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5章 潜入!魔族の国……な件
ご都合展開? オールオッケーです!
しおりを挟むどれだけ経ったか――いや、そう時間は経っていない。が、騎士も残り少なくなってきた。俺も何人か斬り捨てたが、やはり森羅のブレスの威力がでかい。これなら増援が無くても奴らを全滅させられそうだ。
森羅のブレスで少しばかり地形が変わっている気がするが、些細な問題だろう。
「グォォォー!」
森羅の一撃で、また一人騎士が脱落した。俺も負けてはいられない。
「ヒィッ、命だけはたっ、助けてくれぇ!」
勝敗が決すると、命乞いしてくるヤツも出てきたが、手は緩めなかった。あの騎士団長の部下であるコイツらを生かしておくと後々何をしでかすかわからないからだ。油断した隙に背後からザックリ、なんてゴメンである。
なので当然、コイツも斬り捨てた。
作業のように淡々と、そして黙々と騎士団を処理していく俺と森羅。その手を止めさせたのは――
「……もう、気は済んだのでは、なくて?」
もう、聞くことが出来ないはずの声。掠れていて、途切れ途切れだが、間違いなく彼女の――シータの声だ。
「シー……タ?」
振り向くと、斉藤に肩を借りつつもしっかりと立つ彼女の姿が。
「はい、私ですわ」
俺は斉藤を押しのけて――斉藤すまん、いつか埋め合わせする――彼女に抱きついた。暖かい、とくんとくんと心臓が脈を打っているのがわかる。間違いなく生きてる!
「でも、どうして!」
脈も呼吸も確かに止まってた。
「ダンジョンコアのおかげですの。……まあそれもサイトウの協力が無ければ手遅れになっていたかもしれませんが」
彼女が言うには、今はダンジョンコアが彼女の命がわりになっているらしい。なんぞそれ?
あと、尻もちついてた斉藤に詫びを入れながら手を貸す。なにやら酷く怯えているが何でだ? シータの命の恩人を無下にするほど俺は心狭くないぞ。
「神やんっ、ごめんなさぁぁぁいッ!!」
何故か斉藤は謝りながら遠ざかっていった。いや、だから何故に?
「キュルン!」
いつの間にかミニマムデフォルメになってた森羅の鳴き声に振り向くと、残った騎士達が怯えた様子で固まっていた。……のだが、シータが無事だったからか、なんかどうでもよくなってきた。さっきまでの怒りがスッカリ霧散している。
「……こいつらどうしよう」
「こういうケースですと、捕虜にするのが一般的ですわよ」
「じゃ、魔王軍に引き渡しだな」
そういや俺、和平大使を名乗っておきながら思いっきりやらかした気がするのだが……?
「先に奇襲をかけてきたのは彼ら。正当防衛の範囲内でしょう」
「いやいや、過剰防衛ぽくね?」
「そこは彼らと『相談』すればよろしいのです」
俺が騎士達に視線を向けると、彼らは一様に首をブンブンと縦に振った。満場一致で正当防衛に同意してくれるそうです。命の価値軽いなー、さすが命のやり取りが日常茶飯事な異世界。
「おーい、神山ー! って何だこの惨劇の後!?」
丁度いいタイミングで流達も到着したようだが、そこら中に転がりまくってる死体やら変わりに変わった地形に呆然としている。……うん、正直すまん。まさか俺も自分がここまでアレな人種だったとは思わなかったんや。
よくよく見てみると俺の服も返り血でやばい事になっている。うう、気持ち悪い。シータも正面から袈裟懸けに斬られていたので、ちょっと色っぽい事になっている。早く布を! 布を調達しないとクラスの連中に見られてしまう!! ……あ、俺のマント貸せば解決か。
「シータ、これ羽織ってくれ」
「何故ですの?」
自覚がない……だと!?
「いや、その、お前あいつに斬られて服が……」
そこでやっと気付いたのか「きゃっ」と慌てて俺のマントを引っ手繰るシータさん。判ってくれてとても嬉しい。あと恥じらう表情がすんげー可愛かったです! ごちそうさま!
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