるモンでもないだろ?」
首を傾げる早乙女にキッパリと告げる流。確かにクラス全員で押しかけてもやる事ないな。交渉役の杵築と、相談役の先生がいれば十分だ。勇者の早乙女達は護衛役、と。
「じゃあ、オレ達があっち行ってる間、何するつもりなんだよー?」
サボり宣言とは何事かーとでも言いたげな早乙女に、流さんはどう答えたかというと――
「そりゃあ勿論、魔国を存分に満喫するに決まってんだろう?」
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